令和5年定例会(5月開会市会)
最終更新日:令和5年5月29日
意見書・決議
小中学校給食無償化を求める意見書
(令和5年5月29日提出)
急速に進展する少子化により、こども・子育て施策への対応は先送りの許されない課題となっており、国においては、令和5年3月に取りまとめられた「こども・子育て政策の強化について(試案)」を踏まえ、こども未来戦略会議で更なる検討が進められており、令和5年6月の「経済財政運営と改革の基本方針2023(仮称)」までに将来的なこども予算倍増に向けた大枠を提示することとされている。
こうした中、子育て家庭が負担する教育費は、教材費や制服、体操服、学用品、修学旅行等の積立金、給食費など多岐にわたっており、とりわけ、学校給食実施状況等調査によると、全国平均で小学校が年間に約4万9,000円、中学校が約5万6,000円と、給食費が大きな負担となっている。
加えて、物価高騰などで家庭の経済的負担を軽減する必要性も高まっている。
よって国におかれては、こども・子育て政策の重要性を「経済財政運営と改革の基本方針2023(仮称)」に明記したうえで、自治体間の財政力の格差により、教育の根幹に関わる給食制度の格差が生じることのないよう、次元の異なる子育て政策の象徴的な政策として、小中学校の給食費無償化を実現するため、所要経費の財源を国の責任において全額確保し、自治体に交付することを強く要望する。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
(提出先)
衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、文部科学大臣、
内閣府特命担当大臣(こども政策)、内閣府特命担当大臣(少子化政策)、こども家庭庁長官
進行性の障害の状態を踏まえた障害支援区分認定及び支給決定に係る適切な運用を推進するための措置を求める意見書
(令和5年5月29日提出)
第210回臨時国会において、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律」が成立し、附帯決議として、「進行性の障害のある状態を踏まえた必要な支援が受けられるよう、障害支援区分の認定や障害福祉サービスの支給決定に係る適切な運用を推進し、周知すること」とされたところである。
筋萎縮性側索硬化症をはじめとする進行性の障害は、障害者総合支援法による障害支援区分認定や支給決定において、障害の進行に伴って、申請時と比べて必要となる支援が大きく変容するため、その状態像を踏まえて適宜、見直すことが求められる。
京都市においては、これまでから障害の多様な特性や心身の状態等を勘案し、必要に応じて障害支援区分や支給決定を見直す等、本人のニーズに合った支援の提供に努めているところであるが、一層の適切な運用について、関係する団体や事業者も含めて、共有化を図っていく必要がある。
よって国におかれては、附帯決議を踏まえ、地方自治体が、進行性の状態を踏まえた障害支援区分認定及び支給決定に係る適切な運用ができるよう、地方自治体職員等への研修教材の提供や研修内容の充実等、推進するための措置を講じるよう求める。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
(提出先)
衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、厚生労働大臣
特別支援学校・学級等の教員増員を求める意見書
(令和5年5月29日提出)
文部科学省の「学校基本調査」によると、特別支援教育を受ける児童生徒は年々増加している。京都市でも、全国同様、特別支援学校・特別支援学級及び通級指導教室に通う児童生徒が増加するだけでなく、特別支援教育の理解や医療の進歩等に伴い、地域の小学校や中学校に通う医療的ケアを必要とする児童生徒が特に増加している現状にある。
このような状況に適切に対処するためには、特別支援学校・学級等への専門的な知識や経験を持った教員等の増員が必要不可欠である。また、今日、共生社会の形成に向けて、「障害者の権利に関する条約」に基づき、子どもたちの多様性を尊重するインクルーシブ教育システムの構築が求められており、そのためにも我が国の特別支援教育の更なる拡充が必要である。
よって国におかれては、医療的ケアを含めた特別支援教育が必要な子どもの増加や、様々な障がいのある児童生徒に的確に対応した教育を実現するために、特別支援学校・学級等への教員等の適切な配置に向けて、下記の事項について、財政措置を含めた特段の措置を講じることを求める。
記
1 障がいの重度・重複・多様化や在籍児童生徒が増加している現状において、よりきめ細やかな指導・支援を一層推進するために、特別支援学校・特別支援学級教員及び通級指導教室担当教員の適切な配置への支援をすること。
2 障がいのある児童生徒に対し食事、排泄、教室移動の補助等学校における日常生活動作の介助を行ったり、発達障がいの児童生徒に対し学習活動上のサポート等を行ったりする特別支援教育支援員の適切な配置への支援をすること。
