平成26年第2回定例会(5月市会)

最終更新日:平成26年5月30日

意見書・決議

「手話言語法」制定を求める意見書
(平成26年5月30日提出)

手話とは,音声ではなく手や指,体などの動きや顔の表情を使う独自の語彙や文法体系を持つ言語である。手話を使うろう者にとって,聞こえる人たちの音声言語と同様に,大切な情報獲得とコミュニケーションの手段として大切に守られてきた。京都では1878年に日本初のろう学校「京都盲唖院」を開設し,手話教育が行われてきた。  
 しかしながら,アメリカから「口話法」が伝えられ,日本でもその普及に力を入れたため,昭和の初め頃から,ろう学校での手話の使用は禁止されることとなり,そのため社会では手話を使うことで差別されてしまうという悲しい歴史があった。  
 しかし,2006(平成18)年12月に国連で採択された障害者権利条約において,「手話は言語」であることが明記されることとなった。
 その結果,日本政府は,障害者権利条約の批准に向けて国内法の整備を進め,2011(平成23)年8月に成立した「改正障害者基本法」では「全て障害者は,可能な限り,言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保される」と定められることとなった。  
 また,同法第22条では国・地方公共団体に対して情報保障施策を義務付けており,その環境整備に向けた法整備を国として実現することが必要であると考える。  
 よって国におかれては,下記事項を講じるよう強く求める。


手話が音声言語と対等な言語であることを広く国民に広めること。
きこえない子どもが手話を身に付け,手話で学べ,自由に手話が使えるようにすること。
そのために手話を言語として普及させるとともに,研究することのできる環境整備を目的とした「手話言語法(仮称)」を制定すること。


 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
  衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,文部科学大臣,厚生労働大臣

鳥獣の捕獲促進体制強化の速やかな実施を求める意見書
(平成26年5月30日提出)

サル,シカ,イノシシ等による自然生態系への影響及び農林水産業被害が深刻化する中,狩猟者の減少,高齢化等により,鳥獣捕獲の担い手が減少している。
 鳥獣の捕獲等の一層の促進と捕獲等の担い手の育成が必要であるとの観点から,政府は,今国会において「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」を改正し,法律の目的に鳥獣の「保護」だけでなく「管理」を規定するとともに,「保護」と「管理」の施策体系の整理,指定管理鳥獣に定められた鳥獣の集中的かつ広域的な管理を図る事業の創設,一定の条件下での夜間銃猟を可能にする規制緩和,認定鳥獣捕獲等事業者制度の創設など,制度の抜本的な改正を行った。これにより,今後,鳥獣の捕獲体制が強化されることになる。
 よって国におかれては,施行に当たって,下記事項について,十分に留意して実施されるよう強く求める。



都道府県を越えて生息する鳥獣の保護・管理については,国が主導して,より効果的な広域対応を行うための仕組みを検討すること。
市町村への鳥獣被害防止総合対策交付金の予算を拡充させるほか,新設される指定管理鳥獣捕獲等事業が活用されるよう,十分な財政支援を行うこと。
捕獲された鳥獣を可能な限り食肉等として活用するため,衛生管理の徹底による安全性の確保や販売経路の確立,消費拡大への支援などを推進すること。


  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣,農林水産大臣,環境大臣


若者雇用対策の総合的かつ体系的な推進を求める意見書
(平成26年5月30日提出)

若者を取り巻く雇用環境は,非正規労働者の増加の中で,中小事業者における離職率の高さや,若年層を恒常的・大量に雇用し,低水準・過酷な労働条件で労働を強いる「使い捨て」問題や,180万人と言われるフリーターや60万人のニートの問題など,雇用現場における厳しい状況がある。
 若者が働きながら安心して家庭を持つことができるようにすることは,少子化に歯止めを掛けるためにも極めて重要であり,政府においても,わかものハローワークや新卒応援ハローワークなどにおける支援や,「若者応援企業宣言」事業,労働条件相談ポータルサイトの設置,地域若者サポートステーションにおけるニート対策などに取り組まれているところである。
 しかし,それぞれの事業の取組が異なっており,関係機関において必ずしも有機的な連携が取られている状況ではない。
 安倍政権における経済対策により,経済の好循環が始まる中,今春卒業した大学生の就職率は94.4パーセントとなり,高校生の就職率も96.6パーセントとバブル期並みの水準となる等好転し,賃金上昇に取り組む企業も出てきている。
 よって国におかれては,若者雇用対策を総合的かつ体系的に推進するための仕組みを構築し,この好循環を更に確かなものとするため,下記の対策を講じるよう要望する。



