令和6年定例会(11月市会)

最終更新日:令和6年12月11日

意見書・決議

「103万円の壁」を早急に解消することを求める意見書
(令和6年12月11日提出)

今日の日本経済においては、物価が上昇し続け、日常生活を営むのに必要な経費も増加し続けている。また、所得税は名目賃金の上昇率を上回る率で負担が増えており、現行の所得税制度が就労抑制につながっている。これらのことが国民生活及び国民経済に悪影響を及ぼしており、本市においても、年収の壁が、市民の就労意欲を減退させたり、人手不足の中でも労働調整を行わせたりする一因となっている。
 現在、国会においては、その大本である「103万円の壁」を解消するための議論がなされているが、国民生活にはもはや議論に時間を掛ける余裕はない。
 一方、所得税や住民税を活用する社会保障制度への影響が生じる可能性があるほか、所得税は地方交付税の原資となっていることから、所得税収の減による地方交付税財源の減少も懸念される。
 よって国におかれては、下記の措置を講じたうえで、103万円の壁を早急に解消するよう強く求める。
 
                     記
 

1 基礎控除の最高控除額及び給与所得控除の最低控除額の合計額を103万円から大幅に引き上げること。
2 扶養親族のうち年齢16歳未満の者に対する扶養控除を復活させること。
3 扶養控除について配偶者特別控除と同様に被扶養者の年収に応じた逓減制を導入し、扶養者の手取収入に激変が生じない制度とすること。
4 地方財政や社会保障制度など、見直しが与える影響に十分配慮したうえで、税制度の在り方も含め、地方団体の声も聴きながら、地方公共団体の財政状況に悪影響を及ぼすことのない制度を構築すること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、厚生労働大臣、内閣府特命担当大臣(経済財政政策)、経済再生担当大臣、新しい地方経済・生活環境創生担当大臣、国税庁長官

住宅宿泊事業法の改正を求める意見書
(令和6年12月11日提出)

京都市がまとめた2023年京都観光総合調査によると、令和5年の観光客数は、コロナ禍前の令和元年より6.0%少ない5,028.1万人だったが、宿泊客数は、令和元年を12.0%上回る1,474.5万人になっており、コロナ禍を経て、京都市内への宿泊客は急増している。
 これに伴い、住宅宿泊事業の届出も増加傾向が顕著であり、新規届出件数は、令和4年度37件に対し、令和5年度は95件、さらに、令和6年度は10月末現在で既に139件となっている。また、地域住民からは、住宅宿泊事業の開業に伴う騒音、ごみ問題など、マナー違反を心配する声も寄せられている。
 京都市では、平成30年からの住宅宿泊事業の実施に当たって、事業の適正な運営の確保を図るため、法律の範囲内で全国で最も厳しいと言われる条例をはじめとした京都市の独自ルールを制定し、厳格な運用をしているところであるが、条例で定めることができる内容は、住宅宿泊事業法で制限されている。また、住宅宿泊事業法は事実の通知を目的とする届出制を採用しており、許可制と異なり行政の裁量が入る余地は少ない。
 よって国におかれては、住民、観光客等全ての方の安全安心の確保や、それぞれの地域にふさわしい良質な宿泊環境を確保するため、住宅宿泊事業法を改正し、条例委任の範囲を拡大するとともに、行政による裁量の幅が広がるよう、届出制に代えて許可制を導入するよう強く求める。
 
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、厚生労働大臣、国土交通大臣、観光庁長官

慢性閉塞性肺疾患(COPD)対策の強化を求める意見書
(令和6年12月11日提出)

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、主としてたばこの煙やPM2.5などの有害物質を長期に吸入暴露することで生じる肺の慢性疾患であり、症状としてはせき、たん、息切れを特徴とする。現在、COPDは、「健康日本21」において、がん、循環器疾患、糖尿病と並び、対策を必要とする主要な生活習慣病に位置付けられている。COPDでは、肺胞が破壊されることにより、酸素の取込みや二酸化炭素を排出する機能が低下する。ここで一度破壊されてし まった肺(気管支や肺胞)は、治療によって元に戻らないため、重症化する前段階で治療を開始することで進行を遅らせたり、急激に状態が悪化することを予防したりすることが大切になる。また、COPDが進行し、息切れや症状悪化により身体活動性が低下することで、フレイル(健康な状態と要介護状態の中間段階)に移行し、要介護や寝たきりの可能性が増大するとも言われており、今後、介護費用の増大につながる可能性も示唆されている。
 さらに、COPDは、循環器疾患(狭心症等の心血管疾患、脳血管疾患)、がんなど、他の慢性疾患との関連性も注目されている。日本COPD疫学研究(NICE study)の調査によれば、国内のCOPD患者は推定530万人とされている。京都市では、たばこによるCOPDを含めた健康への影響の観点から、チラシやホームページ、中学生を対象とした喫煙防止教育による普及啓発や、肺がん検診等で呼吸器症状がある方への受診勧奨に取り組んでいるところである。しかし、厚生労働省等のデータからは、実際に治療を受けているのは約36万2,000人にとどまっており、約500万人が未診断であると考えられる中、COPDの早期診断・早期治療への取組の強化が必要である。
 よって国におかれては、COPDの認知度向上、予防、早期診断・早期治療、重症化予防など、総合的な対策を行うため、下記の事項に取り組まれるよう求める。
 
