令和5年定例会(令和6年3月市会)

最終更新日:令和6年3月27日

意見書・決議

障害者相談支援事業に係る消費税の取扱いに関する財政支援及び非課税事業への見直しを求める意見書
(令和6年3月27日提出)

障害者総合支援法に基づき市町村が実施している障害者相談支援事業について、令和5年10月4日付けで国から本事業が課税対象事業である旨の事務連絡が発出された。
 本事業は、平成13年5月の消費税法基本通達等の一部改正において、社会福祉関係の非課税範囲として規定されていたが、その後の関係法令の改正及びそれに伴う基本通達の見直しにおける本事業に係る課税の取扱いの変更について、国から自治体への周知がされていなかった。これが、本市も含め、過半数以上の政令指定都市や多くの自治体がこれまで非課税事業として取り扱ってきた要因であると認識しており、結果として、各自治体では、受託法人に対して、消費税のほか、延滞税や無申告加算税の追納等への補填による対応が必要となっている。
 また、本事業の性質及び事業内容は、社会福祉事業の非課税範囲として規定されていた平成13年当時から現在に至るまで変わっておらず、さらには、高齢者施策における同種の相談事業である包括的支援事業が原則非課税であることとの整合性が図られていないことを踏まえると、本事業が課税対象と取り扱われることは承服し難い。
 よって国におかれては、今事案において受託法人が追納した延滞税及び無申告加算税相当額を補填した自治体に対して財政支援を行うとともに、本事業の性質や高齢者施策との整合性等を踏まえ、今後、非課税事業とするよう強く求める。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、厚生労働大臣、国税庁長官

建設アスベスト被害者の救済とアスベスト対策の拡充を求める意見書
(令和6年3月27日提出)

京都では、環境先進都市として、環境と調和する持続可能な社会の実現に向けた取組を進めている。今後、既存建築物の老朽化等により、京都市のみならず全国的にも建替えが進むことが見込まれる中、アスベスト対策の拡充についても喫緊の課題と考えている。
 2021年5月17日、最高裁判所は、建設業従事者のアスベスト被害について、国の責任と大手アスベスト建材製造企業10社の賠償を認める判決を言い渡した。
 同判決等を踏まえ、特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律(建設アスベスト給付金法)が成立、2022年1月から国の拠出による建設アスベスト被害者に対する給付金制度が開始された。
 しかし、給付金支給対象者は限定されており、アスベスト建材製造企業による補償の在り方も定められていない。
 また、大気汚染防止法等のアスベスト関連法の改正により規制が強化され、2022年4月から一定規模以上の工事は事前調査結果の報告が必須となり、2023年10月からは有資格者による事前調査が義務付けられた。
 しかし、このように規制を強化しても、それを逃れるために違法行為が行われると国民や建設業従事者の健康被害も心配されることから、アスベストに関する監視・指導体制の強化についても、併せて求められているところである。
 よって国におかれては、下記のとおり対策を講じられるよう求める。

                   記

1 アスベストによる健康被害者の治癒や症状進行抑制に効果のある治療法の研究・開発を促進し、そのための安定的な予算を確保すること。
2 建設アスベスト給付金法附則第2条に基づき、アスベスト建材製造企業による補償も含め、被害者の救済制度の充実を図ること。
3 アスベストに関する被害者の治癒を最優先し、隙間ない救済を図るため、被害者等の実態を把握し、適切に給付金制度の見直しを図ること。
4 大気汚染防止法による建物解体などにおける飛散防止対策について、地方公共団体が監視体制及び適正処理等の指導体制を強化するための財源支援を行うこと。
5 「住宅・建築物安全ストック形成事業(住宅・建築物アスベスト改修事業)」について、レベル1建材のみならず、レベル2・レベル3建材も対象にするなど、建築物の所有者等に対する調査、除去費用の補助制度を拡充すること。
6 アスベスト被害を国全体の課題と捉え、国民や事業者に対し、アスベストによる健康被害、アスベスト関連法の改正の周知徹底を図ることに加え、飛散防止対策の実施状況調査を強化すること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、厚生労働大臣、国土交通大臣、環境大臣

