(要旨)
裏寺通は約400年前に豊臣秀吉の京都都市改造として作られた寺町通との関わりにおいて誕生した。明治以降は,縦の河原町通・新京極通・寺町通,横の三条通・四条通といった京都を代表する繁華街の中に位置しながら,寺院の山門と土塀が連なるという独特の京都らしい雰囲気を醸し出してきた。蛸薬師通の河原町通から新京極通間は戦後繁華街として発展してきたが,最近は若者の町として特異な商店街を形成してきた。お寺と若者の町といった一見相容れない町が不思議な共存形態を示しているのが,裏寺蛸薬師界わいである。たまたま通りに足を踏み入れた人に「おもしろい所やな」,「こんな所にお寺と店が同居しているのも京都やな」と特異な情緒を与えてきた。
しかし,近年に至って,元ニチイビル(本件物件)の建設に始まる大規模商業ビルの建設により裏寺の風情が大きく損なわれ,風害,日照,駐輪,バイクの駐車等により長年培われてきた宗教環境や町並みが著しく傷付けられてきた。本年に入り,「元河原町ビブレビルを解体し集合住宅(マンション)を建設する」との話が株式会社日本エスコン社(物件所有者株式会社正龍アセットマネジメント)より提示された。またビル解体の準備として現況施設より都市ガスの撤去工事が昨年8月に施工され,最近は現存ビルの測量が頻繁に行われている。当地における集合住宅の建築は商業ビル以上に当地の宗教情操,商業環境を悪化させるような大きな変化がもたらされることが十分に想定される。
ついては,京都市においては,今後事業主に対して,裏寺通の特異性,特に他都市に見られない独特の宗教環境と商業施設が損なわれることがないように,十分な検討がされるよう指導することを強く願う。また,当地への集合住宅の建築に当たっては,地域住民,寺院,商店街等の地元の合意がないまま工事に着手しないように指導を求める。そして,現存のビル解体に当たっては,当地が職住一致の街であり年中無休で店舗経営がなされるとともに,ビル隣接地に居住する住民が相当数存在し,車両の通行についても当地特有の交通規制がなされている地域であるとの事情の中における解体工事であるため,地域住民や商店街・近隣寺院との合意に基づく工事がされるよう,強い指導を願う。
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