平成30年定例会(5月市会)

最終更新日:平成30年5月31日

意見書・決議

下水道施設の改築に係る国庫補助の継続に関する意見書

(平成30年5月31日提出) 


京都市では,昭和5年度に合流式下水道を採用して下水道事業に着手し,事業の拡張期である昭和50年代から平成初期にかけて整備の最盛期を迎え,平安建都1200年に当たる平成6年度に市街化区域の下水道整備を概成した。これにより敷設された管路等は,順次,標準耐用年数を迎え,その改築・更新のための財源確保が大きな課題となっている。
 一方で,節水型社会の定着や人口減少等に伴う水需要の減少により,財政状況は厳しさを増している。このため,京都市では,今後10年間の取組をまとめた経営ビジョンを平成30年3月に策定し,厳しい経営環境においても着実に事業を推進するため,更なる経営効率化を図ることとしている。
 このような中,国の財政制度等審議会において,下水道事業に対する国の財政支援は「受益者負担の原則」と整合的なものに見直すことが必要であり,汚水施設の改築は原則として使用料で賄うべきとの趣旨の提言がなされた。これを受けた国の平成30年度予算では,国庫補助が未普及の解消と雨水対策に重点配分されたところである。
 これにより,今後,老朽化した合流式下水道を含む汚水に係る施設の改築への国庫補助が削減され,又は廃止されることとなれば,下水道使用料の増額改定や一般会計繰入金の増額により必要な財源を賄わざるを得ず,極めて深刻な状況であると受け止めている。
 下水道は高い公共性を有する社会資本であり,水質汚濁防止法にも国の責務が明示されている。また,その国庫補助は,地方財政法上,国が義務的に支出する負担金として整理されるとともに,下水道法において,施設の設置に加えて改築についても国庫補助の対象とされている。
 京都市の下水道は,市民生活を支える重要な都市基盤であるだけでなく,琵琶湖・淀川水系の中流域に位置し,下流域に位置する都市で暮らす1,100万人の水道水源の保全や,閉鎖性水域である大阪湾,瀬戸内海の水環境の保全を図るうえでも重要な役割を担っている。こうした下水道を支える国の責務は,新設時も改築時も変わるものではなく,今後も国の支援が不可欠である。
 よって国におかれては,下水道事業の継続的かつ計画的な遂行により,将来にわたり,市民の命を守り,快適な暮らしを支えるとともに,公共用水域の水質を保全することができるよう,下水道施設の改築に係る国庫補助を継続するよう,強く求める。

 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,財務大臣,国土交通大臣


ヘルプマーク及びヘルプカードの更なる普及推進を求める意見書
(平成30年5月31日提出)


義足や人工関節を使用している方,内部障がいや難病の方又は妊娠初期の方など外見からは容易に判断が難しいハンディのある方が,周囲に援助や配慮が必要であることを知らせるヘルプマーク及びそのマークを配したヘルプカードについては,平成24年に作成・配布を開始した東京都をはじめ,導入を検討・開始している自治体が増えている。特に昨年7月に,ヘルプマークが日本工業規格(JIS)として追加され,国としての統一的な規格となってからは,その流れが全国へと広がっている。
 このヘルプマーク及びヘルプカードについては,援助や配慮を必要とする方が所持・携帯していることはもちろんのこと,周囲でそのマークを見た人が理解していないと意味を持たないため,今後は,その意味を広く国民全体に周知し,思いやりのある行動を更に進めていくことが重要となる。
 京都市では,市バス・地下鉄においてステッカーなどにより啓発を進めるとともに,消防局がいわゆる災害時避難困難者を対象とした安心カードを配布しているが,保健福祉局が推進するヘルプマーク事業と融合するべく検討を重ね,京都市版ヘルプカードを導入する方針を明らかにしたところである。
 しかし,国民全体における認知度はいまだ低い状況にある。また,公共交通機関へのヘルプマークの導入など,課題も浮き彫りになってきているところである。
 よって国におかれては,心のバリアフリーであるヘルプマーク及びヘルプカードの更なる普及推進を図るため,下記の事項について取り組むことを強く求める。




1  「心のバリアフリー推進事業」など,自治体が行うヘルプマーク及びヘルプカードの普及や理解促進の取組に対しての財政的な支援を今後も充実させること。
2  関係省庁のホームページや公共広告の活用に加え,NPOや民間事業者の協力も得ながら,国民への更なる情報提供や普及,理解促進を図ること。
3  鉄道事業者など,自治体間をまたがる公共交通機関では,ヘルプマーク導入の連携が難しい状況にあるため,全国に広く普及するよう,国が主体となって推進すること。


