令和7年定例会(11月市会)

最終更新日:令和7年12月11日

意見書・決議

危機的状況にある自治体病院の存続に向けた財政支援を求める意見書
(令和7年12月11日提出)

自治体病院は、地域の民間医療機関では採算性の観点から担い難い救急、小児、周産期等の高度医療の実施、さらには感染症や災害対応など、地域の医療提供体制の維持に不可欠な役割を果たしている。
 こうした自治体病院の責務を果たすため、多くの自治体は、一般会計から多額の繰出金を負担しており、自治体病院は、現在の収支構造では行政の財政負担がなければ持続的な運営はできない。
 しかし、公益社団法人全国自治体病院協議会による令和7年8月の調査結果にもあるとおり、近年の人件費や物価の高騰により、自治体病院の運営に要する費用が大きく膨らむ一方で、現行の診療報酬はこうした実情に十分対応できておらず、令和6年度決算では、自治体病院の約9割が自治体からの繰出金を入れてもなお経常収支が赤字となるなど、自治体の財政力を超えて経営環境は大きく悪化している。
 このままの状況が続けば、地域住民の生命や健康、さらには社会の安全・安心を支える公的基盤としての自治体病院の役割を果たしていくことはできず、今まさに周辺市町村も含めた地域の医療提供体制は、崩壊の危機に直面している。
 そのような中、京都市立病院においても2年連続で10億円を超える決算赤字を抱えるとともに、令和7年度も運転資金の枯渇による資金繰りが極めて厳しい状況のため、京都市から20億円もの資金繰り支援を行っている状況である。
 よって国におかれては、地域の医療体制を守る自治体病院の経営改善を図ることは、国の責任において取り組むべき重要な課題と捉え、自治体財政を支援するよう強く要望する。

  以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、 総務大臣、財務大臣、厚生労働大臣、 地域未来戦略担当大臣

地方税財源の充実確保を求める意見書
(令和7年12月11日提出)

地方公共団体は、人口減少や少子高齢化の急速な進行により、地域の担い手や技術職等の専門人材が不足する中、行政サービスを安定的に提供するとともに、地域の実情に応じて創意工夫を凝らしながら、活力ある持続可能な地域社会を実現する必要がある。
 地方財政は、税収が増加する一方、人件費の上昇や物価高等による歳出増の要因が拡大するなど、これまでのように人件費や投資的経費等の削減により社会保障関係費の増大を吸収するという構造から大きく変化している。
 さらに、金利の上昇や米国の関税措置等もあり、これまで以上に、中長期の見通しが立ちにくい状況が続いている。
 このような状況の変化に的確に対応し、今後も地方公共団体が持続可能な観光地域づくり、少子化対策やDX・GXの推進、地域経済の活性化、防災・減災対策の強化や老朽化するインフラ整備等の取組を着実に推進することができるよう、地方税財源の充実確保を図る必要がある。
 よって国におかれては、地方公共団体が増大する役割を果たし、住民に十分な行政サービスを提供することができるよう、下記の事項について特段の措置を講じるよう強く要望する。

                     記

 1 地方が責任を持って、地域の実情に沿ったきめ細かな行政サービスを十分担えるよう、地方財政計画については、人件費増や物価高等への対応など、今後も増大する地方の財政需要を適切に反映するとともに、安定的な財政運営に必要な地方一般財源総額を増額確保すること。
 2 いわゆる年収の壁の更なる見直しや、ガソリンの暫定税率の廃止については、地方財政への影響を十分考慮し、地方の減収に対しては代替となる恒久財源を確実に措置すること。
 3 地方交付税については、引き続き、財源保障機能と財源調整機能の両機能が適切に発揮できるよう、その総額を確保すること。臨時財政対策債については、新規発行額ゼロを継続するとともに、償還財源を確実に確保すること。さらに、中長期的な視点で、臨時財政対策債等の特例措置に依存しない持続可能な制度を確立すること。
 4 地方が担っている役割と責任に見合うよう、地方税財源の一層の充実を図るとともに、京都市など政令指定都市には人口の集中・産業集積に伴う大都市特有の財政需要が生じていることも考慮しつつ、税源の偏在性が小さく税収の安定性を備えた地方税体系を構築すること。
 5 国が全国一律で行う子ども・子育て政策の強化に伴い生じる地方負担の財源については、国の責任において確実に確保すること。

  以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、 総務大臣、財務大臣、 内閣府特命担当大臣(地方創生)、 租税特別措置・補助金見直し担当大臣

重点支援地方交付金の拡充と地方自治体への迅速かつ丁寧な支援を求める意見書
(令和7年12月11日提出)

