【子育て対談】
イクメンの元祖(!?)、
先駆者の二人が
子育てについて
語り合います。

2022.07.05

ゲスト:タレント・歌手 
つるの剛士さん

昭和50年福岡県生まれ。2男3女の父。TV『ウルトラマンダイナ』や音楽ユニット「羞恥心」で脚光を浴びる。平成21年ベスト・ファーザー イエローリボン賞受賞。令和4年幼稚園教諭免許取得。

京都市長 
門川 大作

昭和25年京都市生まれ。3男1女の父。立命館大学第二部法学部卒業。京都市教育委員会に長年勤務し、同教育長を経て平成20年第26代京都市長に就任。現在4期目。

男性の育休取得の先駆けに

門川:5人のお子さんをお持ちの、つるのさん。20年近く「子育て最前線」におられ、育児休業も2度取られたんですね?

つるの:はい。初めて取ったのは13年前、ちょうど4人目が生まれる時でした。音楽ユニット「羞恥心」の活動などがものすごく忙しい時期で、ほとんど家にいなくて。妻とけんかが絶えなかったんです。そんな時、銀行マンだった父の「家がおろそかになると必ず仕事で失敗する」という言葉を、ふと思い出して「休もう」と。それでベスト・ファーザー賞の授与式の場で「休みます」と突然宣言。周りを驚かせてしまいましたが、2か月休ませてもらいました。ただ、育休中はぶっちゃけ、仕事より大変でしたけど。

門川:まさにイクメンの先駆者。思い切った行動で話題になりましたね。

つるの:僕自身は子育てというより妻の手伝いをしたくて休んだので、「イクメン」と呼ばれるのに違和感があったんですよ。ただ、その言葉が広がることで、男性が育児しやすくなってきた側面はあるんじゃないでしょうか。18歳になる長男が生まれた頃は、男子トイレにおむつ交換台もありませんでしたから。環境は飛躍的に整ってきたと実感してます。

門川:私も4人の子どもを妻と一緒に育てました。一人目は最初保育所に入れず、個人の方にお願いして預かってもらいましたね。二人目はどこにも預けられず、同じ境遇の親同士で一軒家を借り、お金を出し合って「共同保育所」をつくったことも。保育所の重要性を痛感しました。時代は大きく前進して、今、京都市では、保育・幼児教育関係者はじめ多くの皆さんのお力添えをいただき、保育所等は9年連続、学童クラブは11年連続で“待機児童ゼロ”。当時とは隔世の感がありますね。

つるの:大変な苦労をされたんですね。それが今の京都の保育につながっているんでしょうね。

門川:「仕事人間」で、家庭は妻に任せきりだった私が偉そうに言えないんですが。昨年度、京都市の男性職員の育児休業取得率は5割を超えました。

つるの:すごいですね。僕が、育休中一番辛かったのが、何ともいえない消化不良感。外の仕事には目標があり、そこに到達すれば評価される。ところが家庭では、毎日せっかく手間暇かけて料理を作っても、ありがとうを言ってくれない。子どもたちが食べてくれない時もある。そんな状況を理解してくれる人が、家の中に誰もいないと大変です。けれど経験すれば理解できる。だから育児休業のことを、僕は「男の家庭訓練」と言い換えたい! 例えば「皿洗い、やっといたからね」とパパが誇らしく言っても、ママからしたら「いや、それ以外にもいっぱいあるよ」と思ってる。「ペットボトルのビニールを剥がして、キャップは別で。生ごみはまた別のところに捨てて。テーブルの下見て! 子どものこぼしたご飯粒いっぱいだよ」。これ、「家庭訓練」をすると、全部わかる。ぜひ、多くの皆さんに経験してほしいです。

門川:父親の家事・育児参加時間が、2人目、3人目誕生の大きな要素というデータもありますね(厚生労働省「第9回21世紀成年者縦断調査」)。京都では小学校のPTAから発展した「おやじの会」もあり、「わが子の父から地域のおやじになろう」と、3,000人ものお父さんが参加しておられます。夏休みに子どもたちと一緒に学校を掃除することも。

つるの:いいですね!これからはやはり「子どもが真ん中」の社会にしていくことが大切な気がします。元気なおじいちゃん、おばあちゃんにも活躍してもらって、全世代で子どもを育てる社会に。

子どもたちに“つるの恩返し”

門川:つるのさんは、この春短大を卒業されて、幼稚園教諭の資格を取られたとか。

つるの:そうなんです。これまでウルトラマンや子ども番組の司会など、子ども関係の仕事をたくさんさせてもらいました。人生100年時代にあってこの先、これまでのキャリアを生かし、子ども達に携わる仕事ができたらと資格取得を。ちょうどコロナ禍と重なり、時間ができたのでキャンパスライフを2年満喫(笑)。次は保育士を目指しています。

門川:2年にわたるコロナ禍を学びの場に、素晴らしい!保育士資格の取得も頑張ってください。資格が取れたら、その先の夢は?保育園を開くお考えですか?

