令和5年定例会(9月市会)

最終更新日:令和5年10月30日

意見書・決議

学校施設における体育館を含めた空調設備の整備についての財政支援を求める意見書
(令和5年10月30日提出)

近年、全国各地で最高気温を更新するなど、夏の暑さが厳しくなっており、児童生徒が学校内で熱中症になる事例も多く発生している。各自治体においては、学習環境の改善と安全確保に向け、学校施設の空調設備の整備に取り組んできたところであるが、学校体育館における整備率は15.3%(文科省調査・令和4年9月1日現在)にとどまっている。
 本市においても、普通教室については平成18年度までに空調設備の整備を完了したところであるが、体育館については立地条件により通風が十分に確保できない場合など、約7%の設置率にすぎない状況である。
 学校体育館は、児童生徒の学習・生活の重要な場である一方で、災害発生時には地域住民の避難場所としての役割も担うことから、子どもたちが安全かつ安心して学校生活が送れるよう、教室と同様に空調設備を整備することは急務である。しかしながら、学校体育館の空調設備の設置には多額の費用が必要であり、多数の学校施設がある自治体にとっては、国による財政支援が必要不可欠である。また、普通教室や特別教室の空調設備についても、本市においては、その更新時期を迎えていることから、今後、多額の費用を要するため、国による更なる財政支援が必要である。
 こうした中、学校施設環境改善交付金については、十分な予算が確保されない現状があるほか、補助対象とならない施設や整備手法があるなど、十分に活用ができない制度的な課題がある。また、緊急防災・減災事業債については、事業期間が令和7年度までとなっており、令和8年度以降の整備に活用できない状況がある。
 よって国におかれては、児童生徒の安全と教育環境における一定の水準を確保するため、計画的かつ早期に学校体育館等の空調設備の整備・更新が実現できるよう、下記の事項を実施することを要望する。

                   記

1 学校施設環境改善交付金について十分な予算を確保すること。また、高等学校においても着実に整備できるよう補助対象を拡充すること。
2 緊急防災・減災事業債について、令和7年度までの事業期間を延長すること。また、延長後の事業期間については、多数の学校施設がある自治体が複数年度にわたり計画的に整備していくことを考慮した期間とすること。
3 緊急防災・減災事業債の補助対象として、普通教室及び特別教室を対象とするとともに、次期更新を想定した恒久的な補助の制度化を実現すること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、文部科学大臣

香料成分に起因する健康被害について対策の促進を求める意見書
(令和5年10月30日提出)

化学物質過敏症は、これまでシックハウス症候群が問題視され、2009年に保険診療の病名リストに追加されているが、近年、柔軟剤等の香料として使用される微量の化学物質によって、頭痛や吐きけ等、様々な症状を訴える方がおられるといった問題が生じている。
 現時点では、どのように微量の化学物質が関与しているのか、どのような体内の変化が症状を引き起こすのかなど、メカニズムに未解明な部分が多く、政府においては、現在、病態の解明に関する研究が進められているところである。また、香りの強さの感じ方には個人差があり、自分にとって快適な香りでも不快に感じる人がおられ、周囲への配慮が必要であることから、令和3年8月に、厚生労働省を含む5省庁連名で香りへの配慮に関して啓発ポスターを作成され、周知に取り組まれているところである。また、京都市においても、ホームページ等で周知啓発に努めているとともに、環境、保健、子ども、教育、消費者保護に関係する部署間が連携し、市民からの相談等の共有や状況の把握等を進めているところである。
 こうした取組は緒に就いたばかりであり、香料による化学物質過敏症患者をこれ以上増やさないよう、対策を早急に講じていくことが必要である。
 よって国におかれては、下記の事項を推進するよう求める。

                   記

1 香料成分による健康被害の実態調査を行い、科学的な知見の収集に努め、メカニズムの解明に関する研究を促進すること。
2 原因となるものの特定及び香料の成分表示の義務付けや法的規制等の対策について早急に検討を進めること。
3 様々な症状から日常生活に支障を来している方がおられることについて、いまだ社会での理解が十分に進んでいる状況ではなく、一層の周知啓発に努めること。
4 香料による化学物質過敏症の相談を受け入れる体制整備を検討すること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣、環境大臣、消費者庁長官

