令和2年定例会(11月市会)

最終更新日:令和2年12月10日

意見書・決議

不妊治療への保険適用の拡大を求める意見書

(令和2年12月10日提出) 

日本産科婦人科学会のまとめによると,2018年に不妊治療の一つである体外受精で生まれた子どもは5万6979人となり,前年に続いて過去最高を更新したことが分かった。これは,実に16人に1人が体外受精で生まれたことになる。また,晩婚化などで妊娠を考える年齢が上がり,不妊に悩む人々が増えていることから,治療件数も45万4893件と過去最高となった。
 国においては,2004年度から,年1回10万円を限度に助成を行う「特定不妊治療助成事業」が創設され,その後も助成額や所得制限などを段階的に拡充してきている。また,不妊治療への保険適用もなされてきたが,その範囲は不妊の原因調査など一部に限られている。保険適用外の体外受精や顕微授精は,1回当たり数十万円の費用が掛かり,何度も繰り返すことが多いため,不妊治療を行う人々にとっては過重な経済負担になっている場合が多い。
 京都市では,国に先駆けて,府市協調により人工授精及び保険適用の不妊治療に要した費用の一部の助成(一般不妊治療費助成)を平成15年7月から開始したほか,国の制度拡充に合わせて施策を適用する中で,治療をされる方の不安や悩みに寄り添った支援を行ってきた。特に,男性不妊治療については,平成26年10月から,府市協調の下,国に先駆けて助成を開始したうえで,国制度がスタートした平成28年1月以降も順次,制度を拡充させてきた。
 こうした中,厚生労働省は,不妊治療の実施件数や費用などの実態調査を10月から始めているが,保険適用の拡大及び所得制限の撤廃も含めた助成制度の拡充は,早急に解決しなければならない喫緊の課題である。
 よって国におかれては,不妊治療を行う人々が,今後も安心して治療に取り組むことができるよう,下記の事項について早急に取り組むことを強く求める。

                    記

1 不妊治療は一人一人に最適な形で実施することが重要であるため,不妊治療の保険適用
 の拡大に当たっては,治療を受ける人の選択肢を狭めることがないよう十分配慮するこ
 と。具体的には,現在,助成対象となっていない「人工授精」をはじめ,特定不妊治療で
 ある「体外受精」や「顕微授精」,更には「男性に対する治療」についてもその対象とし
 て検討すること。
2 不妊治療の保険適用の拡大が実施されるまでの間については,その整合性も考慮しなが
 ら,所得制限の撤廃や回数制限の緩和など,既存の助成制度の拡充を行うことにより,幅
 広い世帯を対象とした経済的負担の軽減を図ること。
3 不妊治療と仕事を両立できる環境を更に整備するとともに,相談やカウンセリングなど
 不妊治療に関する相談体制の拡充を図ること。
4 不育症への保険適用を検討すること。また,民法上の取扱いを考慮したうえで,事実婚
 への不妊治療の保険適用,助成についても丁寧に検討すること。
5 助成事業を拡充する場合,現在,国と地方公共団体が折半している費用負担について,
 半分が自治体負担となっており,制度を拡充した場合の影響が非常に大きいため,原則国
 費で対応すること。また,万が一,自治体負担が発生する場合には,地方交付税措置でな
 く,実質的な補助を講じること。

 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣

犯罪被害者支援の充実を求める意見書
(令和2年12月10日提出)

 

2004年に犯罪被害者等基本法が成立し,犯罪被害者は「個人の尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利」の主体であることが宣言され,犯罪被害者支援施策は一定の前進を果たした。しかしながら,犯罪被害者の多種多様なニーズに応えられるだけの整備は,いまだ十分になされているとは言い難い。
 例えば,被害直後から公費によって弁護士の支援を受ける制度や,国による損害の補償制度といった,財政支援を必要とする施策はいまだに実現されていない。
 また,犯罪被害者支援条例の制定や,性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの設立といった施策も,地域によって大きな格差を残している。
 京都市では,2011年に政令市の中でいち早く施行した京都市犯罪被害者等支援条例に基づき,京都犯罪被害者支援センターにワンストップの総合相談窓口を設置し,当座の生活に困窮した犯罪被害者等に生活資金を給付する事業を行うほか,犯罪被害者やその御家族・御遺族に寄り添った,中長期にわたる支援を行っている。
 犯罪被害者の権利に対応して,国は,たゆまず支援施策の充実を進めていく責務を負っており,よって国におかれては,犯罪被害者支援の充実を図るため下記の事項を実施するよう強く要望する。

                    記

1 犯罪被害者が,民事訴訟等を通じて迅速かつ確実に損害の賠償を受けられるよう,損害
 回復の実効性を確保するための必要な措置を講じること。
2 犯罪被害者に対する経済的支援を充実させるとともに,手続的な負担を軽減する施策を
 講じること。
3 犯罪被害者の誰もが,事件発生直後から弁護士による法的支援を受けられるよう,公費
 による被害者支援弁護士制度を創設すること。
4 性犯罪・性暴力被害者のための病院拠点型ワンストップ支援センターを,都道府県に最
 低1箇所は設立し,人的・財政的支援を行うこと。
5 地域の状況に応じた犯罪被害者支援施策を実施するため,全ての地方公共団体におい
 て,犯罪被害者支援条例が制定できるよう支援すること。

以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,法務大臣,国家公安委員会委員長

住まいと暮らしの安心を確保する居住支援の強化を求める意見書

(令和2年12月10日提出)

