平成27年定例会(5月開会市会)

最終更新日:平成27年5月28日

意見書・決議

地方財政の充実・強化を求める意見書

(平成27年5月28日提出)

地方自治体は,子育て支援,医療,介護などの社会保障,環境対策,地域交通の維持など,果たすべき役割が拡大する中で,人口減少対策を含む地方版総合戦略の策定など,新たな政策課題に直面している。一方,職員数の削減により,多様な公共サービスを担う人材育成・確保も急務となっており,これに見合う地方財政を確立する必要がある。
 現在,国の経済財政諮問会議においては,2020年のプライマリーバランスの黒字化を図るため,歳出削減に向けた議論が進められている。
 本来,必要な公共サービスを提供するため,財源面でサポートするのが地方財政の役割であり,現に京都市の平成27年度当初予算における地方交付税は,臨時財政対策債を含めると914億円であり,7,504億円の一般会計予算の約12パーセントを占める貴重な財源となっている。国の財政再建を目的に,地方財政が削減され,必要な公共サービスも削減されれば,国民生活と地域経済に悪影響を及ぼしかねない。
 このため,平成28年度の国の予算,地方財政の検討に当たっては,歳入・歳出,地方自治体の努力を的確に見積り,必要な公共サービスを提供することができるよう,国の予算において地方財政が確立されることが必要である。
 よって国におかれては,平成28年度予算編成に当たり,下記の事項に十分留意して取り組まれるよう,強く要望する。


1 社会保障,環境対策,地域交通対策,人口減対策など,増大する地方自治体の財政需要を的確に把握し,これに見合う地方一般財源総額の確保を図ること。特に,今後,策定される財政再建計画において,地方一般財源総額の充実・強化を図ること。
2 子ども・子育て支援新制度,地域包括ケアシステム,生活困窮者自立支援,介護保険制度や国民健康保険制度の見直しなど,急増する社会保障ニーズへの対応と,人材を育成・確保するための社会保障予算の確保と地方財政措置を的確に行うこと。
3 法人実効税率の見直し,自動車取得税の廃止など,各種税制の廃止,減税を検討する際には,自治体財政に与える影響を十分検証したうえで行うこと。
4 地方財政計画に計上されている「歳出特別枠」及び「まち・ひと・しごと創生事業費」については,現行水準を確保しつつ,臨時・一時的な財源から恒久的財源へと転換を図り,社会保障,環境対策,地域交通対策など,経常的に必要な経費に振り替えること。また,恒常化している臨時財政対策債については,制度の抜本的な見直しを行うこと。


 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
  衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,財務大臣,厚生労働大臣

農林水産業における輸出促進に向けた施策の拡充を求める意見書
(平成27年5月28日提出)

少子高齢化社会の到来により,農林水産物の国内マーケットは縮小する見込みにある一方,海外には,世界的な日本食ブームの広がりやアジア諸国等における経済発展に伴う富裕層の増加,人口増加といった今後伸びていくと考えられる有望なマーケットが存在する。
 農林水産物・食品の輸出促進は,新たな販路拡大や所得の向上,国内価格下落に対するリスクの軽減,国内ブランド価値の向上や経営に対する意識改革などが図られ,国民全体にとっては,生産量増加による食料自給率の向上,輸出入バランスの改善,日本食文化の海外への普及など,幅広いメリットが考えられる。

特に京都市において,日本で最初の歴史と伝統を誇る中央卸売市場の海外市場を視野に入れたリニューアルが決定している。そうした中,日本食が世界に広がることは,その中心である「京料理」やそれを食材として支える「京野菜」への関心もますます高まり,京都観光にも大きく寄与するものと考えられる。
 政府は,昨年6月に閣議決定された「日本再興戦略」において,2020年における輸出額の目標を1兆円と定めている。近年の輸出は,円高や原発事故の影響などによって,落ち込みが生じていたが,平成26年(2014年)の輸出額は,過去最高の6,117億円となった。今後,官民一体となった一層の促進策によって,国産農林水産物の輸出拡大につなげていくことが求められる。
 よって国におかれては,下記の事項を講じられるよう強く要望する。



