令和8年定例会(5月市会)

最終更新日:令和8年6月1日

意見書・決議

全てのケアラーに対する包括的な支援と法的枠組みの整備を求める意見書
(令和8年6月1日提出)

近年、家族等の介護や世話を無償で担う「ケアラー」の負担が深刻な社会問題となっている。ケアラーが抱える問題は、肉体的な疲弊にとどまらず、精神的な孤立や経済的な困窮、そして学びや就業の機会喪失など、人生のあらゆる局面に多大な影響を及ぼしている。とりわけヤングケアラーについては、法改正により、国及び地方公共団体による支援が法的に義務付けられたところである。
  一方で、ケアラーは子どもに限られるものではなく、働きながら家族をケアするワーキングケアラー、育児とケアを同時に担うダブルケアラー、高齢の配偶者を支える高齢ケアラー、日本語が第一言語でない家族の通訳等を行うケアラーなど、その実態は多様化・複雑化しており、誰もが当事者となり得る状況にある。
  このような中、京都市会では、全てのケアラーが健康で文化的な生活を営み、自己実現を図ることができる社会の実現を目的とした「京都市ケアラーに対する支援の推進に関する条例」を、令和6年11月、全議員による共同提案、全会一致で可決し、制定した。全会派参画の下で設置されたプロジェクトチームが中心となり、市民と共に作り上げたこの条例の下、京都市では、官民協働による「京都市ケアラー支援推進協議会」の発足など、分野横断の連携体制を整備し、ケアラーの実態把握を進め、本年3月には「京都市ケアラー支援推進計画」を策定するなど、市民ぐるみでのケアラー支援推進に取り組んでいる。
 国においても、「経済財政運営と改革の基本方針2025」において年代や就労の有無を問わずケアラー支援の必要性が明記されたが、現在の取組は地方公共団体への支援にとどまり、ケアラー全体を対象とした包括的な法制度はいまだ整備されていない。
 現在の支援は、介護や障害、子育てなどの制度の枠組みごとに分かれており、ケアラー本人への支援は十分とは言えず、地域や自治体によって支援内容にも差が生じている。
 よって国におかれては、全てのケアラーが個人の尊厳を保ち、社会から孤立することなく安心して生活し、また、就労や学びなどの社会参加を継続し、自己実現を図ることができるよう、下記の事項について速やかに取り組むよう強く求める。

                     記

1 全てのケアラーを対象とした包括的な支援の基本理念を明確にすること。
2 ケアラーを支援するための実態把握、相談支援、情報提供、休息の確保、就業や就学に係る支援等について、分野横断的に取り組む法的枠組みを整備するとともに、社会的ケア・制度の拡充を図ること。
3 地方公共団体が地域の実情に応じた支援を安定的に実施できるよう、必要な財政措置を講じること。
4 ケアラー支援に関する国民の理解を深めるための普及啓発を推進すること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、 総務大臣、財務大臣、文部科学大臣、 厚生労働大臣、 内閣府特命担当大臣(こども政策)、 こども家庭庁長官

中東情勢の悪化に伴う原油価格高騰対策を求める意見書
(令和8年6月1日提出)


 中東情勢の悪化により原油価格が急騰し、食料品、包装材、建築資材など幅広い分野で値上げが相次ぎ、供給不安による供給の偏りや流通の目詰まりも起こり、販売休止品目も増加するなど、国民生活及び事業活動に深刻な影響が生じている。
 京都市においても、市バスの燃料となる軽油の入札が価格高騰により不調となり、公共工事でも石油由来の建築資材の納期の遅れによりしゅん工期限を延期する必要が生じる事態ともなっている。
 電気・ガス料金の値上げが見込まれる中、夏季の冷房需要の増加による家計負担の急増が予想され、生活の安定確保が喫緊の課題である。
  また、事業者においてはコスト高にありながら価格転嫁も困難な状況に直面しており、資金繰り支援に加え、雇用を守る取組も重要である。
 さらに、医療・介護分野など、公定価格制度により価格転嫁が構造的に困難な機関への支援も重要である。
 よって国におかれては、国民の命と暮らしを守るため、下記の対策を早急に講じられるよう強く求める。