つるの:とりあえず、草ボーボーの土地は確保しています(笑)。幼少期って本当に大事な時間。「ウルトラマンになりたい」という幼い頃の夢を叶えて、幸せに生きてこられたことに感謝して、微力ながら「つるの恩返し」をと。いろんな方の力を借りつつ、何か新しいことができたらいいなと。子どもたちに関わっていると、教えてもらうことが、たくさんある。彼らの頭は柔らかいから、僕ら大人もどんどん吸収して学んでいかないと、と思いますね。

門川:次の世代を育てることが今ほど大事な時代はない、そう感じます。つるのさんなら、「子どもが真ん中」の社会の実現に向けて、今までの概念を超えたことができそうですね。

「はぐくみ文化」が息づく京都

門川:「子どもは社会の宝」。京都では、昔からそんな考え方が息づいています。今日の会場「立誠ガーデン ヒューリック京都」は、日本で最初にできた「番組小学校」(学区制小学校)の一つ、元・立誠小学校。京都最大の危機とも言われる明治維新の混乱の中、「子どもさえ立派に育てば未来は明るい」と、地域の人達がお金を出し合って創設し、運営された学校です。
その精神は、現在の京都にも。例えば、京都の全ての小・中学校に、「学校運営協議会」があります。保護者や地域の人、大学の先生、学生さんなど、多くの方が学校運営に参画する。まさに「地域ぐるみの教育」の実践です。

つるの:京都すごいな。やはり日本の中心。長く深い歴史もあってすばらしい場所ですね。

門川:はい。京都では学校の統合に当たっては、地域・PTAの皆さんが子どものために真剣に議論し、教育委員会に提言されます。また、跡地の活用も必ず地域の人と相談して考えるのですが、この場所は、自治活動の場と、ホテルのほか飲食店や図書館、多様な活動に使えるホールなどの施設に生まれ変わりました。絵本の読み聞かせのほか、地域の方々が主体となった「生け花のワークショップ」も開催されています。子どもをしっかり育てる「はぐくみ文化」京都のモデルの一つです。

つるの:いいですね。

門川:そして、京都の大きな魅力である伝統文化を継承しようと、市立小学校では茶道、中学校では華道を全ての子どもたちが体験する時間も。教えてくれるのは、やはりそれぞれの地域にお住まいの専門家等の方々です。

つるの:日本には素晴らしい文化がたくさんあるのに、意外に子どもたちは知らない。だから、どんどん伝えたいですよね。まちには大工さんや商店街のお店屋さん、いろんな職業の方々がいて、子どもたちからすれば、みんなスキルを持つ「先生」。その先生たちから学ぶ職業体験を、地域でできたらめちゃくちゃ面白いんじゃないかと。

子育て世代も楽しく暮らせるまちづくり

つるの:僕は小学校時代、高槻に住んでいたので、父に連れられよく京都に来ていました。神社やお寺もたくさんあるし、来るたびにいいところだなぁと。このあいだ、6歳の末っ子と一緒に久々に太秦にある映画村へ。その後、京都の有名なラーメン屋さんで、父との思い出が詰まった「こってり」ラーメンを食べましたよ。

門川:わたしも「こってり」派です(笑)。和食のイメージが強い京都ですが、ラーメンも人気ですね。京料理からラーメンまであらゆるジャンルの食が楽しめるのも、京都の持つ重層性を象徴しています。

つるの:こってりな京都、最高です!(笑)

門川:今度、お子さんと来てもらいたいのが梅小路公園。平清盛の屋敷跡は、広々とした芝生公園に。また、蒸気機関車が走るJRの鉄道博物館や水族館、遊具いっぱいの広場もあります。さらに、夏はプール、冬場はスケートも楽しめますよ。園内にある庭園(朱雀の庭・いのちの森)にはカワセミも飛来、実に生物多様性に富んでいます。

つるの:めっちゃ、うらやましい! 僕を移住させようとしてます?(笑)

門川:京都の魅力に惹かれ、住みたいと言っていただける方も多いのですが、一方で土地や住宅が高くて…というお声も。そこで今、京都のそれぞれの地域特性を踏まえた都市計画の見直しに向けた取り組みを進めています。ほかにも、きちんと管理されている優良な中古マンションの認定制度や、趣ある路地に面した町家を再生する試みも動き始めています。

つるの:京町家を改装して、オフィスにしているIT企業もありますね。歴史が深くポテンシャルがすごい京都で、新しいモデルケースができれば、日本中が影響を受けると思います。

中古マンションを選びやすく!
管理が優良な中古マンションが若い世帯や子育て世帯の住宅取得の選択肢になるよう、適正に管理されたマンションに京都市が〝お墨付き〟を与える「分譲マンション管理計画認定制度」が2022年9月から始まります。

門川:ありがとうございます。京都では、民間の力もお借りしつつ、若い世代にも選ばれる、魅力あるまちづくりに力を注いでいます。子育てという大切な経験を公私に生かし発信を続ける、つるのさん。ぜひ、またお話を聞かせてください。本日はありがとうございました。

つるの:こちらこそ、今後ともよろしくお願いします。ますます楽しみな京都の挑戦に、期待しています!