そうなの?どうなの?門川市長!京都のこれから発信局

京都市

歴史学者 磯田道史 × 京都市長 門川大作

#1 未来のために -京都市の行財政改革-

  • 磯田道史さん
    磯田 道史さん
    歴史家。国際日本文化研究センター教授。2018年第10回伊丹十三賞受賞。『武士の家計簿』『天災から日本史を読みなおす』『感染症の日本史』など著書多数。
  • 門川大作門川大作
    門川 大作
    京都市教育長を経て、2008年2月に第26代京都市長に就任。現在4期目。

必要な方に必要な支援を。
強い決意で、
未来の京都を切り拓く。

歴史とは「靴」。
先人の“例”(ためし)から学ぶ。
門川
歴史学者・磯田道史さんと京都市の行財政改革についてお話しします。先生は古文書を読み解き、災害から感染症、江戸の藩政改革まで歴史をわかりやすく、かつ面白く発信。歴史からはコロナ対策や財政再建など、多くの教訓が得られますね。
磯田
歴史は言わば「靴」。世の中には、コロナ禍のような思わぬ危険がゴロゴロしている。そんなとき、歴史という靴を履けば安全に道を歩ける。例えば米沢藩主・上杉鷹山(ようざん)や備中松山藩の儒学者・山田方谷(ほうこく)はいずれも藩財政を見事に立て直した改革者ですが、彼らも歴史に学び、大胆な改革を実行。決して困難から逃げなかった。「慈悲」「仁愛」の心で行動した鷹山らの“例(ためし)”は、現代の改革のヒントになります。
門川
このコロナ禍や本市の財政危機を前に、子どもたちと未来のため、より困っておられる方のため、いかに覚悟をもって挑むべきか。歴史に学ぶときと肝に銘じています。
対談風景
皆さんのお声が
改革の大きな力に。
門川
京都市は人口一人あたりの税収が少なく、脆弱な財政構造。一方、これまで改革に努めつつ、昭和の高度成長期に設けた制度を基に、京都ならではの全国トップ水準の福祉、子育て支援策等を実施。同時に、安心・安全、利便性向上、豊かさに繋がる都市基盤整備、文化を基軸にした都市経営等に取り組んできました。結果、国内外から高い評価を得て京都の都市格は大きく向上。それは数字にも表れ、コロナ禍前の5年間では個人市民税の納税義務者は5%増、市税収入は9%増と過去最高に。しかし、国からの地方交付税の大幅減少等で、財政は厳しく、さらにコロナ禍で危機的に。今改革せねば未来はありません。
磯田
政治の理想は皆の快適を持続させること。でもこれが実に難しい。「今だけ、この部分だけ」という姿勢では立ち行かない局面が歴史上もしばしば。公を担う人は厳しい立場に置かれます。
門川
改めて痛感しています。実は私も市長4期目に挑戦するか迷いました。しかし「持続可能な財政のため、改革のオープンな議論と実行を」と掲げ、選んでいただき、そこにコロナ禍です。
磯田
困難に見舞われる今、上手くいった例もそうでなかった事例も、皆で語り合えるのが強い社会だと思います。
門川
フルオープンの「持続可能な行財政審議会」、また議会でも深い議論を重ね、まず令和5年度までの3年間を集中改革期間に位置付け、私はもとより、市職員の給与をカット。その財源は自然災害等に備え基金へ。全ての施策をゼロベースから点検し、単なる縮小ではなく社会状況の変化や将来を見据え、セーフティーネットを大切にしつつ持続可能なものに再構築していきます。
対談風景
決して縮み志向にならず、
「勇なる」改革を。
門川
この魅力あふれる京都を次代に、100年後につなぐための道筋を作る、それが私の使命。厳しいご意見も多いですが、「子どもや孫のために思い切った改革を。頑張れ」というお声もいただいています。
磯田
弱者と将来世代を大事にする原則が大切です。京都の魅力と人々の豊かさにつながるものを「見える化」することも。「京都の魅力」、その維持発展への投資を止めれば、自分の田んぼで実りそうな稲を実る前に刈り取るのと同じですから。
門川
未来と弱者への責任を持ち、同時に縮み志向になってもいけない。歴史に責任を持とうと研究・発信される磯田先生のお言葉だけに、胸に迫ります。
磯田
京都は世界に愛されるまち。まず自信を失わないことが大事です。山田方谷も「草むらを分けてみよ、必ず道がある」(*1)と語りました。見極めれば必ず解決策や成長戦略が見出せる。知恵で乗り切りましょう。もう一つ大事なのは市民の信を失わないこと。丁寧な説明が不可欠ですね。
門川
はい。計画案に寄せられた市民意見は約9,000件。それら一つ一つに真剣に向き合い、絶対に将来世代へ負担を先送りしない。そう決意しています。新景観政策から10年余り。京都は美しくなったと高い評価。一方で課題も。活力あるまちづくりとの調和が大切。そこで政策の理念をいかしつつ、2019年には建物の高さ制限等を一部緩和し、今、地域ごとに皆さんと未来ビジョンを創ろうとしています。産業用地や若い人が住みやすい住宅も必要との切実なご意見も。京都で成長した企業が用地不足から工場等を市外に置くと、京都で雇用が生まれない。こうした課題を皆さんと共有できてきました。
磯田
「ここで教育を受けさせたい」と親が思うまちは人口が減りません。私の子も受け感銘を受けたのが、小学生が外国人を相手に英語でまちを案内する授業。「住んで良し、育てて良し、働いて良し、遊んで良し、学んで良し」。京都ならできるはずです。
門川
教育・文化・子育て支援は大切です。引き続き、全国水準を超える取組を進めてまいります。2023年には、市立芸術大学が京都駅東部に移転。その近く、東九条にはアート集団「チームラボ」が入るアート複合施設も生まれ、世界に誇れる芸術ゾーンが誕生。スタートアップ企業が、京都に拠点を置く潮流も出てきました。
磯田
社会課題解決をめざすソーシャルビジネスも、京都は盛んですよね。
門川
全国の先進地です。そんな京都のあらゆるポテンシャルをいかし、将来の担税力を向上させるため、民間でご活躍の方を本市のアドバイザーにと2名募ったところ、国内外から1,600人のご応募が。改めて「日本の/世界の京都」への期待と責任を痛感しています。
磯田
藩政改革に向かう上杉鷹山を、その恩師は「勇なるかな 勇なるかな」(*2)と送り出した。京都も弱者に優しく、「勇気をもって!」いきましょう。
門川
心強いです。未来に責任をもつ改革に市職員一丸となって取り組みますが、無論、行政だけではできません。議会のご理解、市民の皆さんのお力をいただきながら、強い覚悟でかつ丁寧に行財政改革を推し進め、「誰一人取り残さない、すべての世代が暮らしやすい魅力と活力あるまち」を実現していきます。引き続き、お知恵をよろしくお願いします。
  1. 「分けてみよ。今は葎(むぐら)のしげるとも、中に直ぐなる道のありしを」今は草むらが生い茂って混沌としていても、
    よくかき分けて見れば、その中に真直ぐな道が見つかるものである。
  2. 「勇なるかな勇なるかな、勇にあらずして何をもって行なわんや」何をやるにしても、まず勇気が必要である。
    〈江戸期の儒学者・細井平洲〉
対談風景

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