                     記

1 電気・ガス料金の引下げやガソリン等の価格の引下げをはじめ、国民の負担軽減につながる対策を講じること。
2 原油価格の高騰の影響を受ける事業者への金融支援、雇用調整助成金の要件緩和・拡充を図ること。
3 ナフサ由来の基礎化学品の安定供給に努めること。
4 医療・介護分野などの経営支援を行うこと。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、 総務大臣、財務大臣、経済産業大臣、 国土交通大臣、 内閣府特命担当大臣(経済財政政策) 、内閣府特命担当大臣(経済安全保障)、 中東情勢に伴う重要物資安定確保担当大臣

住宅ローン減税の拡充等を求める意見書
(令和8年6月1日提出)

近年、我が国では、長く続いた超低金利政策の転換もあり、住宅ローン金利が上昇局面を迎えている。
 令和4年度税制改正において、住宅ローン減税の控除率は、それまでの1%から0.7%へ引き下げられた。これは当時、変動型住宅ローン金利が0.3~0.5%台という歴史的低金利水準にあり、「支払利息を上回る減税となる逆ざや状態」が問題視されたことによるものである。
 しかしながら、現在は状況が大きく変化している。
  住宅価格や建築費は全国的に高騰し、京都市内においても住宅取得に係る負担は大幅に増加している。さらに、日本銀行の金融政策の変更に伴い、住宅ローン金利は上昇傾向にあり、固定金利型住宅ローン「フラット35」の金利は、令和8年5月時点で2%台後半となっている。
  また、近年の住宅ローンの借入は、住宅価格の高騰を背景として、借入額の高額化及び返済期間の長期化が進んでいることが指摘されている。
  仮に3,500万円を35年返済で借り入れた場合、金利が1%上昇すると、総返済額はおおむね700万円前後増加し、月々の返済額も約1万5千円から2万円程度増加する試算となる。
  これは、食料品や光熱費等の物価高騰にも直面する子育て世帯にとって極めて重い負担であり、「子どもを育てながら京都市内で住み続けること」の大きな障壁となりつつある。住宅取得は、単なる個人の資産形成にとどまらず、子育て環境の安定、地域コミュニティの維持、少子化対策、空き家対策、さらには建設業・不動産業・地域経済の活性化にも大きく寄与するものである。
  よって国におかれては、金利の上昇局面における住宅取得環境の改善を図るため、下記の事項について強く求める。

                     記

 1 住宅ローン減税について、金利の上昇局面を踏まえ、控除率及び控除期間の拡充を検討すること。
 2 子育て世帯及び若年夫婦世帯に対する住宅ローン減税の優遇措置を更に強化すること。
 3 中古住宅の取得及びリノベーション支援を強化し、既存住宅の流通促進と空き家活用の促進をすること。

  以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、 総務大臣、財務大臣、国土交通大臣、 内閣府特命担当大臣(金融)、 国税庁長官、金融庁長官

住まいの安定と居住支援の抜本的強化を求める意見書
(令和8年6月1日提出)