国においては、地域の実情に応じた政策展開を支援するため重点支援地方交付金を創設し、毎年度の社会経済情勢を踏まえたテーマ設定の下、地方自治体の取組を後押ししている。直近では物価高騰対応、賃上げ促進、人口減少対策などが柱とされ、特に令和6年度の配分においては、地域の中小企業や医療・介護・保育施設等の物価高騰対策への支援が中心的に実施されたところである。
 こうした交付金は、単なる財政措置にとどまらず、国の政策目標を地方の現場に実装する「実行プログラム」としての役割を果たしており、地方自治体の創意工夫をいかしつつ、地域経済の持続的発展に寄与している。
 また、京都市では、令和7年度9月補正予算において、重点支援地方交付金に独自の財源を加え、急激な物価高や今後のインフレ局面に対応していくため、学校給食費や事業者の設備導入への支援等に対する予算を措置し、市民生活・事業者の下支えに取り組んでいる。
 しかしながら、物価高騰や人手不足が長期化する中で、地方自治体は事業費の増大や人材確保の難しさといった課題に直面しており、重点支援地方交付金の規模・内容共に更なる充実が求められている。重点支援地方交付金の効果的な運用は、地域経済の底上げや住民生活の安定に直結するものであり、国・地方が一体となって取り組むことが不可欠である。
 よって国におかれては、下記のとおり地方の現場に寄り添った柔軟かつ持続的な支援策を講じられるよう強く求める。

                     記

 1 重点支援地方交付金の拡充を図り、地方が自立的に課題解決に取り組むことができる環境を整えること。
 2 補正予算を早期に成立させ、重点支援地方交付金を含む地方財源を迅速かつ確実に配分すること。
 3 地方自治体に対して、交付金制度の趣旨・要件等について丁寧な説明を行うとともに、実施段階での技術的・財政的支援を適切に講じること。

  以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、 総務大臣、財務大臣、 内閣府特命担当大臣(地方創生)、 内閣府特命担当大臣(経済財政政策)、 行政改革担当大臣、 地域未来戦略担当大臣、 賃上げ環境整備担当大臣

巨大災害発生に対する対応体制整備を求める意見書
(令和7年12月11日提出)

近年、我が国では、地震・台風・豪雨など、自然災害が頻発しており、国民の生命・生活・経済活動に甚大な被害をもたらしている。特に、今後発生が懸念される南海トラフ地震や首都直下地震、さらには、富士山の噴火等の巨大災害は、我が国全体に極めて深刻な影響を及ぼすことが想定されている。
 このような状況を踏まえ、政府は防災庁の設置を決定し、災害に強い国づくりを目指して体制整備を進めているが、実際の災害対応においては、地方自治体・各種支援団体との連携強化が不可欠である。
 よって国におかれては、国民の命と暮らしを守ることはもとより、海外からの旅行者などに安心して訪れてもらえるよう、災害に強い国づくりの実現に向けて、下記の事項について速やかに対応されるよう強く要望する。

                     記

 1 南海トラフ地震や首都直下地震等の発生に備え、耐震化の更なる推進、発災時における国の支援体制を一層強化し、被災地への人員・物資・情報支援が円滑かつ迅速に行われる仕組みを確立すること。
 2 令和8年11月に新設される防災庁においては、国は司令塔として地方自治体・地域住民・民間団体・ボランティア組織などとの緊密な連携を図り、災害対応の一元化・迅速化を実現するための機能を強化すること。また、2拠点整備が挙げられていることについては、早急に決定すること。
 3 国の防災施策や制度変更については、地方自治体に対して十分な説明責任を果たし、人的・財政的支援を適切に講じること。

  以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、 総務大臣、国土交通大臣、復興大臣、 内閣府特命担当大臣(防災)、 防災庁設置準備担当大臣、 国土強靭化担当大臣

持続可能な社会保険制度の構築を求める意見書
(令和7年12月11日提出)

人口減少・少子長寿社会の進展に伴い、現行の社会保険制度をそのまま維持することは困難であり、限られた財源を真に必要な医療に重点配分する仕組みづくりは避けて通れない。すなわち、医療費の適正化は必要である。
 京都市国保だけでも薬剤費は約190億円の規模になっているが、OTC類似薬の保険適用除外については丁寧な検討が必要である。
 軽度の症状に対して市販薬で代替可能なケースもあるが、高齢者や低所得者にとっては、市販薬の購入費が負担増となり、受診等をためらい、症状の重篤化を招く可能性も否定できず、結果として、より高額な医療・治療を必要とするケースが増え、医療費全体としてはむしろ増加するリスクも指摘されている。
 また、OTC類似薬といっても、持病との相性を考慮するなどの医師の判断が必要なケースもあり、単純に「市販薬で代替すればよい」訳ではなく、医療格差の拡大や、セルフメディケーションの過度な自己判断による健康リスクに関する懸念も、併せて指摘されている。
 よって国におかれては、OTC類似薬の保険適用除外については、影響分析や費用対効果の精査、また、疾病の重症化リスクの評価といった綿密な検討が不可欠であることから、財政健全化と国民の健康維持を両立するために、一律の除外ではなく、症状や患者属性に応じた仕組みとし、持続可能な社会保険制度を構築していただくよう求める。

