平成30年定例会(11月市会)

最終更新日:平成30年12月7日

意見書・決議

認知症施策の推進を求める意見書

(平成30年12月7日提出) 


世界に類例を見ないスピードで高齢化が進む我が国において,認知症の人は年々増え続けている。2015年の推計では約525万人であったが,2025年には推計で700万人を突破すると見込まれている。
 認知症は,今や誰でも発症する可能性があり,誰もが介護者となり得るため,認知症施策の推進は極めて重要である。
 また,認知症施策の推進に当たっては,認知症と診断されても,尊厳をもって生きることができる社会の実現を目指し,当事者の意思を大切にし,家族等も寄り添っていく姿勢で臨むことが重要であるとともに,「若年性認知症」など,これまで十分に取り組まれてこなかった課題にも踏み込んでいく必要がある。さらに,認知症施策に関する課題は,今や医療・介護だけでなく,地域づくりから生活支援,教育に至るまで多岐にわたっている。
 本市においては,認知症初期集中支援チームの取組や認知症サポーターの育成など,認知症に気付き,適切な機関につなぎ,地域社会で支える施策を推進してきたが,なお一層の施策の充実が求められている。
 よって国におかれては,認知症施策の更なる充実・加速化を目指し,認知症施策推進基本法の制定も視野に入れ,下記の取組を進めることを強く求める。



1  国や自治体をはじめ,企業や地域が力を合わせ,認知症の人やその家族を支える社会を構築するため,認知症施策を総合的かつ計画的に推進する基本法を制定すること。
2  認知症診断直後は相談できる人がいないといった人が多く存在しており,診断直後の空白期間が生じている。この空白期間については,本人が必要とする支援や情報につながることができるよう,認知症サポーターの活用やガイドブックの作成による支援体制の構築を図ること。
3  若年性認知症の支援については,若年性認知症支援コーディネーターの効果的・効率的な活動を推進するため,コーディネーターに対する研修などの支援体制を整備するとともに,本人の状態に応じた就労の継続や社会参加ができる環境の整備を進めること。
 認知症の全国規模の疫学調査と疾患登録に基づくビッグデータの活用を通して,有効な予防法や行動・心理症状に対する適切な対応などの認知症施策の推進に取り組むこと。また,次世代の認知症治療薬の開発や早期実用化,最先端の技術を活用した早期診断法の研究開発を進めるとともに,認知症の人の心身の特性に応じたリハビリや介護方法に関する研究を進めること。


 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣


無戸籍問題の解消を求める意見書
(平成30年12月7日提出)


無戸籍問題とは,子の出生の届出をしなければならない者が,何らかの事情で出生届を出さないために,戸籍がないまま暮らさざるを得ない子どもや成人がいるという問題である。
 無戸籍者は,自らに何ら落ち度がないにもかかわらず,特例措置などで救済されるケースを除き,住民登録や選挙権の行使,運転免許やパスポートの取得,銀行口座の開設等ができないだけでなく,進学,就職,結婚といった場面でも不利益を被っており,無戸籍問題は基本的人権に関わる深刻な問題である。
 また,無戸籍者は,同じ我が国の国民であるにもかかわらず,種々の生活上の不利益を被るだけでなく,自らが無戸籍であること自体で心の平穏を害されており,一刻も早い救済が必要である。
 よって国におかれては,人権保護の観点からも,一刻も早い無戸籍問題の解消に努めるとともに,無戸籍者が生活上の不利益を被ることのないよう,下記の事項に早急に取り組むことを強く求める。




1  強制認知調停の申立てについては,その受付等の際に家庭裁判所の窓口で不適切な指導がなされることのないよう是正するとともに,これに関する法務省や裁判所のホームページの記載を改め,その申立書の書式の改定等を引き続き進めること。
2  関係府省庁によるこれまでの類似の通知等により,無戸籍状態にあったとしても,一定の要件の下で各種行政サービス等を受けることができるとされているが,改めて,窓口担当者を含め,関係機関に対し無戸籍者問題の理解を促し,適切な対応を行うよう周知徹底すること。
3  嫡出否認の手続に関する提訴権者を拡大し,出訴期間を延長するよう見直すほか,民法第772条第1項の嫡出推定規定の例外規定を設けるなど,新たな無戸籍者を生み出さないための民法改正を検討すること。


