平成28年定例会(9月市会)

最終更新日:平成28年10月26日

意見書・決議

建設労働者のアスベスト被害者の早期救済とアスベスト問題の早期解決を求める意見書

(平成28年10月26日提出)

  

かつて大量に使用されたアスベスト(石綿)による被害は,多くの労働者や国民に広がっている。また,東日本大震災で発生した大量のがれき処理についても,被害の拡大が懸念されている。
 我が国では,建設労働者に多くの被害者が発生している。これは,輸入されたアスベストの80〜90パーセントが建築資材に使用されてきたことに大きな原因があると言われている。
 また,建設業の重層下請構造や,多くの現場で就業するという建設労働者の特性から,労災認定にも多くの困難を伴い,認定されないことが多々あると言われている。国は,平成18年に,「石綿による健康被害の救済に関する法律」を制定し,その後も医療費・療養手当の支給対象期間の拡大等の改正を行っているが,補償内容は不十分であり,被害者及びその遺族の生活を含めた補償の充実や,救済基金の拡充など,制度の抜本改正を求める声が上がっている。アスベストによる疾病は30〜40年という長期間を経過した後に発症することが多く,亡くなってから労災認定がされる事例や,医学的認定基準を満たさず,労災認定に結び付かない事例がある。
 この点,平成24年の東京地裁判決,平成26年の福岡地裁判決並びに平成28年の大阪地裁判決及び京都地裁判決は,いずれも国の責任を認めており,中でも京都地裁判決は,国に加えて建材メーカーの責任も認めるものとなっている。
 しかし,アスベスト被害者の苦しみは今なお続いており,早期の労災認定が,発症した建設労働者の大きな支えとなる。また,多くの被害者が発生している建設労働者に対する救済を図ることで,全てのアスベスト被害者に対する問題解決に波及するものと考える。
 よって国におかれては,建設労働者のアスベスト被害者及びその遺族が生活していくための救済の実施と,アスベスト被害の拡大を根絶するための対策を直ちに講じ,アスベスト問題の早期解決を図るよう強く求める。

 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣,国土交通大臣,環境大臣


東日本大震災による避難者用無償住宅支援の継続を求める意見書
(平成28年10月26日提出)


東日本大震災から5年7箇月が経過した。政府の原子力緊急事態宣言は未だ解除されておらず,十分な復興には,まだまだ時間が掛かると思われる。現地の一日も早い復興と,長期避難をされている全ての皆さんの早期の生活再建に取り組まなければならない。
 そのような中,国及び福島県は,平成29年3月末をもって,避難指示区域外からの自主避難者に対する住宅の無償提供を終了させる方針を示した。
 京都市では,市営住宅などの最長6年間の無償提供を独自に実施しているところであり,平成28年10月1日現在の京都市内への避難者は,178世帯,429名となっている。
 平成27年8月に京都市及び京都府が共同で,避難者205世帯を対象に実施した住居意向調査では,半数以上の方が京都での居住継続を希望するとの結果であった。
 よって国及び福島県におかれては,自主避難者に対する避難用無償住宅支援を継続させるよう強く要望する。

 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,復興大臣,福島県知事


地方財政の充実・強化を求める意見書
(平成28年10月26日提出)


地方自治体は,対応すべき課題が年々増大する中で,国土強靱化の推進,地方創生・人口減少対策など新たな課題にも直面し,財政の更なる充実・強化が求められている。
 一方,政府においては,平成32年のプライマリーバランスの黒字化を図るため,特に「経済・財政再生計画」において,社会保障や地方財政などの歳出削減に向けた動きを加速させている。
 政府国債残高を理由に財政再建目標を達成することも必要だが,国民生活に必要不可欠なサービスに要する地方財源が削減されれば,その生活と地域経済に疲弊をもたらすことは必至である。
 よって国におかれては,公共サービスの質の確保と地方自治体の安定的な行政運営を実現するため,本年度及び来年度の政府予算,地方財政対策の実行及び検討に当たっては,国と地方自治体の十分な協議のうえ,実態に見合った歳入・歳出を的確に見積もり,その財源を十分確保するとともに,臨時財政対策債制度を見直し,本来の交付税措置に戻すことを強く求める。

 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,財務大臣,経済産業大臣,内閣府特命担当大臣(経済財政政策)

パリ協定の早期批准を求める意見書
(平成28年10月26日提出)


