平成29年定例会(平成30年2月市会)

最終更新日:平成30年3月20日

意見書・決議

洪水回避等を目的とした流量確保のための中小河川の河道掘削の予算の確保を求める意見書

(平成30年3月20日提出)

  

 平成28年8月の北海道・東北豪雨や,平成29年7月の九州北部豪雨など,近年,地方における中小河川の被害として,土砂の流出による河床の上昇や,流木等による橋梁での河道埋塞が発生しており,まさしく河床が上がっていることが洪水の発生の一つの原因となっている。
 しかし,これまでの都道府県及び市町村が管理する河川の流量確保のための河道掘削については,維持補修の範囲として,各々の単費予算で行われており,遅々として進んでいないのが実情であった。京都市においても,これまで,市が管理する河川についての河道掘削等の対策を,国庫負担なしで実施してきた。
 そのような中,国土交通省は,中小河川の豪雨対策を強化するため,全国の中小河川の緊急点検の結果を踏まえた「中小河川緊急治水対策プロジェクト」を取りまとめ,中小河川の河道掘削についても再度の氾濫防止対策の一つとして,緊急治水対策プロジェクトに盛り込んだ。
 しかし,この緊急治水対策プロジェクトは,概ね3箇年の時限的措置であり,河道掘削の対策箇所についても「重要水防区間のうち,近年,洪水により被災した履歴がある区間」に限られている。
 よって国におかれては,今回の緊急治水対策プロジェクトが,中小河川を管理する地方自治体にとって真に活用しやすい施策となるよう,下記の事項に取り組むことを強く求める。



1
 河道掘削については,平成29年度補正予算で約1,300億円が盛り込まれているが,次年度以降についても,地方自治体の要望を踏まえ,十分な予算を確保すること。
2  河道掘削の対策箇所を「重要水防区間のうち,近年,洪水により被災した履歴があり,再度の氾濫により多数の家屋や重要な施設の浸水被害が想定される区間」と限定しているが,今後は,中小河川を管理する地方自治体がより柔軟な対応ができるよう,対策箇所の拡大も含め検討すること。また,国の直轄河川の河道掘削についても,周辺自治体の要望を踏まえ,必要な対策を行うこと。
3  「防災・安全交付金」を活用した中小河川の河道掘削について,恒久的な制度となるよう検討すること。


 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,財務大臣,国土交通大臣


バリアフリー法の改正及びその円滑な施行を求める意見書
(平成30年3月20日提出)


バリアフリー新法施行から10年以上が経過し,バリアフリー化は一定程度の進展を見せているところである。そのような中,京都市においては,重点整備地区として10地区11旅客施設を選定し,集中的かつ効率的に実施している。
 しかしながら,急速に地域の人口減少・少子高齢化が進む中で,地域の一体的バリアフリー化のニーズはますます高まっているにもかかわらず,全国の市町村においては,様々な事情から基本構想等の作成が進まない地域もある。また,公共交通事業者の既存の施設のバリアフリー化や接遇の在り方について,一層の向上が急務となっている。
 2020年には,東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催され,これを契機とした共生社会を実現すべく,また,政府の一億総活躍社会の実現を具体化するため,東京のみならず,全国各地の一層のバリアフリー化が進められる必要がある。そのためには,バリアフリー法を改正し,制度面から地域の抱える課題の解決を目指すことが不可欠である。
 政府は,平成29年2月に関係閣僚会議において決定された「ユニバーサルデザイン2020行動計画」に基づき,同法の改正を含むバリアフリー施策の見直しを進めていると聞く。
 よって国におかれては,こうした状況を踏まえ,全国各地のバリアフリー水準の底上げに向けて,同法の改正及びその円滑な施行を確実に実施するとともに,下記の事項について措置を講じるよう強く求める。



1
 地域の面的・一体的なバリアフリー化を進めるため,バリアフリー法の基本構想制度の見直しも含めた新たな仕組みについて検討すること。
2  公共交通事業者がハード・ソフトの一体的な取組を計画的に進める枠組みについて検討すること。
3  バリアフリー施策を進める際には,高齢者,障がい者等の意見を聞くような仕組みを検討すること。あわせて,バリアフリーの促進に関する国民の理解を深めるとともに,その協力を求めるよう,国として教育活動,広報活動等に努めること。
 4   バリアフリー法改正後速やかな施行を行う観点から,改正内容について,十分に周知を行うこと。


 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,国土交通大臣



土地改良法を改正し,必要な施策の推進を求める意見書
(平成30年3月20日提出)