我が国においては,空き家等が増える一方,高齢者,障がい者,低所得者,ひとり親家庭,外国人,刑務所出所者等の住宅確保要配慮者は増え,頻発する災害による被災者への対応も急務となっている。
 また,新型コロナウイルスの影響が長期化する中,家賃の支払に悩む人が急増し,生活困窮者自立支援制度の住居確保給付金の支給決定件数は,今年4月から9月までの半年間で10万件を超え,昨年度1年間のおよそ26倍に上っている。
 住まいは生活の重要な基盤であり,全世代型社会保障の要として,住まいと暮らしの安心を確保する居住支援の強化は,喫緊の課題となっている。
 京都市においても,居住支援協議会の設置や住宅マスタープランの策定を行い,解決に向け取り組んでいるところであるが,課題は多様化する一方である。
 よって国におかれては,下記の事項を速やかに実施するよう強く要望する。

                    記

1 住居確保給付金の利用者の状況等の実態調査を踏まえ,住居確保給付金の支給期間(最
 長9箇月)の延長,収入要件の公営住宅入居収入水準への引上げ,支給上限額の近傍同
 種の住宅の家賃水準への引上げなど,より使いやすい制度へ見直すこと。
2 住居確保給付金の受給者や低所得のひとり親家庭など,住まいの確保に困難を抱えて
 いる人が住んでいる家をそのままセーフティネット住宅として登録し,転居することな
 く,公営住宅並みの家賃で住み続けることができるよう,公募原則の適用を外すととも
 に,住宅セーフティネット制度の家賃低廉化制度を大幅に拡充すること。
3 空き家などの改修・登録に取り組む不動産事業者と貸主へのインセンティブ強化やコロ
 ナ感染症拡大防止等を推進するため,住宅セーフティネット制度の改修費補助及び登録
 促進に係る取組への支援を拡充すること。
4 住宅セーフティネット制度の家賃債務保証料の低廉化制度を拡充し,残置物処分費用
 や原状回復費用に係る貸主の負担軽減を図ること。
5 居住支援法人活動支援事業において,入居件数や住宅の類型別の単価に加え,特に
 支援に困難を伴う障がい者や刑務所出所者等への支援を手厚く評価し,加算する制度を
 設けること。
6 令和2年度第2次補正予算において創設した,生活困窮者及び生活保護受給者に対し
 て,相談受付・住まい確保のための支援・住まい確保後の定着支援など相談者の状況に
 応じた一貫した支援を可能とする事業を来年度以降も継続的かつ全国で実施できるよう,
 恒久化し,取組自治体の増加を図ること。
7 刑務所を出所した後の帰住先の調整がなかなかつかない高齢者や障がい者等に対し,
 保護観察所や更生保護施設等が,受刑中から支援を実施し,居住支援法人等と連携しな
 がら適切な帰住先を確保するとともに,出所後も切れ目のない,息の長い見守り支援を
 訪問型で行う事業を創設すること。また,自立準備ホームの登録増を推進すること。
8 住生活基本法や住宅セーフティネット法等の住宅施策全般において,国土交通省と厚生
 労働省,都道府県・市区町村の役割・責務を明確化するとともに,法律を共管とするな
 ど,抜本的な連携強化を図ること。
9 令和3年度から改正社会福祉法に基づき新たにスタートする重層的支援体制整備事業に
 おいて,必要な予算を確保して居住支援などの参加支援の充実を図るなど,市町村の実態
 に応じた包括的支援体制の構築が図られるよう,必要な支援を行うこと。

 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,法務大臣,厚生労働大臣,国土交通大臣

脱炭素社会の実現を目指す決議
(令和2年12月10日提出)

本市では,昨年5月,市長が自治体の長として初めて「2050年までに二酸化炭素排出量正味ゼロ」を目指す覚悟を表明するなど,地球温暖化を防止するための取組を先駆的かつ積極的に推進してきた。地球温暖化という問題は,地球規模の問題であり,全ての主体が取り組まなければ解決できるものではない。本市会においても,平成25年には,再生可能エネルギーを中心とした先進事例を調査するため,ドイツとスペインを視察し,また,平成28年には,「2050年までに脱化石燃料・再生可能エネルギー100%を達成する」という大胆な目標を掲げたデンマークを視察し,この間,環境先進都市の議会として多くの提案を会派を超えて行ってきた。また,とりわけ国が果たす役割は大きいものとなるため,昨年10月,「気候危機・気候非常事態を前提とした地球温暖化対策の更なる強化を求める意見書」を採択し,これを国に提出した。
 そうした中,京都から始まった「2050年正味ゼロ」の動きは大きく全国に広がり,本年10月には,菅内閣総理大臣が所信表明演説において,「2050年までに,温室効果ガスの排出を全体としてゼロを目指す」と宣言し,国会においては,超党派による「気候非常事態宣言決議」が,衆議院では賛成多数をもって,参議院では全会一致をもって採択され,また,他都市においても決議や宣言が表明された。これにより,国と自治体が「2050年正味ゼロ」の実現という同じ目標に向けて取組を進めることとなった。
 本市会は,ここに気候非常事態を宣言し,市民,事業者をはじめとする,あらゆる主体と危機感,目標を共有したうえで,その理解と協力を深めることによって,自主的かつ積極的に地球温暖化対策に取り組むことを決意する。本市においては,政策提案を更に行い,環境先進都市・京都の責務をしっかりと果たすとともに,国や京都府,他の政令指定都市をはじめとする自治体と連携強化を図り,京都議定書誕生の地,IPCC京都ガイドライン採択の地としての矜持をもって議論を深め施策を推進し,脱炭素社会の実現をけん引していくことを求める。

 以上,決議する。