3 保護者や関係機関に対する学校の窓口として、また、学校内の関係者や福祉・医療等の関係機関との連絡調整の役割を担い、子どもたちのニーズに合わせた支援をサポートする特別支援教育コーディネーターの適切な配置への支援をすること。
4 医療的ケアが必要な子どもや、障がいのある子どもへの支援を的確に実施するために、看護師、ST(言語聴覚士)、OT(作業療法士)及びPT(理学療法士)等の専門家の必要に応じた適切な配置への支援をすること。
5 各学校でインクルーシブ教育を一体的に進めるために、担当の教員だけでなく学校長等に対する指導や研修等を実施し、校内全体での取組を促進するために、特別支援学校のセンター的機能の強化への支援をすること。
6 GIGAスクール構想により整備された1人1台の端末を、特別支援学校・特別支援学級及び通級指導教室において、授業はもとより、個々の特性や教育的ニーズに応じた支援ツールとして有効に活用するための特別支援教育デジタル支援員(仮称)の配置への支援をすること。
7 特別支援学校における教育の質の向上の観点から、特別支援学校教諭免許状の教員への取得支援の強化や、大学等における特別支援教育に関する科目の修得促進等、教員に対する特別支援学校教諭免許状の取得への支援をし、併せて、特別免許状についても強力に推進すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
(提出先)
衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣、
内閣府特命担当大臣(こども政策)、こども家庭庁長官
特定商取引における消費者保護の強化を求める意見書
(令和5年5月29日提出)
令和4年版消費者白書によると、消費生活相談は85.2万件で、特定商取引に関する法律(以下「特商法」という。)の対象分野の相談は全体の約55%という高い比率を占めている。とりわけ訪問販売・電話勧誘販売の割合は、認知症等の高齢者の消費者トラブルの中で48.6%と多数を占めている。このことから、超高齢社会において判断力の衰えた高齢者が悪質商法のターゲットにされていることがうかがわれ、早急な対応が必要となっている。
また、世代全体で見ると、インターネット通販に関する相談が27.4%と最多となっており、デジタル社会の進展、さらにはコロナ禍の影響もあって、インターネット通販におけるトラブルが増加していることが見て取れる。この傾向は、デジタル社会の更なる進展と共に、今後更に強まると思われる。
他方、マルチ取引(連鎖販売取引)については、毎年約9,000~1万件程度と、無視できない件数で推移しているが、その半数近くが20歳台となっている。今後は、令和4年4月の成年年齢引下げに伴い、18歳から19歳を狙ったマルチ取引被害の増加が予想される。
京都市における消費生活相談においても、特商法で規制の対象となっている分野の相談が約半数を占めるなど、消費者を保護する対策の強化が望まれるところである。
よって国におかれては、これらの被害に対処するため、下記のような特商法の改正を行うために消費者庁に検討会を設置し、早急に検討を進めることを強く要望する。
記
1 訪問販売や電話勧誘販売について、消費者があらかじめ拒絶の意思を表明した場合の勧誘についての規制を強化すること。
2 SNS等を通じた勧誘を伴うインターネット通販について、クーリング・オフや勧誘規制等、電話勧誘販売と同レベルの規制を導入するとともに、SNS事業者等に対し、消費者トラブル発生時における通信販売業者・勧誘者に関する情報の開示を義務付けること。
3 マルチ取引(連鎖販売取引)について、国による登録・確認等の開業規制を導入するとともに、被害の予防・救済のための規制を強化すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
(提出先)
衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、消費者庁長官
生物多様性の保全・ネイチャーポジティブの対策の強化を求める意見書
(令和5年5月29日提出)
地球上には無数の生態系が存在し、地球上の様々な環境を安定させる基盤となっており、我々の生活は生物多様性・自然資本なしに成り立たない。しかしながら、近年、人類史上これまでにない速度で生物多様性が失われているが、生物多様性の損失はイメージがしづらく、その危機意識が広く共有されているとはいえない。
このような状況を受けて、1993年に生物多様性条約が発効し、昨年12月には、同条約の第15回の締約国会議COP15が開催され、2030年までに生物多様性を回復軌道に乗せる(ネイチャーポジティブ)という新たな世界目標が採択された。今こそ、私たちの経済社会活動の基盤となっている生物多様性を持続可能なものにしていくために、2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」の実現が不可欠である。