                   記

1 COPDへの情報や知識の普及啓発について、その症状などを紹介するチラシやリスクが分かるチェックシートの作成と配布等、認知度向上に向けた地方自治体の取組を財政支援すること。あわせて、かかりつけ医等による適切な指導、学校教育や企業団体の保健指導など、幅広い年齢層への教育や指導を推進すること。
2 COPDを診断するスパイロメーターの地域医療機関への配備を支援するとともに、正確な計測を可能にする臨床検査技師、保健師等に対する研修の実施やガイドラインの周知徹底を行うこと。あわせて、画像検査(胸部X線や胸部CT検査)等を用いた肺の炎症状態を定量的に測定する検査法を開発し、普及すること。
3 地方自治体によるCOPDの受診勧奨対策に対する財政支援や保険者努力支援制度など、重症化予防への取組を推進するためのインセンティブ制度を導入すること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、厚生労働大臣

能登半島地震の復興支援及び京都と北陸を結ぶ特急「サンダーバード」の拡充を求める意見書
(令和6年12月11日提出)

令和6年3月の北陸新幹線金沢・敦賀間の開通に伴い、従前、京都・北陸間の移動の主体を担ってきた特急「サンダーバード」の金沢・敦賀間が廃止され、京都・北陸間を移動する旅客は、敦賀駅にて新幹線・在来線の乗換えを行うこととなっている。
 北陸新幹線は、災害時における東海道新幹線の代替機能を担っていることから、豪雨等により東海道新幹線が不通となった際には、多くの方々が東京・大阪間を北陸回りで移動されている。
 一方で、週末、休祝日などに、新幹線・在来線の乗継駅である「金沢駅」や「敦賀駅」では、北陸回りで東京・大阪間を移動する旅客により、駅構内が混雑し、急きょ、西日本旅客鉄道がサンダーバードの臨時列車を運行する事態になるなど、混乱が生じている。
 近年頻発する異常気象等の状況に鑑みると、災害時のリダンダンシーの確保は喫緊の課題であり、北陸新幹線の大阪までの延伸を待つことなく、すぐにでも十分な機能を発揮できるよう備えておくことは、京都市民を含め、多くの人々が求めるところである。
 先般の金沢駅や敦賀駅での混乱の状況を踏まえると、従前運行されていた特急のように、乗り継ぐことなく移動できる手段についても、常時、一定程度確保しておくことが肝要である。
 また、西日本旅客鉄道においては、能登半島地震からの復興につなげるため、京都から和倉温泉を結ぶ直通便の運行の検討も始められたところである。
 よって国におかれては、西日本旅客鉄道への支援などを検討し、能登半島地震の復興支援及び京都と北陸を結ぶ災害時のリダンダンシーの確保に向けた鉄道網の充実を図られるよう強く求める。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、国土交通大臣、内閣府特命担当大臣(防災)

自動運転移動サービス等の社会実装に向けた環境整備を求める意見書
(令和6年12月11日提出)

