令和7年定例会(9月市会)

最終更新日:令和7年10月30日

意見書・決議

国家公務員の地域手当に準拠した地域区分の見直しに関する意見書
(令和7年10月30日提出)

昨年8月に発表された令和6年人事院勧告では、給料に地域ごとの物価や民間賃金水準を踏まえて定められた支給割合を乗じて支給される国家公務員の地域手当について、市町村から都道府県への支給地域の単位の広域化や支給割合の見直し等が表明された。全国の保育所・認定こども園・幼稚園等の公定価格や児童入所施設等の措置費、介護・障害福祉サービスの報酬については、国家公務員の地域手当に準拠した地域区分に応じて算定されるが、社会福祉施設等に従事する職員は年間の給与額が全職種平均と比較して低い傾向にあり、今回の地域手当の見直しに伴う算定によって各種措置費等が引き下げられることとなれば、これまでの処遇改善の推進に逆行するものとなる。
 保育所・認定こども園・幼稚園等の公定価格については、令和7年4月からの見直しは実施せず、引き続き見直し方法について丁寧に議論を進めていくとされている一方で、児童入所施設等の措置費については、事前に自治体との調整が何ら行われることなく、通知・事務連絡により、令和7年4月に遡って国家公務員の地域手当に準拠して見直すこととされている。
 京都市域における国家公務員の地域手当の支給割合は、従来の10%から8%へ引き下げられることとなっており、地域手当の見直しに準拠して地域区分の引下げが進められた場合、本市においても、他産業だけでなく、地域区分がより高い周辺区域等へ人材流出が加速するなど、担い手確保や施設環境改善に大きな支障が生じるおそれがある。
 施設の収入が減少すれば、利用者に対する支援の質の低下にもつながりかねない状況となり、施設経営が更に圧迫されて廃業を余儀なくされる懸念もあり、対象となる関係者から多くの不安の声が上がっているところである。
 よって国におかれては、今後の地方における福祉人材確保の取組に支障が生じないよう、下記の事項に取り組まれるよう強く要望する。


                     記

 1 令和7年4月からの地域区分の見直しで児童入所施設措置費等が引き下げられる地方自治体に対して、見直し前の水準に戻すとともに、今後の賃金水準や国における処遇改善の取組を踏まえた適切な水準となるよう、必要な財政措置を講じること。
 2 地域手当が引き下げられた地域における保育所・認定こども園・幼稚園等の公定価格や介護・障害福祉サービスの報酬については、今後の賃金水準や国における処遇改善の取組を踏まえた適切な水準となるよう、必要な財政措置を講じること。

  以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、厚生労働大臣、賃上げ環境整備担当大臣

旅館業法の改正を求める意見書の提出について
(令和7年10月30日提出)

京都市がまとめた2024年京都観光総合調査によると、令和6年の観光客数は、コロナ禍前の令和元年から4.7%増の5,606万人であり、宿泊客数は、令和元年から23.8%増の1,630万人になっており、京都市内への宿泊客は急増している。
 コロナ禍後、旅館業の簡易宿所に係る申請も増加が顕著であり、新規許可件数は、令和4年度の118件に対し、令和6年度は209件、さらに、令和7年度は9月末現在で既に105件となっている。これに伴い、地域住民からは、簡易宿所の開業に伴う騒音、ごみ問題など、マナー違反を心配する声が寄せられているだけでなく、事業者の対応が不十分なため、地域住民に不安が生じるケースも発生している。
 京都市では、平成30年からの住宅宿泊事業の実施に当たって、住宅宿泊事業のみならず、旅館業についても、事業の適正な運営の確保を図るため、法律の範囲内で、京都市の独自ルールを制定し、厳格な運用をしているところである。一方、旅館業法では、施設の構造設備が基準を満たさない場合や施設の設置場所が公衆衛生上不適当であると認められる場合等を除いて、不許可とすることが困難であり、簡易宿所の適正な運営を確保するために実効性のある対策を行うに当たって、自治体の裁量が少ないため、地域の実情を踏まえ柔軟に規制が実施できない状況にある。
 よって国におかれては、住民、観光客等全ての方の安全安心の確保や、それぞれの地域にふさわしい良質な宿泊環境を確保するため、旅館業法について改正し、条例への委任範囲を拡大するよう強く求める。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、厚生労働大臣、国土交通大臣、内閣府特命担当大臣(規制改革)、観光庁長官

違法オンラインカジノをはじめとするギャンブル関連問題の対策強化を求める意見書の提出について
(令和7年10月30日提出)

