令和元年定例会(令和2年2月市会)
最終更新日:令和2年3月25日
意見書・決議
新型コロナウイルス感染症対策への一層の支援強化を求める意見書
(令和2年3月25日提出)
現在,新型コロナウイルス感染症は,世界的に猛威となる広がりを見せており,収束が見通せない深刻な事態にある。
我が国においては,この間,水際対策としての検疫の強化,渡航禁止勧告及び入国制限,大規模なイベント等の中止,さらには,小中学校等への休校要請など,急激な感染拡大を防ぐための懸命な努力がなされ,3月19日に開催された専門家会議では,「日本国内の感染状況については,引き続き持ちこたえているが,一部の地域では感染拡大が見られ,今後,地域において,感染源(リンク)が分からない患者数が継続的に増加し,こうした地域が全国に拡大すれば,どこかの地域を発端として,爆発的な感染拡大を伴う大規模流行につながりかねない」という評価となっており,いまだ予断を許さない状況が続いている。
このような状況を踏まえ,国においては,新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策の第2弾として,「感染拡大防止策と医療提供体制の整備」,「学校の臨時休業に伴って生じる課題への対応」,「事業活動の縮小や雇用への対応」といった対策を,強力に推し進めることとされている。
さらに,3月13日に成立した改正新型インフルエンザ等対策特別措置法は,その対象として,新型コロナウイルス感染症を追加し,外出の自粛要請などができることとされた。
しかし,感染者数の増加,自粛による経済停滞,衛生用品を含むサプライチェーンの寸断は,多くの市民の不安材料となっており,本市における観光産業等には既に甚大な影響が発生している。
よって国におかれては,全国の地方公共団体における感染状況やその対策,課題等を把握し,感染拡大防止,事態の収束に向け,地方公共団体を支える充分な財政措置も含めた対策を,前例にとらわれず,強力に推し進めるよう求める。
また,医療崩壊や衛生用品不足などの市民の不安に最大限配慮し,払拭に努めることを求める。
加えて,観光客の激減,あらゆる分野の企業・事業者の経営や雇用の悪化など,市民生活や地域経済を含む日本経済全体に,過去経験したことのない影響が予想される。その影響を最小限に食い止めるためにも,過去最大規模の補正予算を早急に編成,成立させることで,減税も含めた必要な支援策を躊躇なく講じるよう求める。
以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
(提出先)
衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,財務大臣,厚生労働大臣,経済産業大臣,内閣府特命担当大臣(経済財政政策)
中高年のひきこもりに対する実効性ある支援と対策を求める意見書
(令和2年3月25日提出)
従来,ひきこもりは主として若年・青年層の課題としてイメージされてきた。しかし最近では,就職氷河期世代も含めた中高年層に及ぶ大きな社会問題としてクローズアップされてきている。
国が中高年層を対象に初めて実施した全国規模の調査が昨年3月に公表されたが,40~64歳のひきこもりが全国で約61万人に上るという推計は,社会に大きな衝撃を与えた。ひきこもり期間の長期化や高齢化により,高齢者の親と共に社会的に孤立するケースも少なくない。
国としては,これまで都道府県・政令市への「ひきこもり地域支援センター」の設置や「ひきこもりサポーター養成研修・派遣事業」を行ってきた。京都市では,ひきこもりに関する一元化相談窓口の設置に向け,検討を進めているところである。
今後は,より身近な場所での相談支援の実施や社会参加の場の充実など,就職氷河期世代も含めた中高年のひきこもりに対して,これまで以上に実効性ある支援と対策を講じるべきである。
よって国におかれては,中高年のひきこもりは,個々人やその家族だけの問題ではなく,社会全体で受け止めるべき大変重要な課題と捉え,下記の事項について早急に取り組むことを強く求める。
記
1 | 国においては,より身近な場所での相談支援を行うため,自立相談支援機関の窓口にアウトリーチ支援員を配置し,同行相談や信頼関係の構築といった対本人型のアウトリーチ支援が実施されるよう,新たな財政支援の仕組みが創設されたが,自立相談支援の機能強化に向けたアウトリーチ等を行うための経費については,上限額の拡充等,事業の更なる充実を図ること。 |