ブラッドパッチ療法(硬膜外自家血注入療法)に対する適正な診療上の評価等を求める意見書
(令和5年10月30日提出)

交通事故、スポーツ、落下事故、暴力など、全身への外傷等を原因として発症する脳脊髄液漏出症(減少症)によって、日常生活を大きく阻害する様々な症状に苦しんでいる患者の声が、全国各地から国へ数多く寄せられていた。その後、平成18年に山形大学を中心に関連8学会が参加し、厚生労働省研究班による病態の解明が進んだ結果、平成28年から同症の治療法であるブラッドパッチ療法(硬膜外自家血注入療法)が保険適用となった。
 その結果、それまで高額な自費診療での治療を必要としていた患者が、保険診療の下にブラッドパッチ療法を受けることができるようになり、京都市においてもいくつかの医療機関が実施しているが、脳脊髄液漏出症(減少症)の患者の中には、保険適用(J007-2)の要件に掲げられている「起立性頭痛を有する患者に係るもの」という条件を伴わない患者がいるため、医療の現場では混乱が生じている。
 また、その後の研究で、脳脊髄液の漏出部位は1か所とは限らず、けい椎や胸椎部でも頻繁に起こることが報告された。そのため、このけい椎や胸椎部にブラッドパッチ療法を安全に行うには、X線透視下で漏出部位を確認しながらの治療が必要であるが、診療上の評価がされていない現状がある。
 よって国におかれては、上記の新たな現状を踏まえ、脳脊髄液漏出症(減少症)の患者への、公平で安全なブラッドパッチ療法の適用に向け、下記の事項について適切な措置を講じるよう強く要望する。

                   記

1 脳脊髄液漏出症(減少症)の症状において、約10%は起立性頭痛を認めないと公的な研究でも報告があることを受け、診療報酬算定の要件の注釈として「本疾患では起立性頭痛を認めない場合がある」と加えること。
2 ブラッドパッチ療法(硬膜外自家血注入療法)において、X線透視を要件として、漏出部位を確認しながら治療を行うことを可能にするよう、診療報酬を改定すること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、厚生労働大臣

次元の異なる少子化対策としての就学支援金の所得制限の撤廃など保護者負担軽減を求める意見書
(令和5年10月30日提出)

昨今、国際情勢を取り巻く状況が一層厳しいものとなる中、総務省発表でも、消費者物価指数が本年8月まで12か月連続で3%以上の物価上昇率となるなど、物価高騰をはじめとした、市民負担が増加する状況が長期化している。
 こうした中、本市では、国の「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」による臨時交付金等を最大限活用し、物価高騰に直面する保護者の負担を増やすことなく、通常使用している食材の使用を維持したうえで、従来どおりの栄養バランスや分量を保った学校給食を実施するとともに、小・中学校での就学援助制度においても、国の補助制度が廃止され、一般財源とされた平成17年度以降も必要額を確保する中で、この間、家庭の経済状況の急変に対する家計急変措置による認定等も速やかに行うなど、保護者負担の軽減に努めているところである。
 また、高等学校等への進学率が全国・本市共に99%程度という中で、保護者の授業料負担についても、高等学校等就学支援金制度をはじめ、学用品の支援等、授業料以外の教育費の支援として、奨学のための給付金制度等を京都府において実施されるとともに、本市においても、市立高等学校生徒世帯に端末購入の補助制度等を新設する等、保護者負担の軽減を進めているところである。
 よって国におかれては、学校給食の食材費高騰に対する継続的な財政支援はもとより、子育て政策の象徴的な政策としての学校給食費無償化を実現することを求めるとともに、生まれ育った環境や現在の境遇に左右されることなく、また、誰一人取り残すことなく、子どもたちが安心して学校生活を送れるよう、小・中学校での就学援助制度の実態に即した地方交付税措置の改善、高等学校等就学支援金の所得制限の撤廃も含めた基準緩和等、教育環境の充実に向けた抜本的な対策を講じることを求める。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣、内閣府特命担当大臣(こども政策)、内閣府特命担当大臣(少子化対策)、こども家庭庁長官