我が国でも、この新目標に対応した生物多様性国家戦略を策定し、全省庁が協力して国際社会をリードする「ネイチャーポジティブ」の実現に向けた取組を進めようとしているが、その主体は地域であり地方自治体であると考える。
京都市においても、本年4月より京都府と府市協働できょうと生物多様性センターを設置し、生物多様性の保全に取り組んでいるところである。
よって国におかれては、2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」の実現に向け、下記のとおり地方自治体や地域のNPO等への支援の強化を強く求める。
記
1 気候変動の影響と生物多様性の損失は密接に関連しており、その両方に対して投資を進めていくことが重要である。脱炭素関連の予算が増額される一方で、生物多様性関連の予算についても必要な額を確保し、生物多様性に対する社会全体の認識を高めていくこと。
2 2030年までに陸と海の30%を保全する「30by30」の実現に向けて、国立公園・国定公園等の保護地域の拡張や、自然共生サイト(事業者などが保有している生物多様性保全に貢献する区域)の認定を推進する等、地域との連携の下、取組を加速化すること。
3 全ての子どもたちが自然に触れ合う機会を創出するため、環境教育や自然保護を推進する地域の人材育成を支援すること。また、NGO等とも連携し、学校や園庭の敷地内に設けられた生きものの暮らしを支える場所である「学校・園庭ビオトープ」の普及を促進すること。
4 廃棄物等を削減し、製品と資源の循環利用を促すサーキュラーエコノミーは、脱炭素や生物多様性と並ぶ環境政策の三本柱の一つであり、これらは互いに親和性が高いと認識している。そのため、地域におけるサーキュラーエコノミー分野におけるバイオマスの持続可能性、製品のライフサイクル全般での環境負荷低減等の取組を支援すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
(提出先)
衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、文部科学大臣、環境大臣
薬剤耐性菌感染症のまん延防止への取組体制の強化を求める意見書
(令和5年5月29日提出)
抗生物質などの現行の抗菌薬が効かなくなる薬剤耐性(AMR)を持つ細菌の発生により、医療機関において患者への適切な治療や手術時の感染予防などが困難となるサイレントパンデミック(薬剤耐性菌感染症)が世界的に発生している。
この薬剤耐性菌の影響について、英国の薬剤耐性(AMR)レビュー委員会により、2050年の全世界での死者数が年間1,000万人にも上ると予測されている中で、できる限り早い段階での薬剤耐性菌による感染症のまん延を防止する体制を整えることが必要である。
ここで、最も重要な新規抗菌薬について、開発の難易度が非常に高く、多額の開発費用を要するだけでなく、将来的な感染動向の予測もできないうえ、抗菌薬の特性から投与期間が短いことなど、開発投資の回収を見通せないことから、その開発から撤退する企業が相次いでいる。
このような背景の下、AMRに効果がある新規抗菌薬開発を支援する動きが各国で活発になっており、G7首脳会議や財務大臣・保健大臣合同会合で市場インセンティブが具体的に検討されている中で、我が国においても、抗菌薬確保支援事業により、その検討を開始した。
よって国におかれては、地域社会の危機管理と安全保障の視点から、薬剤耐性対策を国家戦略として、その感染予防・管理、抗微生物剤の適正使用、研究開発・創薬、国際協力等を着実に推進するなど、薬剤耐性菌感染症のまん延防止への取組体制の強化を求める。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
(提出先)
衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、厚生労働大臣
防衛費増額のための安易な増税を行わないことを求める意見書
(令和5年5月29日提出)
政府は、2023年度からの5年間で総額43兆円の防衛費を確保する方針を示している。5月23日には、衆議院において我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案が可決されたが、不足する財源は増税によって確保することが政府の方針となっている。
京都市においては、対前年同月比3%以上の物価上昇が続くなど、資源価格高騰の影響等による物価高騰が、市民生活や事業活動に大きな影響を与えており、防衛費の増額とその財源確保のための安易な増税による負担増は、地域経済に更なる打撃となりかねない。
よって国におかれては、防衛費増額のため国民生活に負担を掛けるような安易な増税を行わないよう強く求める。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。