若者雇用に係る総合的,体系的な対策を進めるため,若者雇用対策新法の制定を視野に入れ,若者本人を支える家庭,学校,地域,国・地方の行政の責務を明確にし,緊密に連携して支援を行える枠組みを整備すること。
「若者応援企業宣言」事業について,中小企業等の認定制度として拡充し,認定企業の支援措置を新設すること。また,企業が若者を募集する際の情報開示を促す仕組みを検討すること。
大学生等の採用活動の後ろ倒しに伴い,新卒応援ハローワークにおける支援措置を強化すること。
若者が主体的に職業選択・キャリア形成ができるよう,学生段階からのキャリア教育の充実強化を図ること。
ニート等の若者の孤立化を防ぎ,自立に向けた充実した支援を行うことができるよう安定的財源を確保し,地域若者サポートステーションの機能の強化を図ること。

  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


 (提出先)
  衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,文部科学大臣,厚生労働大臣

子ども・子育て支援新制度における幼児教育・保育等の「質の向上」に関する意見書
(平成26年5月30日提出)

平成27年度から本格施行予定の「子ども・子育て支援新制度」(以下「新制度」という。)は,質の高い幼児期の学校教育・保育の総合的な提供や保育の量的拡大,幼児教育・保育の質の向上及び地域の子ども・子育て支援の充実を図るものである。
 とりわけ,喫緊の課題である待機児童の解消に向けての保育の「量的拡大」と職員の処遇や配置基準等の改善を図る「質の向上」については,車の両輪として一体的に取り組んでいくこととなっている。  
 近年,保育所においては,入所児童の受入れ拡大のための保育士の確保が課題となっており,保育士の確保及び定着に寄与する「質の向上」に多くの関係団体が大きな期待を寄せているところである。  
 しかしながら,平成29年度には年間約1兆1,000億円の財源が必要と言われる新制度については,消費税増収分から充てられる約7,000億円以外の約4,000億円の財源確保の目途が立たないため,国は,職員の処遇や配置基準といった「質の向上」に係る関連予算を一部先送りすることを検討されている。
 よって国におかれては,子どもたちの成長の場としてふさわしい保育環境の確保,新制度への円滑な移行を図るため,新制度に必要となる約1兆1,000億円の財源を確保するよう強く求める。


(提出先)
  衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,文部科学大臣,厚生労働大臣,内閣府特命担当大臣(少子化対策)


中小企業の事業環境の改善を求める意見書
(平成26年5月30日提出)

今年の春闘の大手企業からの回答では,13年ぶりに全体の賃上げ率が2パーセント台となったが,景気全体を支え,地域経済を支える中小企業や非正規社員を取り巻く事業環境は依然厳しいと言える。さらに,消費税8パーセント引上げに伴う駆け込み需要の反動減も今後予想され,対応策を講じなければならない。
 国際通貨基金(IMF)は3月,日本経済の成長に賃金上昇が不可欠だとする研究報告書を発表し,中小企業や非正規労働者などの賃上げを「アベノミクス」の課題として挙げている。実質的には,企業の収益力次第で賃上げの可否が左右されてしまうため,政府が掲げる「経済の好循環」を実効的なものにするためには,中小企業の収益力向上につながる事業環境の改善が求められる。
 また,中小企業のうち87パーセントを占める小規模事業者が全国で334万もあり,有能な技術力がありながら人材確保や資金繰りに苦しんでいる。
 京都においては,伝統産業の慢性的な需要低迷をはじめ,原材料高によるものづくり企業の先行き不透明感もあり,事業の拡張に踏み切れない小規模事業者の潜在力を発揮することができるよう充実した成長・振興策が不可欠である。
 本年は,経済成長を持続的なものにするため,成長の原動力である中小企業が消費税増税や原材料・燃料高などの厳しい環境を乗り切れるよう,切れ目ない経済対策が必要である。
 よって国におかれては,地方の中小企業が好景気を実感するため,下記の対策を講じるよう強く求める。


