平成26年第2回定例会(9月市会)

最終更新日:平成26年10月27日

意見書

奨学金制度の充実を求める意見書
(平成26年10月27日提出)

独立行政法人日本学生支援機構の奨学金制度は,経済的理由により修学に困難がある大学生等を対象とした国が行う貸与型の奨学金制度で,無利息の第一種奨学金と年3パーセントを上限とする利息付きの第二種奨学金がある。平成24年度の貸付実績は,第一種が約40万2,000人,第二種が約91万7,000人となっている。
 しかしながら,近年,第一種,第二種共に,貸与者及び貸与金額が増加する中,長引く不況や就職難などから,大学を卒業しても奨学金の返還ができずに生活に苦しむ若者が急増しており,平成24年度の返還滞納者数は約33万4,000人,期限を過ぎた未返還額は過去最高の約925億円となっている。
 同機構は,返還が困難な場合の救済手段として,返還期限の猶予,返還免除,減額返還などの制度を設け,平成24年度からは,無利息の第一種のみ「所得連動返還型無利子奨学金制度」を導入している。さらに,平成26年度からは,延滞金の賦課率の引下げを実施している。しかし,これら救済制度は要件が厳しく,通常の返還期限猶予期間の上限が10年間であるなど,様々な制限があることに対して問題点が指摘されている。
 よって国におかれては,意欲と能力のある若者が,家庭の経済状況にかかわらず,安心して学業に専念できる環境を作るため,下記の事項について強く要望する。


1  大学生などを対象とした給付型奨学金制度を早期に創設するとともに,高校生を対象とした給付型奨学金制度の拡充を行うこと。。
2  オーストラリアで実施されているような,収入が一定額を超えた場合に,所得額に応じた返還額を,課税システムを通じて返還ができる所得連動返還型の奨学金制度を創設すること。
3  授業料減免を充実させるとともに,無利子奨学金をより一層充実させること。
4  海外留学を希望する若者への経済的支援を充実させるため,官民が協力した海外留学支援を着実に実施すること。  


 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
  衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,財務大臣,文部科学大臣


「危険ドラッグ」の根絶に向けた総合的な対策の強化を求める意見書
(平成26年10月27日提出)

昨今,「合法ハーブ」等と称して販売される薬物(いわゆる「危険ドラッグ」)を吸引し,呼吸困難を起こしたり,死亡したりする事件が全国で相次いで発生している。特に,その使用によって幻覚や興奮作用を引き起こしたことが原因とみられる重大な交通事故の事案が度々報道されるなど,深刻な社会問題となっている。
 「危険ドラッグ」は「合法」と称していても,規制薬物と似た成分が含まれているなど,大麻や覚せい剤と同様に,人体への使用により危険が発生するおそれがあり,好奇心などから安易に購入したり,使用したりすることへの危険性が強く指摘されている。
 厚生労働省は,省令を改正して昨年3月から「包括指定」と呼ばれる方法を導入し,成分構造が似た物質を一括で指定薬物として規制した。また,本年4月には改正薬事法が施行され,指定薬物については大麻や覚せい剤と同様,単純所持が禁止された。
 しかし,指定薬物の認定には数箇月を要し,その間に規制を逃れるために化学構造の一部を変えた新種の薬物が出回ることにより,取り締まる側と製造・販売する側で「いたちごっこ」となっている。また,「危険ドラッグ」の鑑定には簡易検査方法がないため捜査に時間が掛かることも課題とされている。
 よって国におかれては,下記事項について取り組み,「危険ドラッグ」の根絶に向けた総合的な対策を強化することを強く求める。



1  インターネットを含む国内外の販売・流通等に関する実態調査及び健康被害との因果関係に関する調査研究の推進,人員確保を含めた取締態勢の充実を図ること。
2  簡易鑑定ができる技術の開発をはじめ鑑定時間の短縮に向けた研究の推進,指定薬物の認定手続の簡素化を図ること。
3  薬物乱用や再使用防止のために,「危険ドラッグ」の危険性の周知及び学校等での薬物教育の強化,相談体制・治療体制の整備を図ること。 