下水サーベイランス事業の実施を求める意見書
(令和5年10月30日提出)

新型コロナウイルス感染症の5類移行後、感染者数の把握が定点把握に変更されたこともあり、正確な感染状況が見えづらくなっている現在、今後起こり得る感染のピークや傾向を把握するためにも、また、新たな感染症に対応するためにも、「下水サーベイランス(疫学調査)」を全国の地方公共団体の下水処理場で実施すべきである。
 感染症対策の基本は、適切な検査を正確に行うことが肝要だが、PCR検査などでは感染者が自主的に検査を受けなければ陽性者を特定できず、各地域の感染の広がりの傾向をつかむことはできない。しかし、「下水サーベイランス」を活用すれば、その地域の「見えない感染を見える化」でき、感染の初期段階から、医療機関の検査報告よりも早く感染の兆候が分かり、その後の感染の規模や増減の傾向も把握できる可能性がある。
 内閣官房が令和4年度に実施した「下水サーベイランスの活用に関する実証事業」でも、その結果報告において「将来の感染状況の予測によって、市民への注意喚起や地方公共団体の体制整備に活用できる可能性がある」と明記されたところである。本実証事業に参加した京都府等に本市も協力し、新規陽性者数との相関性が認められており、更なる工夫も必要ではあるが、妥当性が示されたものと考えられる。
 よって国におかれては、早急に下記の措置を講じられるよう強く要望する。

                   記

 令和5年9月1日に発足した「内閣感染症危機管理統括庁」が司令塔となって、厚生労働省、国土交通省及び各地方公共団体が連携して下水サーベイランス事業を全国展開すること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、厚生労働大臣、国土交通大臣、感染症危機管理担当大臣

診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の物価高騰・賃金上昇への対応を求める意見書
(令和5年10月30日提出)

医療・福祉人材の確保に大変に苦慮している状況にあって、処遇改善は喫緊の課題である。その中で、今春の春闘の賃上げ率は大企業で3.58%と30年ぶりの高い水準となり、消費者物価指数は12か月連続で前年同月比3%以上の上昇で高止まりしている。
 公定価格で運営されている医療の診療報酬は2年に1度、介護報酬と障害福祉サービス等報酬は原則3年ごとの改定のため、物価・賃金の動向をタイムリーに反映することが難しい。
 特に介護分野の賃上げ率は、介護関係11団体の調査によると1.42%にとどまり、他分野への人材流出に拍車が掛かっているため、賃金格差を埋める処遇改善の取組が不可欠である。
 よって国におかれては、次期診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の同時改定でしっかりと対応するとともに、次期改定が適用される新年度を待たずに、経済対策において前倒しで物価高騰・賃金上昇への対応を行うことを強く求める。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、厚生労働大臣

コロナ禍からの回復期における公共交通の課題改善に向けた支援を求める意見書
(令和5年10月30日提出)

公共交通は、市民生活や観光などの活動において必要不可欠な都市インフラである。コロナ禍において、その利用者が大幅に減少したことから、交通事業者は、政府・自治体の支援を受けながら、利用実態に応じた減便・減車などを行い、交通ネットワークの維持に努めてきた。コロナの5類移行後、人流の回復が進みつつある中、交通事業者は、復便・増車など供給量を増やすための努力を行っているところだが、コロナ禍における収益悪化の影響や特に深刻さを増している担い手不足等、極めて厳しい状況にあり、その結果、本市最大の玄関口である京都駅など、場所・時間帯によっては、供給不足などの課題が生じている。
 よって国におかれては、こうした喫緊の課題への対応、ひいては持続可能な公共交通の実現を図るため、下記のことを実施するよう求める。

                   記

1 深刻な担い手不足にある交通事業者の採用活動や離職率低減の取組をバックアップするため、処遇改善や魅力発信等に係る支援を強化すること。
2 交通事業者・自治体に対する安定的な財政支援を行うとともに、持続可能な運送サービスの実現に向けた更なる制度の充実を図ること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、国土交通大臣