2 | 中高年のひきこもりにある者に適した支援の充実を図るため,市区町村による「ひきこもりサポート事業」に対する支援の更なる強化を図ること。具体的には,市区町村が行う中高年が参加しやすくなるような居場所づくりやボランティア活動など就労に限らない多様な社会参加の場の確保,さらには,家族に対する相談や講習会などの取組の促進に対する補助の拡充等の措置を実施すること。 |
3 | 「8050問題」など世帯の複合的なニーズやライフステージの変化に柔軟に対応するため,「断らない相談支援」や「伴走型支援」など,包括的な支援体制の構築に向けた方向性は示されているが,市区町村がこれまでの制度の枠を超えた支援ができるよう,国において,財政支援の在り方をはじめ,体制構築に向けた具体的な支援の仕組みを示すこと。 |
以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
(提出先)
衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣
大都市財政の実態に即応する財源の拡充を求める意見書
(令和2年3月25日提出)
本市の令和2年度予算においては,地方公共団体間の財政力格差の是正を目的とした法人市民税の税率引下げ・国税化による法人市民税の減少に加え,地方交付税等が大幅に削減され,一般財源収入が82億円減少し,財政調整基金も底をつき,公債償還基金の取崩しや初めて調整債を発行するなど,特別の財源対策で補填せざるを得ない厳しいものとなっている。
地域の構成員としての応益負担である法人市民税の一部を国税化し,地方交付税として再配分する税制改正は,受益と負担の関係に反し,真の地方分権型社会の実現の趣旨にも反するものである。
もとより,地方公共団体の財政力格差の是正は,地方税収を減ずることなく,国税からの税源移譲や地方交付税の法定率の引上げ等,地方財源拡充の中で行うべきである。
この間,地方交付税の総額は2年連続で増加しているものの,交付額の算定は,大都市に不利なものとなっており,政令指定都市間においても,例えば,本市は大阪市より市民一人当たりの市税収入が約7万2千円少ないなどの格差があるにもかかわらず,本市においては,市民の安心につながる社会福祉などに必要な額が確保されていない。
また,臨時財政対策債の残高が累増しており,その償還費が全額基準財政需要額に算入されているとはいえ,その他の費目が圧縮・削減されているため,地方財政の大きな課題となっている。
よって国におかれては,地方財源の必要額確保のため,地方交付税の法定率を引き上げるとともに,地方交付税の算定に当たって大都市特有の財政需要を的確に反映させること,さらに,臨時財政対策債を速やかに廃止することを強く求める。
以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
(提出先)
衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,財務大臣
新たな過疎対策法の制定に関する意見書
(令和2年3月25日提出)
過疎対策については,昭和45年に「過疎地域対策緊急措置法」を制定して以来,4次にわたる特別措置法の制定により,総合的な過疎対策事業が実施され,過疎地域における生活環境の整備や産業の振興など,一定の成果を上げたところである。
しかしながら,人口減少と高齢化は特に過疎地域において顕著であり,利用者の減少による公共交通の収支悪化,医師及び看護師等の医療スタッフの確保,農業の担い手不足,木材価格の低迷による厳しい林業情勢など,生活・生産基盤の弱体化が進む中で,将来に不安を抱える集落が増加するなど,過疎地域は極めて深刻な状況に直面している。
京都市の京北地域は,美しい自然環境と温かい地域コミュニティを有し,豊かな文化が息づくこころのふるさとであり,古くから,都市部への食料・水・森林資源の供給,森林による地球温暖化の防止に貢献するなどの多面的・公共的機能を担っている。
過疎地域において守り育まれてきた豊かな自然や文化と調和した暮らし方を次の世代へと大切に引き継いでいくことは,全ての国民の重要な使命である。
現行の「過疎地域自立促進特別措置法」は,令和3年3月末をもって失効することとなるが,過疎地域が果たしている多面的・公共的機能を今後も維持していくためには,引き続き,過疎地域の振興を図り,そこに暮らす人々の生活を支えていくことが重要である。
よって国におかれては,過疎地域が安心・安全に暮らせる地域として健全に維持されるよう,新たな過疎対策法の制定と,引き続き総合的な過疎対策を充実・強化し,住民の生活を支えていく政策として,下記の事項を推進するよう強く求める。
記