京都市においては、「京都市こころの健康増進センター」が依存症に関する相談の拠点となり、依存症の問題を抱える本人及びその家族を対象に、プログラムの実施や医師による診療・相談を受けられる専門外来の設置等を行い、依存症からの回復や再発予防を推進している。
 京都市会においても、平成29年5月30日、国に対して「ギャンブル等依存症対策などの抜本的強化を求める意見書」を提出し、ギャンブル等依存症の実態把握と論点整理等を踏まえたギャンブル等依存症対策基本法の制定などの抜本的強化に取り組むことを求めてきたところである。
 令和7年6月に、「ギャンブル等依存症対策基本法」が改正され、国を挙げてギャンブル問題に取り組まれているところではあるが、海外サイトの規制や決済代行業者の取締り等については盛り込まれておらず、過度なギャンブル等(競馬など法律の定めるところにより行われる公営競技だけでなく、パチンコ屋に係る遊技その他の射幸行為を含む。)による借金、犯罪などは後を絶たない状況にあり、依然としてギャンブル依存症患者の増加や自死との関連性が高いという実態がある。
 スマートフォンの普及等により、ギャンブル依存症の低年齢化、短時間で莫大な借金を背負ってしまうという危険性は深刻であり、金融機関や警察庁とも連携を強め、オンラインカジノへの資金遮断等の迅速な対応が求められている。
 よって国におかれては、違法オンラインカジノの規制を更に強化すると同時に、公営競技等においてもギャンブル依存症への対策を省庁横断で取り組み、医療機関、各自治体の相談窓口、民間支援団体等の取組に対する支援を拡充させるよう、下記の事項について強く要望する。


                     記

1 金融機関や警察庁とも連携を強め、オンラインカジノへの資金遮断を速やかに進めること。
2 根本的な違法オンラインカジノ対策として、日本国内からのアクセスを遮断する技術・情報インフラ整備等により早急に対策を講じること。
3 違法オンラインカジノ賭博に対する抑止効果を高めるため、オンラインカジノの広告や誘導行為に対する直接的な刑事罰や行政罰の規定を盛り込んだ法改正を進めること。
4 各都道府県に対して、「都道府県ギャンブル等依存症対策推進計画」の策定を促し、教育機関への働き掛けや、様々な媒体を通じて、オンラインカジノの違法性、ギャンブル依存症予防の周知・啓発事業を推進すること。
5 公営競技(競馬・競輪・競艇・オートレース)の健全な運営のために、事業者に対して年齢制限の徹底や、ギャンブル依存症の危険性を周知・啓発する取組を強化することを求めること。
6 本人の借金を家族が肩代わりせず、依存症の治療を優先させることが重要であり、ギャンブル依存症患者の回復を支援するため、入所型・通所型の回復施設の整備、依存症対策の入院施設の整備を行うこと。併せて、各自治体相談窓口の拡充、人材育成、自助グループ等の民間支援団体への更なる支援を推進すること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、 総務大臣、法務大臣、文部科学大臣、 厚生労働大臣、農林水産大臣、 経済産業大臣、国土交通大臣、 国家公安委員会委員長、 カジノ管理委員会委員長

医療・介護従事者に対する処遇改善の早期実施を求める意見書の提出について
(令和7年10月30日提出)

京都市会では、令和5年10月に、診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の物価高騰・賃金上昇への対応を求める意見書を国に提出したところである。
 こうしたことを踏まえ、政府は、令和6年度の報酬改定において、診療報酬で0.88%、介護報酬で1.59%、障害福祉サービス等報酬で1.12%の増額改定を行ったほか、ベースアップ評価料や新処遇改善加算の創設など、医療・介護従事者の賃上げや物価高騰への対応をされたところである。
 しかしながら、改定後も物価はとどまることなく高騰を続けており、市内の医療・介護等の事業者は、なお厳しい状況に置かれ、全国の医療機関では7割が赤字であるとの報道もなされているところである。
 こうした中、政府においては、国民のいのちを守り、安心して必要なサービスを受けていただくためにも、赤字に苦しむ医療機関や介護施設への対応は待ったなしとの認識の下、診療報酬・介護報酬について賃上げ・物価高を適切に反映させることを検討されている。さらには、報酬改定の時期を待たず、経営の改善及び従業者の処遇改善につながる補助金を措置して、効果を前倒しすることも検討されており、医療・介護従事者からの期待が寄せられている。
 よって国におかれては、経営の改善及び全ての従業者の処遇改善等につながる補助金の創設や、診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬への措置について、関係者からの期待に応え、早期かつ確実に実行されることを求める。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、厚生労働大臣、賃上げ環境整備担当大臣