  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 


(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,法務大臣


義援金差押禁止法の恒久化を求める意見書
(平成30年12月7日提出)


「義援金差押禁止法」とは,被災者の生活再建を支援するため,義援金の交付を受ける権利を譲渡したり,担保に供したり,差し押さえたりすることや義援金として交付された金銭を差し押さえることを禁止した法律であり,2011年の東日本大震災の際,被災者が住宅ローンなどの債務や借金の返済を抱えていても,義援金が震災の被災者の手元に残るようにするため,議員立法で成立させたものである。
 また,2016年の熊本地震や,2018年の大阪北部地震,西日本豪雨災害の際にも同様に法的枠組みを作り,国会会期中に速やかに成立させており,京都市においても,2014年,2018年の豪雨災害で,人的被害,住家被害が発生し,被災された市民に対して義援金が交付されている。
 しかし,これまでの法律は,台風や地震などの個々の災害が発生する度に立法化されてきた経緯があり,近年の我が国の自然災害の頻度を考えると,災害発生時,常に対応可能な恒久法としての制定が求められているところである。 
 よって国におかれては,近年,災害が頻発化する中,災害が発生する度に立法措置を講じるのではなく,国会が閉会している間にも対応が可能となるよう,「義援金差押禁止法」の恒久化に向けた議論を進めることを強く求める。

  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 


(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,法務大臣


Society5.0時代に向けた学校教育環境の整備を求める意見書
(平成30年12月7日提出)


高度情報社会(Society4.0)を経て,新たな社会を目指す指標として,「Society5.0」が提唱されている。Society5.0の時代は,決して,AIやロボットに支配され,監視されるような未来ではなく,これまで以上に人間が中心の社会であり,読解力や考える力,対話し協働する力など,人間としての強みをいかして一人一人の多様な関心や能力を引き出すことが求められている。
 そのためには,これまでの日本の教育の良さをいかしつつ,AI,IoT等の革新的技術をはじめとするICT等の活用による新たな教育の展開が不可欠である。
 京都市では,これまでから,小中一貫学習プログラム等の実施により,児童生徒が一人一人の学習内容の達成状況を客観的に確認することを通して,個別の課題を解消し,確かな学力の向上につながるよう取り組み,学習のつまずきの発見や生徒一人一人に合った学習プランの構築にICTを活用した委託実証研究も実施中である。
 そのような中,一人一人の興味・関心や習熟度に対応した公正に個別最適化された学びを可能にするだけでなく,データや進捗の管理に伴う教員の負担軽減にもつながる「EdTech」イノベーションの波が世界各国の教育現場に及び,「学びの革命」が進んでいる。
 EdTechを学校教育現場で活用するためには,前提として,ICT環境の整備が不可欠であり,我が国の学校教育現場におけるICT環境の実態は,整備状況(通信容量・パソコンのスペック・台数等)に自治体間の格差も大きく,このままでは,児童生徒全員が十分にEdTechを活用することが困難な状況にある。
 よって国におかれては,下記の事項を実現するよう強く要望する。




1  2018年度から2022年度まで行うことになっている地方財政措置について,ICT環境の整備に向けられるよう自治体に対して周知徹底するとともに,適切な財源措置を講じ,より使い勝手の良い制度にするなど,一層の拡充を行うこと。
2  ICTを活用した教育を推進するために,教員や児童生徒のICTの利活用を援助する役割を担う「ICT支援員」の配置の促進に向け,所要額が確保できるよう適切な財源措置を講じるとともに,教員向けの研修等の充実を図ること。
3  「公正に個別最適化された学び」を広く実現するため,学校現場と企業等の協働により,学校教育において効果的に活用できる「未来型教育テクノロジー」の開発・実証を行い,学校教育の質の向上を図ること。


  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 


(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,文部科学大臣,経済産業大臣