平成9年(1997年)に京都市で行われた「第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)」で,国際的取決めである「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書」が歴史的に成立した。
 そして,この度,世界に貢献してきた「京都議定書」に代わり,18年ぶりに,平成32年(2020年)以降の新たな気候変動に関する国際的枠組みである「パリ協定」が,平成28年(2016年)11月4日に発効することになった。
これに伴い,11月7日からモロッコ王国のマラケシュ市で行われる「第22回気候変動枠組条約締約国会議(COP22)」と同時開催予定の「パリ協定」第1回締約国会合に正式メンバーとして参加するには,10月19日までに国会で承認することが必要であったが,現時点では参加する目途が立っていない。
 このままでは,「京都議定書」以降,地球温暖化対策で世界に一層貢献してきた我が国が,引き続き世界のリーダーとしての役割を発揮することが困難になりかねない。 
 よって国におかれては,我が国が,地球温暖化対策で,これからも世界のリーダーとしての主導的な役割を果たすため,今後,早期に「パリ協定」を批准するよう強く求める。

 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,環境大臣


無年金者対策の推進を求める意見書
(平成28年10月26日提出)


年金の受給資格期間の短縮は,無年金者対策の観点及び将来の無年金者の発生を抑制していく観点から,平成24年2月に閣議決定された「社会保障・税一体改革大綱」に明記されたものである。
 厚生労働省の推計によれば,仮に受給資格期間を10年に短縮すると,新たに64万人が受給権を得る可能性があるとしている。
 諸外国における年金の受給資格期間に目を向けた場合,例えば,アメリカ及びイギリスは10年,ドイツは5年,フランス及びスウェーデンは受給資格期間を設けないなど,日本は他国に比べ明らかに長いことが読み取れる。
 本年6月,世界経済が減速するリスクを回避するとともに,デフレから脱却し,経済の好循環を確実にするため,平成29年4月に予定していた消費税率10パーセントへの引上げを2年半再延期することになった。本来,財源としては,消費税を充当すべきところであるが,この無年金者対策については喫緊の課題でもあり,本年8月に示された政府の「未来への投資を実現する経済対策」において,その実施が明記されたところである。
 よって国におかれては,必要な財源の確保を含め,安心の社会保障の実現を図るため,早急に下記の事項について取り組むことを強く求める。



 無年金者対策は喫緊の課題であることから,年金の受給資格期間を25年から10年に短縮する措置について,平成29年度中に確実に実施できるよう,必要な体制整備を行うこと。


  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣


返還不要の「給付型奨学金」の創設及び無利子奨学金の拡充を求める意見書
(平成28年10月26日提出)


現行の国の奨学金制度は,独立行政法人・日本学生支援機構を通じて学生に貸与し,その返還金を次世代の奨学金の原資とする形で運営されている。
 この奨学金制度は,国立大学,私立大学とも授業料が高止まりしていることなどが背景となって,平成28年度は,大学生らの約4割に当たる132万人が貸与を受ける見込みである。一方,非正規雇用などによって卒業後の収入が安定せず,奨学金の返還に悩む人が少なくない。
 そのような中,政府は,平成28年6月2日に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」に続いて,同年8月2日に閣議決定した「未来への投資を実現する経済対策」において,返還不要の「給付型奨学金」の創設を検討することを盛り込んだ。
 よって国におかれては,納税者である国民の理解も得つつ,学生が安心して勉学に励むことができるよう,返還不要の「給付型奨学金」の創設や無利子奨学金の拡充など,具体的な経済支援策として,下記の事項について取り組むことを強く求める。



1
学ぶ意欲のある若者が経済的理由で進学を断念することがないよう,奨学金や授業料減免などの支援を拡充するとともに,貧困の連鎖を断ち切るため,平成29年度を目途に給付型奨学金を創設すること。
2 希望する全ての学生等への無利子奨学金の貸与を目指し,「有利子から無利子へ」の流れを加速するとともに,無利子奨学金の残存適格者を直ちに解消すること。
3 低所得世帯については,学力基準を撤廃し,無利子奨学金を受けることができるようにすること。
4 返還月額が所得に連動する新所得連動返還型奨学金制度については,制度設計を着実に進め,既卒者への適用も推進すること。併せて,現下の低金利環境を踏まえ,有利子奨学金の金利を引き下げること。


  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,文部科学大臣,内閣府特命担当大臣(少子化対策)


「同一労働同一賃金」の実現を求める意見書
(平成28年10月26日提出)