  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 


(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣


日本年金機構の情報セキュリティー対策の見直しを求める意見書
(平成30年5月31日提出)


日本年金機構がデータの入力を委託した株式会社SAY企画の入力漏れと入力誤りにより本年2月支払時の源泉徴収額に誤りが発生した。しかも,当事業者は契約違反である再委託まで行っていた。日本年金機構は,平成27年5月にもサイバー攻撃を受けて個人情報の流出問題を起こしている。
 莫大な個人情報を管理する機関が二度にわたって情報に関わる問題を引き起したことは,年金制度や個人情報保護制度の信頼を損ねる重大な問題である。複雑化した年金制度を正確かつ公正に運営しなければならない日本年金機構は,信頼の回復のために情報セキュリティー対策を抜本的に見直すべきである。
 よって国におかれては,日本年金機構に対し下記の点を強く指導するとともに,その対応を十分に点検することを求める。




1  外部有識者の調査組織により,本事案の業務プロセスを徹底的に検証すること。
2  委託業者の作業の進捗管理の手法や納品物の検証・監査体制を確立すること。
3  日本年金機構が保有する氏名,生年月日,住所,電話番号等の個人情報の保護の在り方を再検討すること。


  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 


(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣


旧優生保護法による不妊手術の被害者救済を求める意見書
(平成30年5月31日提出)


昭和23年に施行された旧優生保護法は,知的障がいや精神疾患を理由に本人の同意がなくても不妊手術を認めていた。同法は平成8年に,障がい者差別に該当する条文を削除して母体保護法に改正された。
 厚生労働省によると,旧法の下で不妊手術を受けた障がい者らは約25,000人であり,このうち,本人の同意なしに不妊手術を施されたのは16,475人であると報告されている。
 京都府下では,旧法に基づき不妊手術をしていた個人として13名が判明し,京都府は,この5月22日から「府優生保護相談ダイヤル」を設け,相談に応じている。
 本人の意思に反して手術が施されたとすれば,人権上問題がある。また,同様の不妊手術を行っていたドイツやスウェーデンでは,当事者に対する補償等の措置が講じられている。旧法の下で不妊手術を受けた障がい者らの高齢化が進んでいることを考慮すると,我が国においても早急な救済措置を講じるべきである。
 よって国におかれては,以下の事項を速やかに実施することを求める。




1  国は,速やかに旧優生保護法に基づく不妊手術の実態調査を行うこと。
2  その際,都道府県の所有する「優生保護審査会」の資料などの保全を図るとともに,資料の保管状況の調査を行うこと。あわせて,個人の特定ができる資料について,当事者の心情に配慮しつつ,できる限り幅広い範囲で収集することができるよう努めること。
3  旧法の改正から20年以上が経過しており,関係者の高齢化が進んでいることから,的確な救済措置を一刻も早く講じること。


  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 


(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣


地域材の利用拡大推進を求める意見書
(平成30年5月31日提出)


戦後造成した人工林が本格的な利用期を迎える中,山林に広がる豊富な森林資源を循環利用し,林業の成長産業化を実現するためには,地域材の安定供給体制の構築に加え,新たな木材需要の創出を図ることが重要である。
 このため,「新たな森林管理システム」の下で意欲と能力のある経営体に森林の経営・管理を集積・集約化し,木材を低コストで安定的に供給するための条件整備,木材産業の競争力強化,木材利用拡大のための施設整備など,川上から川下までの取組を総合的に推進する必要がある。
 本市においては,みやこ杣木の出荷,木質ペレットの生産,環境性能重視型舗装材ブロック「ウィードロック」の活用などを進めるとともに,持続可能な森林整備を進めるため,「大規模集約型林業モデル事業」の試行実施も始められたところである。
 また,低層公共建築物の6割以上を占める民間部門が主導する公共建築物の木造化・木質化や,「地域内エコシステム」構築による木質バイオマス等のエネルギー利用などを進める必要がある。
 よって国におかれては,下記の項目を実現するよう強く求める。