  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


 (提出先)
  衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,文部科学大臣,厚生労働大臣

軽度外傷性脳損傷に係る周知及び適切な労災認定に向けた取組の推進を求める意見書
(平成26年10月27日提出)

軽度外傷性脳損傷(MTBI)は,転倒や転落,交通事故,スポーツ外傷などにより,頭部に衝撃を受けた際に脳が損傷し,脳内の情報伝達を担う「軸索」と呼ばれる神経線維が断裂するなどして発症する疾病である。
 その主な症状は,高次脳機能障害による記憶力・理解力・注意力の低下をはじめ,てんかんなどの意識障害,半身まひ,視野が狭くなる,匂いや味が分からなくなるなどの多発性脳神経まひ,尿失禁など,複雑かつ多様である。
 しかしながら,軽度外傷性脳損傷は,受傷者本人から様々な自覚症状が示されているにもかかわらず,MRIなどの画像検査では異常が見つかりにくいため,労働者災害補償保険(労災)や自動車損害賠償責任保険の補償対象にならないケースが多く,働くことができない場合には,経済的に追い込まれ,生活に窮することもあるのが現状である。さらに,本人や家族,周囲の人たちも,この疾病を知らないために誤解が生じ,職場や学校において理解されずに,悩み,苦しむ状況も見受けられる。
 世界保健機関(WHO)においては,外傷性脳損傷の定義の明確化を図ったうえで,その予防措置の確立を提唱しており,我が国においてもその対策が求められるところである。
 よって国におかれては,以上の現状を踏まえ,下記の事項について適切な措置を講じるよう強く要望する。


                               記

1  軽度外傷性脳損傷(MTBI)について,国民をはじめ,教育機関等に対し,広く周知を図ること。
2  画像所見が認められない高次脳機能障害の労災認定に当たっては,厚生労働省に報告することとされているが,事例の集中的検討を進め,医学的知見に基づき,適切に認定が行われるよう,取組を進めること。

(提出先)
  衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,文部科学大臣,厚生労働大臣


聴覚障害者に対する公職選挙のバリアフリーを求める意見書
(平成26年10月27日提出)

公職選挙において全ての人へ情報を伝達することは,極めて重要なことである。
 とりわけ,聴覚障害者など障害を持つ方への情報伝達は基本的人権の一つである参政権や知る権利の観点からも制度上担保されなければならないものである。
 近年,高齢社会の進行に伴い老人性難聴者の増加が深刻化してきており,従来の中途失聴者・難聴者の方を含めると,京都市内においては6,000人を超える難聴者の方がおられる。
 現状では,こうした中途失聴者・難聴者の方にとって,公職選挙法及び関係法令では,参政権の中で最も大切な政見放送での字幕の挿入や個人演説会での要約筆記が保障されているとは言えない。
 本年1月に批准された「障害者の権利に関する条約」の第2条においても,「意思疎通」の手段として,言語,文字の表示,点字,触覚を使った意思疎通,拡大文字,利用しやすいマルチメディア並びに筆記,音声,平易な言葉,朗読その他の補助的及び代替的な意思疎通の形態と定義がされており,公職選挙におけるバリアフリー化の対応が求められるところである。
 こうした観点からも,公職選挙において,手話と要約筆記は同等に扱うべきであると同時に,個人演説会場における手話や要約筆記も選挙運動と解すべきではなく,あくまで情報の保障であると考えるべきである。
 よって国におかれては,下記の事項を実施することができるよう,公職選挙法及び関係法令を速やかに改正されるよう強く要望する。


1  政見放送における手話通訳と同時に字幕を挿入すること。
2  個人演説会において手話や要約筆記が利用しやすい環境を整えること。


  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 (提出先)
   衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣

魅力ある地方都市の構築へ向けた施策の推進を求める意見書
(平成26年10月27日提出)