現在,例えば非正規雇用労働者(パートタイム労働者)の時間当たりの賃金は正社員の6割程度と,賃金やキャリア形成などの処遇において,正規労働者と非正規労働者との間で大きな開きがある。女性や若者などの多様で柔軟な働き方を尊重しつつ,一人一人の活躍の可能性を大きく広げるためには,我が国の労働者の約4割を占める非正規雇用労働者の待遇改善は待ったなしの課題である。
 今後急激に生産年齢人口が減少していく我が国において,多様な労働力の確保と個々の労働生産性の向上のためには,雇用の形態にかかわらない均等・均衡待遇の確保がますます重要になっている。
 このような状況の中,「同一労働同一賃金」の考えに基づく非正規労働者の待遇改善のための総合的な施策を迅速に実施することは大変に重要である。
 よって国におかれては,日本独自の雇用慣行や中小企業への適切な支援にも十分に留意したうえで,非正規労働者に対する公正な処遇を確保し,その活躍の可能性を大きく広げる「同一労働同一賃金」の一日も早い実現のため,下記の事項について取り組むことを強く求める。



1
不合理な待遇差を是正するためのガイドラインを早急に策定するとともに,不合理な待遇差に関する司法判断の根拠規定を整備すること。
2 非正規雇用労働者と正規労働者との不合理な待遇差の是正や両者の待遇差に関する事業者の説明の義務化等について,関連法令の改正等を進めること。
3 とりわけ厳しい経営環境にある中小企業が,例えば非正規労働者の昇給制度の導入等の賃金アップや処遇改善に取り組みやすくなるようにするための様々な支援の在り方について,十分に検討すること。


  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣


チーム学校推進法の早期制定を求める意見書
(平成28年10月26日提出)


グローバル化や生産年齢人口の減少などの社会や経済の急速な変化により,学校現場が抱える課題が複雑化・多様化してきている。
 その課題解決のために,学校の教職員だけでなく各分野それぞれの専門的な知識や技能を活用し,チームとして連携し協働して学校運営を行う「チーム学校運営」を推進する「チーム学校運営の推進等に関する法律」の法制化が,現在,国会で議論されている。
 京都市においては,以前から学校運営協議会を設置し,学校運営に教職員だけでなく地域住民等も参画した取組を推進してきているが,昨今,いじめ問題の深刻化や,新たな貧困問題への対応など,学校に求められる役割が拡大しており,学校の教職員だけでは解決が困難な事態になってきている。
 また,教員の勤務実態に関する国内外の調査を見ても,我が国における教員の長時間勤務の実態が明らかになっているなど,学校及び教職員を取り巻く課題を克服するための法制化は喫緊の課題となっている。
 よって国におかれては,教職員が,総合的な指導を担う日本の学校の特徴を十分にいかしつつ,複雑化・多様化する課題に対応することができる「次世代の学校」とも言える「チーム学校」が構築できるよう,下記の項目について強く要望する。



1
教職員体制の整備充実を図るとともに,専門職員や専門スタッフ等が学校運営や教育活動に参画していく「チーム学校」の実現を図るため,「チーム学校運営推進法」を早期に制定すること。
2 教員が担うべき業務に専念し,子どもと向き合う時間を確保するため,学校や教員が携わってきた従来の業務を見直し,教員の業務の適正化を図ること。
部活動の指導を充実させるため,休養日の設定等を検討するとともに,地域のスポーツ指導者や引退したトップアスリート,退職教員,運動部や文化部所属の大学生等,地域の幅広い協力を得ながら支援するための環境整備を進めること。
4 教員の長時間労働という働き方を見直し,心身共に健康を維持することができる職場づくりを推進するため,定期的な実態調査の実施やメンタルヘルス対策の推進を図ること。
5 「チーム学校」の運営を推進するための地方への財政支援策も十分に検討すること。


  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,文部科学大臣


京都市美術館の再整備に関する決議
(平成28年10月26日提出)


京都市美術館は,昭和天皇の即位を記念する大礼記念京都美術館として,多くの市民の皆様の浄財でスタートした歴史ある美術館である。
 現在,京都市美術館の再整備が進められているが,その財源として約100億円の予算の半額を50年間50億円の命名権(ネーミングライツ)で確保するとの案が示され,先日,企業の応募があり決定された。しかしながら,その過程において,歴史ある美術館に民間企業名を付けることに対する危惧や,命名権の制度に対する議会の関与が不足しているなど,十分な議論を求める声もあった。京都市は制度の改善は約束したものの,美術館再整備工事請負契約に関しては,11月議会に提案するために制度見直しの時間はないとし,そのまま決定されたものである。
 一方,過日に行われた工事の入札では,当初の総事業費を30億円も上回る金額で1者が入札に応じたのみで,その後の協議も不調に終わり,再度設計等を見直し入札する方針が示された。これは,設計変更はしない,11月議会には必ず間に合わせるといった,議会に対する説明と大きく相違するものであり,その見通しの甘さが明らかとなった。
 よって京都市においては,今までの経過を反省するとともに,今後は議会と十分な議論を行い,市民の信頼を回復し,美術館再整備を進めることを求める。

 以上,決議する。