再審法改正に向けた速やかな議論を求める意見書
(令和6年3月27日提出)

誤判により有罪判決を受けたえん罪被害者を救済する再審制度については、刑事訴訟法「第4編 再審」(以下「再審法」という。)に規定が設けられているが、再審が認められることはまれであり、えん罪被害者の救済は容易には進んでいない。
 その要因として、刑事訴訟法の再審に関する規定の少なさや、それによる個々の裁判体の裁量が大きいことも指摘されているが、中でも特に重要な課題として、①再審請求手続において証拠開示規定が存在しないこと、②再審開始決定に対する検察官の不服申立てにより審理が長期化すること、③再審請求手続の規定が整備されておらず、請求人の手続保障が十分になされていないことの3点が挙げられている。
 近年ようやく、再審事件やえん罪被害に対する社会的関心が高まり、学生の街・京都市においても様々な大学や高校の学生有志らの独自調査研究も活発化し、2016年に発足したえん罪救済を目的とする団体「イノセンス・プロジェクト・ジャパン」にも多くの研究者や学生が参加しており、2023年には市内大学に「刑事司法・誤判救済研究センター」が設置されるなど、京都市は再審・えん罪に関する研究・救済活動の重要拠点ともなっているが、再審・えん罪に関する問題は、国民の誰もが関わり得る重要なテーマと意義を持つものである。
 よって国におかれては、えん罪被害者を迅速に救済するため、再審法改正に向けた議論を速やかに行うよう強く求める。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、法務大臣

持続的な学校運営体制の構築に向けた教職員定数及び給与の改善を求める意見書
(令和6年3月27日提出)

学校においては、教員を希望する人の減少、退職者が多いこと、過去における団塊の世代の退職、教育的配慮が必要な状況に加えて、出産休暇や育児短時間勤務者を含む育児休業、介護への配慮が必要な教員が増加するとともに、精神疾患等による病気休職者も全国的に増加傾向であり、休職者等に対する未補充も深刻な状況となるなど、教員不足が喫緊の課題となっている。
 また、令和3年に小学校での35人学級が法制化され、令和6年度には小学校5年生で35人学級が実施されることとなっているが、今後の中学校での35人学級の実現は、子どもたちの学習環境の充実、教職員の負担軽減を図る意味でも早急な対応が求められるところである。
 こうした少人数学級はもとより、教科担任制やチーム担任制などを含め、柔軟な学級編制や地域や子どもの実態に応じた多様な学びを実現する教職員定数の抜本的な改善、不登校児童生徒や障害などの様々な困りを抱える子どもを支援するスタッフの増員等、学校の指導・運営体制の充実についても、一体的に進めることが必要不可欠である。
 さらには、教員のなり手不足という今日の厳しい状況を踏まえれば、現在、国において議論されている処遇改善についても、教職調整額の一律支給の見直し、新たな手当の創出など、学校現場の実態に即した、働きがいのある職場への転換を図る意図を持った財政措置を講じるべきである。
 よって国におかれては、子どもたち一人一人の学びと育ちを支えるための持続可能な学校体制づくりや、教職員の働き方改革に資する、教職員定数の抜本的な改善と教職員給与の改善を速やかに進めることを求める。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、文部科学大臣、内閣府特命担当大臣(こども政策)、こども家庭庁長官

若者のオーバードーズ(市販薬の過剰摂取)防止対策の強化を求める意見書
(令和6年3月27日提出)