中小企業の実態を踏まえ,経営基盤の強化策及び資金繰りの安定化策を図ることにより,   収益性・生産性の向上につなげ,賃上げに結びつくよう努めること。
「小規模企業振興基本法案」の趣旨を軸に,国・地方公共団体・事業者の各責務の下で, 円滑な連携と実効性が高まる制度設計を図ること。
中小企業・小規模事業者においても重要な非正規労働者の正規雇用化を促すよう,キャリアアップ助成金などの正規雇用化策を更に周知するなど,従業員の処遇改善を図ること。


  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 (提出先)
   衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣,経済産業大臣, 内閣府特命担当大臣(経済財政政策), 中小企業庁長官

地域包括ケアシステム構築のため地域の実情に応じた支援を求める意見書
(平成26年5月30日提出)

現在,本年度の診療報酬改定や国会における「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案」の議論により,改めて地域包括ケアシステムの構築がクローズアップされているところである。
 全国の自治体では,平成27年度からの第6期介護保険事業計画の策定に向けて,いわゆる2025年の姿を展望しながら,増加する保険料などに苦慮しながら取組を行っているところである。  
 よって国におかれては,社会保障・税一体改革の円滑な進行のため,本年4月から引き上げられた消費税財源を的確に活用しながら,全国の自治体のそれぞれの実情に応じて,国の積極的な支援を図るよう,下記のとおり要望する。



医療・介護・福祉の良質な人材を確保するため,国家戦略として抜本的な対策を講じること。特に介護人材については,2025年に向けて更に100万人のマンパワーが必要とされており,次期介護報酬改定に向けて的確な対応を行うこと。
今回の診療報酬改定について,在宅訪問診療に係る改定が行われたが,市区町村の現場において,集合住宅などへの訪問診療が大きな影響を受けることも想定されるため,改定の影響について実態調査を行い,適切な対応を行うこと。
社会保障・税一体改革の趣旨に沿い,平成26年度に引き続き,消費税を財源とする財政支援制度を拡充すること。また,本年度の基金については,趣旨に沿い,適切な配分に留意すること。
いわゆる特養待機者52万人という数字が発表された。京都市においても,待機者は5,736人に上るものであり,特別養護老人ホームをはじめとする介護基盤整備の推進を図るための支援を強化すること。 
自立した生活を送ることが困難な低所得・低資産の要介護高齢者の地域における受け皿づくりについて,市区町村への支援を強化すること。

  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 (提出先)
   衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,財務大臣,厚生労働大臣,

中国・韓国で日本企業が安心して活動することができるための対処を求める意見書
(平成26年5月30日提出)

本年4月19日,日中戦争前の船舶の貸出しの賃料を巡っての訴訟で,日本企業の所有する貨物船を中国の上海海事法院が差し押さえる事態が発生した。その後,当該企業は約40億円を供託金として支払ったと報じられている。  
 韓国でも,昨年11月に,太平洋戦争中に名古屋市内の軍需工場などで強制労働をさせたとして,日本企業に賠償の支払いを命じる判決が出されるなど,戦後補償訴訟で日本企業に賠償を命じる判決が相次いでいる。  
 我が国としては,中国との間において昭和47年の日中共同声明,韓国との間においては昭和40年の日韓請求権協定において,それぞれ請求権の問題は解決しているとの立場であり,両国政府もこれまでそのことを認めていた。にもかかわらず,近年になって,中国や韓国においては,民間や個人の請求権は消滅していないとして,日本企業に賠償を求める動きが活発化している。
 現地の裁判所で不当に日本企業に賠償が命じられ,現地に進出する日本企業が現地に有する財産を差し押さえられるようなことが続発すれば,安心して企業活動が行えない。
 よって国におかれては,中国・韓国両政府に対して,一切の戦後補償が終結していることを強く主張するとともに,進出している日本企業が安心して経済活動を行えるよう保護し,万が一問題が発生した際には,断固とした態度で臨むことを強く要望する。


  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


 (提出先)
  衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,外務大臣,