  以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、 総務大臣、厚生労働大臣、 全世代型社会保障改革担当大臣

太陽光発電設備のリサイクル推進及び適正な廃棄処理に関する意見書
(令和7年12月11日提出)

近年、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、全国各地で太陽光発電設備が急速に普及している。特に固定価格買取制度(FIT)の導入以降、多くの設備が設置され、地域の脱炭素化やエネルギーの地産地消に寄与してきた。
 しかしながら、制度開始から13年が経過する中で、設置当初の太陽光パネルが寿命を迎え、大量のリユース・リサイクル・廃棄の問題が顕在化しつつある。不法投棄や不適切な処理への懸念も生じており、環境負荷の低減と資源循環の確保が急務である。
 再生可能エネルギーの推進と循環型社会の実現は、持続可能な地域づくりの両輪であり、太陽光発電設備のライフサイクル全体を見据えた政策支援が不可欠である。
 京都市においても、再生可能エネルギーの拡大を図るに当たり、使用済み太陽光パネルの適正処理はもとより、より環境負荷の少ないリユース・リサイクルの実施体制の確立が重要な課題になると考えている。
 よって国におかれては、下記のとおり、太陽光発電設備のリユース・リサイクル・廃棄に関する制度整備や支援を強化し、地方自治体が適正な処理と資源循環を推進できる体制を構築することを強く求める。

                     記

 1 廃棄される太陽光パネルから有用な資源(シリコン、銀、ガラス等)を回収・再利用するため、国として研究開発支援及びリサイクル施設の整備促進を図ること。
 2 使用済み太陽光パネルの廃棄時における発電事業者や施工業者の責任を明確化し、適切な処理ルートの確保、不法投棄防止策、処理業者の認定制度の充実を進めること。
 3 地方自治体が廃棄物処理やリサイクル推進の現場で重要な役割を担うことから、必要な財政的支援・人員配置・技術的助言など、国による包括的な支援体制を強化すること。

  以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、 総務大臣、経済産業大臣、環境大臣、 資源エネルギー庁長官

脳脊髄液漏出症患者の救済を求める意見書
(令和7年12月11日提出)

脳脊髄液漏出症(脳脊髄液減少症)は、交通事故等を契機に発症し、頭痛やめまい、倦怠感などの多様な症状が生じる疾患である。平成28年からは診断基準に基づく硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ療法)が保険適用となり、専門的な診療体制の整備が進んでいるが、社会的認知はなお十分とはいえない。
 脳脊髄液減少症患者・家族支援協会からは、労災保険では障害等級12級の認定が多く行われているが、自賠責保険では後遺障害等級が適切に認定されておらず、多くの患者が救済されていないとの指摘がある。
 京都市においても、令和6年中の交通事故発生件数は2,288件、負傷者数は2,581人となっており、事故後の後遺症に苦しむ人の生活が懸念される。こうしたことから、脳脊髄液漏出症に苦しむ患者が一人でも多く自賠責保険の後遺障害等級の認定を受け、適切な治療が受けられるよう、支援体制の充実が求められる。
 よって国におかれては、公平性と透明性の高い自賠責保険の後遺障害等級の認定体制を整備し、被害者救済の理念が十分に発揮されるよう、下記の事項について適切な措置を講じるよう強く要望する。


                     記

 1 自賠責保険の脳脊髄液漏出症に関する後遺障害等級の認定手続として、高次脳機能障害(自賠責保険高次脳機能障害認定システム)と同じように、専門医による認定システム(脳脊髄液漏出症認定システム)の仕組みを構築すること。
 2 被害者やその代理人及び裁判所等が開示を求めた場合、自賠責保険において後遺障害等級認定を審査した際の根拠資料について、労災保険と同様に、開示される制度とすること。

  以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、 総務大臣、厚生労働大臣

「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」の効果的・効率的な執行を求める決議
(令和7年12月11日提出)

物価高対策を目的に、地域の実情に応じた支援を行うための「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」を含む2025年度補正予算案が臨時国会に提出された。京都市においては、市民生活に寄り添い、事務費等の効率性にも配慮した施策を検討し、実施することを求める。

 以上、決議する。