近年、処方箋がなくても薬局やドラッグストアで購入できる市販薬の濫用・依存や急性中毒が、重大な社会問題となりつつある。実際、市販薬の過剰摂取(オーバードーズ)による救急搬送が、2018年から2020年にかけて2.3倍に増加したという報告や、精神科医療施設を受診する患者において、市販薬を主たる薬物とする薬物依存患者が、2012年から2020年にかけて約6倍に増加したといった報告がある。
 国立精神・神経医療研究センターの2020年調査によると、全国の精神科医療施設で薬物依存症の治療を受けた10代の患者の主な薬物において、市販薬が全体の56.4%を占めているとのことである。また、過去1年以内に市販薬の濫用経験がある高校生の割合は「60人に1人」と深刻な状況にあることも明らかになった。
 不安や葛藤、憂鬱な気分を和らげたいなど、現実逃避や精神的苦痛の緩和のために若者がオーバードーズに陥るケースが多く、実際、市販薬を過剰に摂取することで、疲労感や不快感が一時的に解消される場合があり、同じ効果を期待してより過剰な摂取を繰り返すことで、肝機能障害、重篤な意識障害や呼吸不全などを引き起こしたり、心肺停止で死亡する事例も発生している。
 京都市では、薬局や医薬品販売業者への立入検査、また、登録販売者業者向けの研修会において、濫用のおそれのある市販薬の販売方法等について指導及び注意喚起を行っているが、現状の販売規制(口頭での氏名・年齢確認、濫用等に関する情報提供の努力義務等)では、濫用防止という目的を十分に達成することが困難である。
 オーバードーズによる健康被害は、違法薬物よりも深刻になる場合があるにもかかわらず、市販薬は違法薬物とは違い、所持することで罪にはならないことから、濫用が発見されにくいこともその対策を難しくしている。
 よって国におかれては、下記の特段の取組を求める。

                   記

1 現在、濫用等のおそれがある6成分を含む市販薬を販売する際、購入者が若年者(高校生・中学生等)である場合は、その氏名や年齢、使用状況等を確認することになっているが、その際、副作用などの説明を必須とすること。
2 若者への市販薬の販売において、その含有成分に応じて販売する容量を適切に制限すると同時に、対面かオンライン通話での販売を義務付け、副作用などの説明と併せて、必要に応じて適切な相談窓口等を紹介できる体制を整えること。
3 濫用等のおそれがある薬の指定を的確に進めると同時に、身分証による本人確認のほか、繰返しの購入による過剰摂取を防止するために、販売記録等が確認できる環境の整備を検討すること。
4 若者のオーバードーズには、社会的孤立や生きづらさが背景にあるため、オーバードーズを孤独・孤立の問題として位置付け、若者の居場所づくり等の施策を推進すること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、厚生労働大臣、内閣府特命担当大臣(こども政策)、孤独・孤立対策担当大臣、こども家庭庁長官

外国法人や外国人による土地等の取得、利用を制限する法整備を求める意見書
(令和6年3月27日提出)

近年、全国各地で外国法人や外国人による土地の取得が進んでいる。沖縄では大きな無人島の土地が外国法人等に取得されたほか、北海道をはじめ全国各地で水源地である森林の買収が多数確認されており、本市においても外国法人等による森林の取得が林野庁の調査で明らかになっている。また、外国法人等による住宅地の取得も確認されており、本市における近年の不動産価格の高騰は、外国法人等の土地取得が要因の一つではないかとの懸念がある。また、一昨年末には、外国の警察組織が日本国内に活動拠点を置き、我が国の主権を侵害するような活動が確認されている。
 一方、国においては令和4年9月に重要土地等調査法が全面施行されたところであるが、同法の対象が重要施設(防衛関係施設等)の周辺及び国境離島等の区域内にある土地等に限定されるとともに、それ以外の住宅地、農地及びマンション等は対象に含まれていないため、今後もこうした土地等が外国法人等に無秩序に取得されると、我が国の主権が脅かされ、安全保障上の重大な問題に発展することが危惧される。
 我が国では、外国法人等による土地の取得及び利用を制限する権利を留保せずに世界貿易機関のGATSに加盟したため、内外差別的な立法を行うことは原則認められていない。しかしながら、GATS加盟国の中には、安全保障の観点から、外国法人等に対する土地の取得及び利用を制限する権利を留保し、国内法で外国人等の土地取得を制限することを可能にした国もある。
 よって国におかれては、外国法人等による土地等の取得、利用を制限するため、GATS加盟国と協議を進め、必要な法整備に早急に取り組むよう強く求める。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、法務大臣、外務大臣、国土交通大臣

