若い力が躍動し
京都を明るい未来へ

2022.11.28

写真左:ゲスト:株式会社Casié 代表取締役CEO 
藤本 翔さん

1983年大阪府生まれ。2017年に絵画レンタルのサブスクリプションサービスを行う(株)Casiéを創業。才能ある画家が経済的理由で創作活動を断念することのない、新しいアートのエコシステムとして、注目されている。
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写真中央:ゲスト:(株)めい 共同代表 
扇沢友樹さん

1988年京都市生まれ。不動産脚本家。2011年、大学卒業と同時に不動産企画会社(株)めいを創業。2019年に、職住一体型アーティストレジデンス・河岸ホテルを開業。梅小路京都西駅エリア「クリエイティブタウン化」のアートの中核を担う。
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写真右:京都市長 
門川 大作

1950年京都市生まれ。京都市教育長を経て、2008年に第26代京都市長就任。現在4期目。

アーティストの工房兼宿泊施設・河岸(かがん)ホテルを営む扇沢友樹さんと、定額制絵画レンタルサービスを行うCasié(かしえ)の藤本翔さん。アートをめぐる新事業を展開するお二人と門川市長が京都の未来を語ります。

アーティストに寄り添い
若い発想で新事業を展開

門川:今日は京都を拠点に、アートの力で社会課題の解決にもつながる事業を営むお二人をお迎えしました。扇沢さんはご自身の提唱する“温かい不動産”の一環として、河岸ホテルをプロデュースされ、世界から高く評価されていますね。

扇沢:収益ばかりを重視せず、入居いただいた方の人生を豊かにできる不動産を目指しています。河岸ホテルもその一つで、一般の方向けホテルとしての機能に加え、アーティストが共同生活しながら作品を制作・発表。滞在しながら収入を得られ、地域の発展にもつながるシステムを、という思いでつくりました。

門川:若い芸術家の創作活動と生活の両面を応援するんですね。藤本さんは、絵画の定額レンタル(サブスクリプションサービス)という画期的なビジネスを始められましたが、きっかけは?

藤本:私は、画家だった父が絵で生計を立てるのに苦労する姿を見て育ちました。才能ある画家が経済的理由で創作活動を断念せざるを得ない。そんな現状への「怒りに近い反骨心」が起業の原点です。

門川:お客さんは月々いろんな作品をレンタルで楽しめて、アーティストは一定の収入が得られる。素晴らしいですね。

藤本:絵画を一度家に飾っても、気軽にまた違う作品に挑戦できるので、お客さんからは「推しのアーティストを探す旅みたい」と喜ばれています。毎月、家族で順番に絵を選んだら、家族の意外な一面がわかって盛り上がった、なんて話も聞いています。

門川:昔は床の間があり、掛け軸や生け花を絶やさない家が多かったように、生活の中で文化や芸術が感じられる環境は大切なもの。文化とは何か、突きつめて考えると、多様性を認め合い、より良く生きていくこと、これからの時代に不可欠な営みですね。心を豊かにする文化芸術の魅力を広めつつ、アーティストにも寄り添う。そんな若いお二人の活躍を心強く思っています。

京都人の文化芸術への理解が
新たなビジネスを支える

門川:京都市中央市場近くにある河岸ホテルは、青果卸売会社の社員寮兼倉庫をリノベーション。大変身ですね。

扇沢:市場は流通・加工の一大拠点、同時に職住近接という方も多い。対象が野菜からアートに替わっても「搬入する」「加工する」「搬出する」、そして「住む」という“動詞”は同じ。元来その土地が得意とする”動詞“があって、それを活かして時代に合う企画を立てると、新しいものが生まれます。ここは、ものづくりベンチャーにも適した場所だと思います。

門川:河岸ホテルが建つ梅小路京都西駅エリアでは、地域の企業の皆さんとの協働で、『食・アート・ものづくり』をコンセプトとした世界一クリエイティブなまちづくりが飛躍しています。500社6000人が集まり交流する“まち”「京都リサーチパーク」、ものづくりの試作・交流拠点「京都メイカーズガレージ」、「梅小路マーケット」なども集結。京都の特徴である重層性と多様性が相まって、面白い取り組みが次々と生まれています。
 藤本さんは大阪ご出身ですが、なぜ京都へ?

藤本:一番の理由は、京都と私たちの事業の相性が良かったから。京都の人はみんな、文化芸術への関心が高い。「別の国に来たのか!?」と思うくらいです(笑)。近所の方が飛び込みで絵を買いに来てくれたり、搬入業者さんも興味津々で作品を見ていきます。アルバイトも8割が美大・芸大生、絵画の扱い方を心得ているので、安心して仕事を任せられるんです。

門川:京都には6つの美大・芸大がありますからね。一般企業に就職する卒業生も多く、ものづくり業界にアートのセンスがある人が増えれば新風を巻き起こしてくれると、今注目されています。

梅小路京都西駅エリアの再整備
中央市場や梅小路公園周辺エリアの、「モノづくり」「アート」「食」をキーワードにしたクリエイティブタウン化を推進中。グローバルに通用するモノづくり産業の育成、未来志向での京都の食文化の発信、市民生活と調和し地域文化を育てる観光業の育成、地域の次世代を育むまちづくりなどを支えています。

産学公のオール京都体制で
若者の夢をバックアップ

門川:ビジネスの舞台としての京都の魅力は?

藤本:私たちの事業形態は収益化するのに時間が必要。融資を受けるのにとても苦労しました。でも、京都の金融機関は「それはやる意味がありますね」と後押ししてくれた。おかげで事業の推進力が上がり、実績も想定以上に。夜も寝られない大変な時期もありましたが、「京都に救われた」。そう思っています。

扇沢:そうそう。コツコツがんばっていると、フォローアップしてくれる先輩方が京都には大勢おられるんですよね。僕らのような若者の話にも、熱心に耳を傾けてくれる。そんなありがたい雰囲気に感謝しかありません。

門川:京都は多くの世界的企業を生んだ『ベンチャーの都』。若者の夢を応援する風土が息づいています。本市では、元小学校等を活用して、創業・イノベーション拠点「淳風bizQ(びずく)」や京北地域にある地域連携・テレワーク拠点「KOTOS(ことす)」を整備するなど、産学公連携でスタートアップや起業家支援に力を入れています。

扇沢:志を抱いて事業を興す人に、ぜひ京都に来てほしいですね。

門川:はい。本市では今、京都ならではの景観を大切にしつつ、持続可能な活力あるまちを目指した都市計画の見直し、企業立地支援の強化などをさらに進めています。また、文化庁が京都に。文化と経済の好循環、文化で豊かさを実感できる社会の実現へ。お二人のようにアイデアあふれる若い起業家の皆さんがどんどん京都に拠点を構え、活躍してくれる。そして、地域課題の解決にも貢献してくれる。そんな京都の未来を共々に実現していきたいですね。本日はありがとうございました。

撮影協力:KAGANHOTEL-河岸ホテル- / Photo by Atsushi Shiotani

オール京都体制での起業支援
京都市と産業界、経済界、大学や研究機関、金融機関などあらゆる関連事業者と連携し、京都での創業・ベンチャー支援を展開しています。