 「住まい」は社会保障の基盤であり、個人の尊厳を守るための不可欠な社会インフラである。しかしながら、長引く物価高騰や都市部を中心とした家賃相場の上昇は、低所得世帯や子育て世帯の家計を圧迫しており、過重な住宅費負担が生活困窮に拍車を掛けている。また、単身高齢世帯の増加に伴い、賃貸住宅への入居拒否や孤独死への不安、老朽化した住まいの安全確保など、居住に関する課題は多岐にわたり、深刻化している。
 京都市においても、これまでから、居住支援協議会を設置し、セーフティネット住宅の法制化に先んじて、高齢等を理由に入居を拒まない民間賃貸住宅を登録する「すこやか賃貸住宅登録制度」を運用するとともに、居住サポート住宅の法制化に先んじて、高齢者の住まい探しと居住中の見守りサービス等を一体的に提供する京都市高齢者すまい・生活支援事業を実施してきた。
  また、市営住宅の空き住戸を活用することにより、様々な事情で住宅確保が困難な方に居住支援事業者が住戸を提供し、社会的な自立に向けた相談・支援を実施する取組や、より幅広い民間事業者の資金・ノウハウをいかして、若者・子育て世帯向けに住戸を整備、提供する取組(「若者・子育て応援住宅(愛称:こと×こと)」)を実施している。
  さらに、未就学の子どものいる子育て世帯の市内居住を後押しするため、既存住宅を購入、リフォームすることに対して「京都安心すまい応援金」も交付しているところである。
 しかしながら、急激な社会情勢の変化や多様化する居住ニーズに対応していくには、住まいの安定と居住支援に向けた取組をより強力に推進していく必要がある。
  よって国におかれては、誰もが安心して住み続けられる社会の実現に向け、下記の事項を速やかに実施するよう強く要望する。

                     記

1 低所得者や子育て世帯を対象とした家賃を補助する新たな「住宅手当」制度を創設すること。
2 居住支援法人等の活動を支援し、高齢者や子育て世帯への居住サポート住宅の整備や、孤独死への不安を解消するガイドラインの周知を推進すること。
3 高齢者の健康管理や遠隔見守りサービスを普及させるため、IoT技術等を活用した次世代住宅の実用化を推進し、高齢期に備えた相談体制を整備すること。
4 UR賃貸住宅や公営住宅の空き住戸について、NPO法人等に定期借家・低い家賃で貸し出す仕組みを全国に広げ、子育て世帯等への家賃減額や所得要件の緩和を行うこと。
5 生活保護の住宅扶助基準額を現行の家賃相場に見合う水準へ引き上げるとともに、地域差を踏まえた柔軟な基準設定を可能とすること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する 。


(提出先)
衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、 総務大臣、財務大臣、厚生労働大臣、 国土交通大臣

中東情勢に伴う原油価格・物価高騰等に対する国等と連携した対策を求める決議
(令和8年6月1日提出)

中東情勢の不安定化に伴う原油価格・物価高騰等の影響については、市内においてもエネルギー価格や物流費の上昇、供給不安等による事業活動や市民生活への影響が危惧されている。
 現在、国において、燃料油価格の激変緩和措置や安定供給に向けた代替調達、目詰まり解消に向けた相談窓口の設置などの対策が講じられているほか、今国会中の補正予算の編成方針が示されたところである。
 状況が日々変化している中、まずは正確な情報を確認し、冷静に対応することが必要であり、過度な不安が更なる混乱を招くブルウィップ効果を避けなければならない。そのうえで、国等との連携を一層強化し、市内事業者の事業活動や、市民生活を守るための更なる対策を講じていくことが必要であり、下記の事項について、京都市において積極的な取組を行うよう求める。

                     記

1 燃料油や石油由来製品の安定供給に向けた対策強化(POSデータのリアルタイム共有やベンダー管理在庫方式の導入など)、原油価格・物価高騰等を踏まえた事業者・市民生活に対する支援の充実について、国への働き掛けを一層強化すること。
2 中東情勢の不安定化に伴う原油高や物価高騰、資材等の調達困難に対して、市民生活に最も身近な基礎自治体として、丁寧な情報収集を継続し、エビデンスに基づく強い発信を行うとともに、国の補正予算も含めた対策の効果を冷静に見極めつつ、市民生活や事業活動、公共サービスの維持に向け、機動的かつ柔軟に対策を講じること。併せて、市として予算措置が必要となる場合は、独自財源の活用も含めて、新たな補正予算の編成も視野に入れ、躊躇せず対策を講じること。

 以上、決議する。