今国会での政治資金規正法の改正を求める意見書
(令和6年3月27日提出)

京都市会では、令和5年12月に、政治資金パーティー券販売に係る収受の報告義務不履行や記載漏れなどによって国民に多大な不信感を抱かせるといった問題に対して、政治資金規正法の厳格化に向けた議論を求める意見書を国へ提出した。その後、当事者が説明責任を果たそうとしているが、国民の納得感を得られるところに至っているとはいえない。なお一層の説明責任を果たす必要がある。
 同時に、国会としても再発防止策を議論したうえで政治資金規正法を改正し、国民の政治への信頼を回復する責務を果たさねばならない。
 政治資金規正法については、特に検討を要する新たな具体的な課題として、会計責任者だけでなく政治家も責任を負う「連座制」をどういうケースに適用するか、「国会議員関係政治団体」から使途の公開基準が狭い「その他の政治団体」に政治資金を移動した場合の透明性確保、の2点が挙げられる。
 よって国におかれては、この点も含め政治資金規正法の在り方について早急に議論を始め、今国会中に必要な改正を行うことを強く求める。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣

地方創生に貢献するサーキュラーエコノミー(循環経済)の一層の推進を求める意見書
(令和6年3月27日提出)

循環型社会形成推進基本法は、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷をできる限り低減する「循環型社会」の形成に関する施策を総合的かつ計画的に進めるために、2000年に制定された。我が国では本法律に基づいて、循環型社会の形成に関する施策の推進に20年以上取り組んできた。
 我が国が循環型社会の形成を通じて目指すべき社会は、「環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら、持続的に発展することができる社会」であり、地域におけるサーキュラーエコノミーの推進は、循環型社会を形成するうえで重要なツールであるとともに、地方創生・地域活性化の実現に大きく貢献し得るものである。
 実際に、地域でのサーキュラーエコノミーの実現を目指し、先進的な取組を進める自治体が現れ始めており、地域特性や産業をいかした脱炭素ビジネスの推進、地域由来の資源を活用してのエネルギーの自給率向上や、地域住民の理解醸成を通じた効果的な資源循環ビジネスの構築など、自治体主導によるサーキュラーエコノミーの推進により、地域に新たな付加価値や雇用が創出されている。
 京都市においても、市民から回収したペットボトルを新たなペットボトルに再生する「ボトルtoボトルリサイクル事業」や、民間企業が主体となり使用済みの衣服を市内で循環させるプラットフォーム創出など、サーキュラーエコノミーの取組が進められているところである。
 このように、地域のサーキュラーエコノミーを推進することは、地域課題解決と共に、地域に新たなビジネスや価値を生み出すことによる地方創生の実現に資するものである。
 よって国におかれては、下記の特段の取組を求める。

                   記

1 地域経済の活性化を図るため、プラスチック、金属資源、生ごみ、家畜ふん尿、下水汚泥、紙おむつ等の、地域の循環資源や木質バイオマス等の再生可能資源の活用など、地方自治体と民間企業の連携による資源循環ビジネスの創出への支援を強化すること。
2 地域における廃棄物処理の広域化、廃棄物処理施設の集約化、エネルギー回収の高度化等を推進するとともに、自治体と住民、民間企業等の協働により、地域に適したごみ処理方式や分別区分の選定等による、脱炭素かつ持続可能な適正処理に資する資源循環の体制強化に対する支援を拡充すること。
3 製品の長期メンテナンスやリユース製品の積極的な利用といった、ライフスタイルに係る地域住民・消費者の意識変革や行動変容を促す、携帯アプリ等を活用した新たなサービスの創出等、自治体と民間団体の連携によるリユース製品の循環環境の整備を支援すること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、経済産業大臣、環境大臣