公立学校教員の処遇改善に向けた給特法の抜本的改正を求める意見書

(令和5年10月30日提出) 

文部科学省が2023年4月に公表した教員勤務実態調査(令和4年度)速報値によると、国が定めた上限を超える残業をしていた教員の割合が、小学校で64.5%、中学校で77.1%となり、中学校教員の36.6%が過労死ラインを超えて働いているなど、過酷な労働環境に置かれている教員の割合が高い状況であり、休職者の増加や教職志望者の減少などにより深刻な教員不足にも陥っている。
 1971年に制定された、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(いわゆる「給特法」)」では、教員には原則として時間外勤務を命じないとしつつ、例外的に①児童生徒の実習に関する業務、②学校行事に関する業務、③教職員会議に関する業務、④非常災害などのやむを得ない場合の業務の、「超勤4項目」に限り残業が認められると定められるとともに、法制定当時の勤務実態調査において、超過勤務時間が「月8時間」と算出された結果、残業代の代わりに、月8時間分の超過勤務相当分として、給料月額の4%を「教職調整額」として支払うという制度が運用されてきた。
 しかしながら、「超勤4項目以外は時間外勤務を命じない」という原則が学校現場において形骸化していき、様々な要因で教員の長時間労働が進んだ結果、給特法が想定していた4%の教職調整額が、現在の公立学校教員の勤務実態と懸け離れたものとなっている状況である。
 よって国におかれては、公立学校現場において常態化している教員の長時間労働を是正し、その抜本的な処遇改善を図るため、制度開始から半世紀以上が経過した給特法について、公立学校の教育現場の実態に合わせるべく、超過勤務手当などの創設を含む、教員の処遇改善に向けた抜本的な改正を速やかに講じることを求める。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 

(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、文部科学大臣

公立学校教員の処遇改善や教職員定数の改善など、学校運営体制の整備の充実に向けた諸制度の改革を求める意見書
(令和5年10月30日提出)

「教育は人なり」といわれるように、教育の質を左右するのは教師であり、少子化やデジタル化など、加速度的に変化する社会の中で、我が国の未来を創造する子どもたちを育てる教師は、崇高な使命を有する掛け替えのない職業である。
 国の令和4年度教員勤務実態調査の速報値では、平成28年度実施の前回調査から長時間勤務の状況は一定程度改善し、京都市においても、スクール・サポート・スタッフの全校配置等の取組により、令和4年度の超過勤務の月平均時間が37時間48分と、令和元年度と比較して4時間55分減少しているが、依然として長時間勤務の教師が多い実態がある。また、採用試験の倍率についても、京都市では、5倍を超える倍率を維持しているが、大量退職・大量採用を背景に、全国的には、平成12年度は13.3倍であったのに対し、令和4年度は3.7倍と大きく低下するなど、深刻な教師のなり手不足の現状がある。
 現在、中教審において、「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について検討が進められており、教師の勤務制度の改革を含めた一層実効性のある働き方改革の推進、さらには、教職調整額及び超勤4項目の在り方など、学校現場の状況や県費負担教職員制度等を踏まえた教師の給与や手当に関する枠組みの見直しなどの議論が始まっている。
 こうした処遇改善と併せて、教科担任制やチーム担任制などを含め、柔軟な学級編制や地域・子どもの実態に応じた多様な学びを実現する教職員定数の抜本的な改善、不登校児童生徒や障害などの様々な困りを抱える子どもを支援するスタッフの増員等、学校の指導・運営体制の充実についても、一体的に進めることが不可欠である。
 よって国におかれては、教師一人一人の長時間勤務の状況の更なる改善を図り、その意欲と能力が最大限発揮できる勤務環境を整備し、大きな成果を挙げてきた日本型学校教育を持続可能な形で実現できるよう、現在中教審で議論されている給特法の改正を含む処遇改善、創造性豊かな教育活動を実現する教職員定数の改善など、学校運営体制の整備の充実に向けた諸制度の改革を速やかに進めることを求める。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、文部科学大臣