1 原発事故に伴う輸入規制を行っている国々に対し,国境措置を科学的根拠に基づく判断とするよう多国間協議の場で提議・要請するなど,撤廃に向けた働き掛けを行うこと。
2 国や日本貿易振興機構(JETRO)等が一体となって支援し,ブランドの確立や産地間の連携を図るとともに,諸外国の輸入規制情報の提供や関連する相談窓口の設置,諸外国から要求される証明書の国による一元的な発行など,国内輸出事業者への支援策を行うこと。
3 輸出先となる国や事業者から求められるHACCP,ハラール,GLOBAL G.A.P.等の認証取得を促進するとともに,国際的な取引にも通用する,HACCPをベースとした食品安全管理に関する規格・認証の仕組みや,G.A.P.に関する規格・認証の仕組みの構築を推進すること。
4 国内・海外商談会の開催や輸出に必要な情報の提供,輸出相談窓口体制の充実,トップセールスによる支援など,日本食文化・産業の一体的な海外展開を一層推進すること。


  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,農林水産大臣,経済産業大臣,内閣特命担当大臣(消費者及び食品安全)


認知症への取組の充実強化に関する意見書
(平成27年5月28日提出)

今日,認知症は世界規模で取り組むべき課題であり,本年開催されたWHO認知症閣僚級会議では,各国が認知症対策への政策的優先度をより高位に位置付けるべきとの考えが確認された
 世界最速で高齢化が進む我が国では,団塊の世代が75歳以上となる2025年には,認知症高齢者数は約700万人にも達すると推計されている。
 京都市においても,2015年で約62,000人,2025年では約87,000人になると推計されており,認知症対策は喫緊の課題である。
 政府は本年1月,認知症対策を国家的課題として位置付け,認知症施策推進総合戦略,いわゆる新オレンジプランを策定し,認知症高齢者が,住み慣れた地域のよい環境で,自分らしく暮らし続けることができる社会,「認知症高齢者等にやさしい地域づくり」を目指すこととなった
 しかし,今後の認知症高齢者の増加等を考えれば,認知症への理解の一層の促進,当事者や家族の生活を支える体制の整備,予防・治療法の確立など,総合的な取組が求められるところである
 よって国におかれては,下記の事項について,適切な措置を講じられるよう強く要望する



1 認知症の方々の尊厳,意思,プライバシー等が尊重される社会の構築を目指し,学校教育などにより認知症への理解を一層促進するとともに,認知症の予防・治療法の確立,ケアやサービスなど,認知症に対する総合的な施策について,具体的な計画を策定することを定めた「認知症の人と家族を支えるための基本法(仮称)」を早期に制定すること。
2 認知症に見られる不安,抑うつ,妄想など,心理行動症状の発症・悪化を防ぐため,訪問型の医療や看護サービスなどの普及促進を,地域包括ケアシステムの中に適切に組み入れること。
3 自治体などの取組について,家族介護,老老介護,独居認知症高齢者など,より配慮を要する方々へのサービスの好事例(サロン設置,買物弱者への支援等)を広く周知すること。
4 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の効果を見極めるため,当事者や介護者の視点を入れた点検・評価を適切に行い,その結果を施策に反映させること。

  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


 (提出先)
  衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣

地方単独事業に係る国保の減額調整措置の見直しを求める意見書
(平成27年5月28日提出)

今国会において「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律」が成立する見込みであり,国保の財政基盤の強化や都道府県による財政運営に向けて具体的な改革作業が始まるところである
 国保改革に当たっては,国と地方の協議により,地方単独事業に係る国庫負担調整措置の見直しなどが今後の検討課題とされたところである。  
 一方,地方創生の観点から人口減少問題に真正面から取り組むことが求められており,全国の自治体では単独事業として乳幼児医療費の助成制度の拡充などに取り組む事例が多く見られる。京都市においても,府市協調で子ども医療費支給制度の拡充に努めているところである。  
 さらに,平成26年度補正で用意された国の交付金を活用し,対象年齢の引上げなどの事業内容の拡充に取り組む自治体も報告されているところである。
 こうした状況の中で,全ての自治体で取り組まれている乳幼児医療の助成制度など,単独の医療費助成制度に対して,国の減額調整措置の見直しが求められるところである。
 よって国におかれては,下記の事項について講じられるよう強く要望する。



1 人口減少問題に取り組む,いわゆる地方創生作業が進む中,地方単独事業による子ども等に係る医療費助成と国保の国庫負担の減額調整措置の在り方について,早急に検討の場を設け,結論を出すこと。
2 検討に当たっては,少子高齢化が進行する中,子育て支援,地方創生,地域包括ケア等の幅広い観点から実効性ある施策を進めることが必要であり,そうした観点から子ども等に係る医療の支援策を総合的に検討すること。

  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
  衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