1  森林のない都市における公共建築物の木造化・内装木質化への森林環境譲与税(仮称)の活用に当たって,地方公共団体における基金化や森林のある都市などの森林地域との連携による木材供給などの取組が円滑に進められるよう,情報提供や助言等を積極的に行うこと。
2  公共建築物の整備に関する関係省庁の補助事業において,木材利用を行う施設に係る補助率のかさ上げ,基準単価の見直し,優先採択等の取組を推進すること。
3  中高層,中大規模の木造公共建築物が都市部を含めて普及するよう,CLT(直交集成板) や木質耐火部材等の新たな木質部材に関する技術開発や人材育成に対する支援の拡充を図ること。
 病院や介護施設,保育園,学校等を経営する民間事業者が,施設整備に当たって,木材を積極的に利用するようになることが重要であり,このため,木材が持つ調湿機能やリラックス効果,衝撃吸収性などの特性を周知するとともに,それぞれの施設における効果的で望ましい木材利用の在り方について経営者,設計者,デザイナー,施行者等が参画して検討・検証を行う取組を進めること。
 木材製品を安定的・効率的に供給するために,木材加工流通施設を整備するとともに,木材利用を拡大するために,発電利用や熱利用で活用することができる木質バイオマス利用促進施設を整備し,木材産業の競争力強化を図ること。


  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 


(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,農林水産大臣,国土交通大臣,林野庁長官


地方財政の充実・強化を求める意見書
(平成30年5月31日提出)


地方自治体は,子育て支援策の充実と保育人材の確保,高齢化が進行する中での医療・介護などの社会保障への対応,地域交通の維持など,果たす役割が拡大する中,人口減少対策を含む地方版総合戦略の実行やマイナンバー制度への対応,大規模災害を想定した防災・減災事業の実施など,新たな政策課題に直面している。
 また,地方公務員をはじめ,公的サービスを担う人材が限られる中で,人材確保を進めるとともに,これに見合う地方財政の確立を目指す必要もある。
 必要な公共サービスを提供するため,財源面を担保することが地方財政計画の役割であることから,平成31年度の政府予算と地方財政の検討に当たっては,歳入・歳出を的確に見積もった中での確立が必要である。
 よって国におかれては,下記の事項の実現を求める。




1  社会保障,災害対策,環境対策,地域交通対策,人口減少対策など,増大する地方自治体の財政需要を的確に把握し,これに見合う地方一般財源総額の確保を図ること。
2  子ども・子育て支援,地域医療の確保,介護支援の充実,生活困窮者への自立支援,国民健康保険など,社会保障のニーズへの対応と人材を確保するための社会保障予算の確保及び地方財政措置を的確に行うこと。
3  住民の命と財産を守る防災・減災事業において,自治体庁舎をはじめ,公共施設の耐震化や緊急防災・減災事業の対象事業の拡充と十分な期間の確保を行うこと。また,人口増減での自治体の行財政運営に支障が生じないよう,地方交付税の算定の在り方を引き続き検討すること。
 地域間での財源の偏在性を是正するため,偏在性の小さい所得税・消費税を対象に国税から地方税への税源移譲を行うなど,抜本的な解決策の協議を進め,同時に各種税制の廃止や減税の検討の際は,自治体財政に与える影響を十分に検証したうえで,代替財源の確保をはじめ,財政運営に支障が生じることがないよう対応を図ること。
 地方交付税の原資の確保は,臨時財政対策債に過度に依存せず,対象の国税4税(所得税・法人税・酒税・消費税)への法定率の引上げを行うこと。


  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 


(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,財務大臣

京都市子ども医療費支給制度の拡充に関する決議
(平成30年5月31日提出)


子ども医療費支給制度は,子どもを持つ家庭の負担を少しでも軽減し,子どもが健やかに生まれ育つ環境づくりを進めるため,国による補助制度がない中,平成5年の創設以来,府市の首長と議会とが思いを一つにしながら取組を進めてきたことにより,これまで7回にわたって制度の拡充が図られてきた。
 一方,本市の財政状況は依然として厳しい状態が続いており,この間,未来の京都を見据えた成長戦略と徹底した財政構造改革を行いながら,必要な予算の確保に取り組んできた経過がある。
 このような状況を背景に,平成24年2月市会では,限られた財源を重点的に配分することで,現実的かつ計画的な制度の拡充に努めるとともに,全国一律の制度を創設するよう国に求めること等を決議したところである。
 一部には,いたずらに巨額の財政支出を伴う事業の拡大を求める声もあるが,未来の京都の子どもたちのため,真に持続可能な制度とすることが必要である。
 よって京都市においては,新たに西脇知事が首長となった京都府と,現場レベルとトップ同士の双方で綿密に協議を行い,対象年齢や自己負担額等あらゆる観点から検討することにより,平成31年度中に更なる拡充を実現し,子育て世帯の医療費の負担の軽減を図ること。また,国に対しては,改めて,子ども医療費支給制度について,国の責任における全国一律の制度の創設を求めること。


  以上,決議する。