低迷していた日本経済が今再び力を取り戻しつつある中で,政府は,更なる日本の前進に向けて,新たな成長戦略を発表するなど積極的な姿勢で取り組んでいる。
 長年の課題であった少子高齢化に終止符を打ち,懸念される人口急減社会への道を断つため,合計特殊出生率の向上や子育て支援策の拡充,ワークライフバランスの推進に全力で取り組む時に来ている。それとともに,東京への一極集中や,地方経済の衰退による地域の活力低下に対し,新たな雇用の場の創出や,新たな魅力の創造,あらゆる機能の集約化を図り,地方の活性化を急速に進めることが,広く国民の利益に資することは明らかである。  
 よって国におかれては,下記の事項について適切な措置を講じるよう強く求める。



1  立法,司法,行政をはじめ,経済・金融や研究・学術の機関などを全国の地方都市に分散させること。
2  地方において中枢的な機能を担うことのできる都市については,その地方の発展を支えるとともに,国内全体の推進力として力を発揮することができる体制を構築するために,様々な権限の委譲を含め,行政上の機能を一層充実させるとともに,地域活性化のプラットフォームとして集中的な投資を行うこと。
3  人口増加を目指す定住圏等において,新たな雇用の場を創出し,若い世代が暮らしやすく,子育てしやすい環境づくりに取り組めるよう,地域再生に高い効果が期待される事業について,地域の使いやすさを重視した再編や拡充を行うこと。
4  首都圏から全国へ,都心部から中山間地への人の流れを生み出せるよう,UターンIターンの促進や地域おこし協力隊,新・田舎暮らし隊の推進,都市高齢者の地方への住み替えを容易にする支援措置等に取り組むこと。
5  地方における企業誘致や起業を促進するために必要な財政上,税制上の措置を講じること。

  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 (提出先)
   衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,財務大臣,厚生労働大臣,農林水産大臣,内閣府特命担当大臣(経済財政政策)

農業委員会制度・組織改革が真に農業者のためになる改革となるよう求める意見書
(平成26年10月27日提出)

農業委員会制度・組織の改革については,本年6月24日に国において「農林水産業・地域の活力創造プラン」が改訂されるとともに「規制改革実施計画」が閣議決定された。
 本プランは,農業を取り巻く課題の解決に向け,産業政策と地域政策を車の両輪として政策を再構築し,「強い農林水産業」と「美しく活力のある農山漁村」を創り上げることを方針としている。
 そして,その成果を国民全体で実感することができるものとするため,農林水産業の成長産業化を国全体の成長に結びつけるとともに,国民の食を守り,美しく伝統ある農山漁村を将来にわたって継承していくとしている。
 よって国におかれては,本プランの達成に向けて,この中の農業委員会に関する改革について,優良な農地を守り,地域農業の活性化に奮闘してきた農業委員の活動実績をいかし,今後も地域からの期待に応えていける改革となるよう,とりわけ下記の項目について強く要望する。




1 農業者の「代表制」を担保する公選制と同様の仕組みの措置  
 農業委員の選出方法について,選挙制度を廃止し,市町村議会の同意を要件とする市町村長の選任委員に一元化するとしている。
 しかし,農地の権利移動などに携わる農業委員の活動には,農業者の信頼に裏付けられた代表者が公平性・公正性・透明性の確保された手続により選出されることが不可欠である。 ついては,農業者の信任を得た代表者を選任する仕組みを措置すること。
2 「意見の公表,行政庁への建議」等の業務の法定化の維持
 「意見の公表,行政庁への建議」等について,農業委員会等に関する法律に基づく業務から除外するとしているが,本業務は,農業者の代表として農業委員会の意見を行政庁に反映させる極めて重要なものであり,法定化を維持すること。
3 円滑な業務遂行のための財源確保
 「規制改革実施計画」において,委員の職務にふさわしい報酬水準への引上げ,農業委員会の事務局の強化,農地利用最適化推進委員(仮称)の設置が定められており,耕作放棄地の発生防止など,増大する役割を果たし,求められる業務を適正かつ円滑に遂行するために必要な財源を確保すること。


  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


 (提出先)
  衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,農林水産大臣,内閣府特命担当大臣(規制改革)