高齢化社会が進んでいる現在、高齢者の運転による交通事故の発生件数は、警視庁によれば、2023年で4,819件、事故全体に占める高齢運転者の事故割合は15.4%となっており、多発している状況である。
 75歳以上・80歳以上の運転免許保有者数の推移は、2013年の数値(75歳以上   425万人、80歳以上169万人)と2023年の数値(75歳以上728万人、80歳以上304万人)と比較して、それぞれ約1.7倍、約1.8倍となっており、今後ますます高齢運転者が増えていくと想定される。
 そのような中、地方においては、加齢に伴う身体機能や認知機能の低下で運転に不安を感じている高齢運転者や、交通事故を心配する家族等周辺の方々からの相談等により運転免許の自主返納の取組が進められる中で、免許返納後の移動の足の確保が大きな課題となっている。
 政府は、高齢運転者による交通死亡事故の深刻な社会問題化を背景に、免許返納者への公共交通割引施策を新規で実施する地方公共団体への支援を検討しているが、公共交通の空白地域には課題が残っている。また、運輸部門での担い手不足により、公共交通機関における減便、路線の縮小や、物流での輸送能力の不足が顕在化してきている。
 京都市においても、自動運転の実用化に向けた技術が著しい進展を見せる中、自動運転技術を市政課題の解決にいかしていくため、京都のまちの特性に応じた自動運転技術の活用について、学識者等の意見も踏まえつつ、様々な角度から研究・検討を行ってきたところである。
 よって国におかれては、全ての地方公共団体が高齢運転者の免許返納を安心して推進することができ、また、運輸部門における担い手不足の解決にも寄与すると考えられる自動運転移動サービス等の社会実装に向けた環境整備に向け、十分な予算措置や自動運転車両の利活用への環境整備等、下記の事項について特段の取組を求める。

                    記

1 自動運転移動サービスの導入において、過疎地域を包含する地方公共団体に寄り添う形で、国の相談窓口の開設や、専門家の派遣等の伴走型の支援体制を整えること。
2 自動運転技術の開発があらゆるメーカーで進められている中で、自動運転システムが主体となって車の操縦・制御等を行うレベル4以上の車両の開発促進と共に、遠隔操作システムの導入を含めた行政における利活用の仕組みの検討など、自動運転車両の実用化に向けた環境整備を加速すること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、デジタル大臣、新しい地方経済・生活環境創生担当大臣

第一種低層住居専用地域における届出要件や運用の厳格化を求める決議
(令和6年12月11日提出)

京都市住宅宿泊事業の適正な運営を確保するための措置に関する条例(いわゆる民泊条例)において、第一種低層住居専用地域であっても家主居住型であれば住宅宿泊事業法が適用され、営業日数を180日まで増やすことができる。条例制定時の説明で、家主居住型に関する京都市の考え方は、「ホストとして生活を旅行者の方と共にして、そして京都ならではの生活を味わっていただく」施設と示されている。今一度、京都市の当初の考え方に基づいた家主居住型の施設運営がなされるよう、家主居住型の届出要件や運用の厳格化など、京都市の独自ルールを検討すること。
 
 以上、決議する。
 

京都市立学校の給食費の無償化を求める決議
(令和6年12月11日提出)

全ての子どもが平等に栄養バランスの取れた学校給食を食べることができ、経済的な困難から子どもの健康や学習機会が損なわれないようにすることを目的とし、全国的に教育・子育てに掛かる経済的な負担軽減策として、学校給食費を独自に無償化する自治体が急速に拡大しており、小中学校において全員を対象に無償化を実施している教育委員会は3割を超えている。若い世代に選ばれる未来の「千年都市」を目指していくうえで、京都市として学校給食費の無償化を進めることは極めて重要である。
 国においては、令和5年12月に閣議決定された「こども未来戦略」において学校給食無償化に向けた自治体の取組状況を調査し、具体的な方策を検討することが盛り込まれたものの、全国一律の予算措置がなされる状況には至っていない。
 子育て世代をはじめとした多くの市民の給食費無償化への要望がある中で、本市会においても学校給食の無償化について議論が行われてきた。
 京都市として独自財源確保にも努め、市長の今任期中に市立学校における給食費の無償化の道筋を付けることができるよう取り組むことを求める。

 以上、決議する。

行政委員の報酬の在り方に関する検証及び措置を求める決議
(令和6年12月11日提出)

京都市では、議員の報酬額及び市長、副市長の給料額について議論するため、23年ぶりに特別職報酬等審議会が開催されたところである。
 行政委員の報酬については、本市も含め約半数の政令指定都市が月額制を採用しているが、本市では、その報酬額は、市長等と同様に長年にわたって改定されていない。
 行政委員の報酬額及び支払方法は、常に、市長から独立した機関として重い責任と職務権限の執行を担い、任期中の活動の制限が課されている職責及び勤務実態を踏まえた適正なものでなければならない。
 よって、今日の社会情勢等も十分に踏まえつつ、行政委員の報酬の在り方について、外部の第三者の意見も聴取し、改めて検証したうえで、必要に応じ、所要の措置を講じるよう求める。

 以上、決議する。