1 | 新たな過疎対策法を制定すること。その際,現行法第33条に規定するいわゆる「みなし過疎」と「一部過疎」を含めた現行の過疎地域を継続して指定対象とすることを基本としつつ,過疎地域の指定要件と指定単位については,過疎地域の特性を的確に反映したものとすること。 |
2 | 過疎地域において,特に深刻な人口減少と高齢化に対処するため,産業振興,雇用拡大,子育て支援等の施策を推進すること。 |
3 | 住民が安心・安全に暮らせるよう,医療の確保,公共交通の確保,教育環境の整備等,広域的な事業による対応も含めて推進すること。 |
4 | 過疎地域においても,高度通信等社会の恩恵を享受できるよう,通信基盤の整備や財政支援措置を講じること。 |
以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
(提出先)
衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣
種苗法改正等に伴う万全の対策を求める意見書
(令和2年3月25日提出)
現在,通常国会で「種苗法の一部を改正する法律案」が審議されているが,種苗法は,新品種の保護のための品種登録に関する制度,指定種苗の表示に関する規制等について定めることにより,農作物の品種の育成の振興と種苗の流通の適正化を図り,もって農林水産業の発展に寄与するものとして,重要な役割を果たしてきた。
今回の種苗法改正は,日本の優良品種の海外流出や,都道府県が育成した地域以外での栽培を防止するため,育成者権者に無断で増殖や譲渡することを制限するものであり,今後の優良新品種の開発を加速するために必要なものと考えている。
一方,一部の農家からは,種苗の自家増殖に対する制限や,種子法の廃止に伴う種子の安定供給に対する不安を感じる声が上がっている。
農業者の高齢化や担い手不足が深刻化する中で,国内農業を維持発展させていくためには,知的財産の保護を追求するのみではなく,安定した種子,種苗の確保を通じて農業者が営農を継続できる条件整備が急務となっている。
よって国におかれては,「人と命と環境をはぐくむ日本の農業」を将来にわたって確実に維持するため,種苗法の改正等に当たり,下記の項目について早急に対策を講じるよう求める。
記
1 | 知的財産の保護の追求にとどまらず,地域の農業振興に資するために必要な法改正とすること。 |
2 | 農家が登録品種の自家増殖を行う際の「許諾制」については,その手続や費用等が農家にとって最小限の負担となる制度設計を行うこと。 |
3 | 種子法の廃止後も,都道府県が農家に対する種子の供給業務を安定して行えるよう,引き続き地方交付税措置を行うこと。 |
以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
(提出先)
衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,農林水産大臣
補欠選挙の実施要件に係る公職選挙法の整備を求める意見書
(令和2年3月25日提出)
先般の京都市長選挙において,左京区選出の市会議員が,立候補のために自動失職した。これにより,左京区の市会議員定数8名のうち,1名が欠員となった。京都市では,市会議員選挙が行われるのは市長選挙後3年以上先であるため,このままでは任期4年のうち3年以上議員の欠員状態が続く。
12年前も同じ市会議員が市長選挙への立候補のために自動失職したため,3年以上1名欠員のままであった。
現行制度では,欠員数が当該選挙区の議員定数の6分の1を超えない場合には,市長選挙の告示前10日までに議員自らが辞職しなければ,補欠選挙は行われない。これでは,議員本人の意思により補欠選挙が行われるかどうかが左右されることになる。しかしながら,市会議員の役割の重要性を考えると,議員の意思により補欠選挙の有無が生じることは,到底市民理解が得られるものではない。
京都市において,上記のとおり,同様の事例が2度にわたり発生していることを踏まえると,法整備により手当てするしか防ぐ手立てがない状況である。
例えば,京都市では,今後3年間に,左京区においても衆議院議員選挙,参議院議員選挙,知事選挙が必ず行われることから,その際に市会議員の補欠選挙を行うことなどが可能になれば,長期の欠員を防ぐことができる。
よって国におかれては,長期にわたり議員の欠員が続くことがないよう,補欠選挙の実施要件に関し,公職選挙法を整備することを求める。
以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。