土地改良制度を巡る現状は,農地の所有者と経営の分離が進んでおり,現行制度では事業運営を十分に行えない状況になっている。このことからも,組合員の減少に対応した組合員資格の拡大や,業務運営の適正化など,現行制度の見直しが求められている。
 京都市においても,土地改良施設が治水等の都市機能の維持に果たす役割が高まる中,組合員の負担が増大している。
 よって国におかれては,現在進められている「農業競争力強化プログラム」による調査・検討を踏まえ,下記の視点に立ち,土地改良法を改正し,必要な施策を推進することを強く求める。



1
 所有者が中心の土地改良区における,所有者から耕作者への組合員の資格交替を促進すること。
2  複雑な組合員の資格交替手続を見直し,その円滑化を図ること。
3  土地改良区の運営には耕作者の意向を反映することが重要なことから,現行の理事要件を見直すこと。
4   組合員全員参加の総会に加えて,総代会を設置しやすくなるよう,土地改良区の組織決定機関を見直すこと。
5   その他,耕作者の意向を踏まえた農業用水の配分ルールの設定や,多面的機能支払の活動組織による施設管理への参加など,柔軟で持続的な仕組みに見直すこと。


 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,農林水産大臣



所有者不明の土地利用を求める意見書
(平成30年3月20日提出)


平成28年度の地籍調査において,不動産登記簿上で所有者の所在を確認することができない土地の割合が,約20パーセントに上ることが明らかにされた。また,国土計画協会・所有者不明土地問題研究会は,2040年にはほぼ北海道の面積に相当する約720万ヘクタールの所有者不明の土地が発生すると予想している。
 現行の対応策には,土地収用法における不明裁決制度の対応があり,所有者の氏名・住所を調べても分からない場合は,調査内容を記載した書類を添付するだけで収用裁決を申請することができるが,探索などの手続に多大な時間と労力が必要となっている。
 また,民法上の不在者財産管理制度もあるが,地方自治体がどのような場合に申立てができるかが不明確なうえ,不在者1人につき管理人1人を選任するため,不在者が多数に上ると手続に多大な時間と労力が掛かる。
 所有者不明の土地の利用に明示的な反対者がいないにもかかわらず,利用するために多大な時間とコストを要している現状に対し,所有者の探索の円滑化と所有者不明の土地の利用促進を図る必要がある。
 よって国におかれては,所有者不明の土地利用について下記の点を踏まえた制度を構築するよう強く求める。



1
 所有者不明の土地の発生を予防する仕組みを整備すること。
2  土地所有権の放棄の可否や土地の管理責任の在り方等,土地所有の在り方の見直しを行うこと。
3  合理的な探索の範囲や有益な所有者に関する情報へのアクセス等,所有者の探索の合理化を図ること。
4   所有者不明の土地の収用手続等の合理化や円滑化を図ること。
5   収用の対象とならない所有者不明の土地の公共的事業への利用を促進すること。


 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,法務大臣,農林水産大臣,国土交通大臣



新たな森林管理システムの早期実施を求める意見書
(平成30年3月20日提出)


我が国の森林面積は,国土面積の3分の2に当たる2,500万ヘクタールあり,このうち1,000万ヘクタールを占める人工林の約半数が主伐期となっている。しかし,これら人工林のうち,主伐による原木の供給量は,年間成長量の約4割にとどまっており,成長量の6割強は未利用のままとなっている。
 他方,林家の87パーセントが保有面積10ヘクタール未満であるなど,小規模な森林所有者によって山林が保有されている現状にある。また,森林所有者の経営意欲が低い一方で,素材生産業者等の林業経営者が事業拡大の意欲を持っていても,十分に森林の確保ができない現状にある。京都市でも面積の4分の3が森林で,全国平均を超える現状にあり,課題の解決が求められている。
 そのような中,森林所有者の森林管理の責務を明確化し,森林所有者が森林を管理することができない場合には,市町村が森林管理の委託を受け,意欲と能力のある林業経営者に再委託するスキームを設けるとともに,再委託できない森林や再委託されるまでの森林は,市町村が管理することができるようにすることも必要である。
 よって国におかれては,このミスマッチを解消し,林業の成長産業化と森林資源の適切な管理を図るために新たな森林管理システムを構築し,森林の管理経営の集積や集約化を推進するため,下記の事項について取り組むことを求める。



1
 市町村における森林管理に対する責務が増大することから,その体制の整備や財政への支援を図ること。あわせて,森林管理の担い手の育成に向けての支援も図ること。
2  再委託を進めるために,路網の整備,集中的な高性能林業機械の導入及び主伐・再造林の一貫作業システムの普及を図ること。


 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,農林水産大臣,林野庁長官