はじめに

 歩くまち・京都」の実現を目指す京都市では,この度,高齢者や身体に障害のある方などが,安全で快適に安心して移動できる交通環境を整えるため,JR稲荷駅,京阪伏見稲荷駅を中心とした稲荷地区を対象に「稲荷地区交通バリアフリー移動円滑化基本構想」を策定致しました。

 この構想は,平成12年11月に施行された「高齢者,身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」,いわゆる「交通バリアフリー法」や,平成14年10月に京都市独自の取組として策定した「京都市交通バリアフリー全体構想」に基づき,桂地区,山科地区,向島地区,烏丸地区,京都地区及び嵯峨嵐山地区に続いて策定したものであり,駅や駅周辺の道路などのバリアフリー化を重点的,一体的に推進していくための基本的事項を定めたものです。

 今後は,この構想に基づき,公共交通事業者や関係行政機関などと連携して,永年待ち望まれておりましたJR稲荷駅へのエレベーターの設置や京阪伏見稲荷駅改札前への緩勾配スロープの設置をはじめとする駅の改善,更には,駅と駅周辺の主要施設を結ぶ経路などのバリアフリー化を着実に推進し,安らぎと華やぎに満ちた,「だれもが活動しやすい,ふれあいと温もりのあるまち」を実現して参ります。

 結びに,稲荷地区交通バリアフリー移動円滑化基本構想策定連絡会議において熱心に御議論,御検討を重ねていただきました委員の皆様並びに貴重な御意見を賜りました多くの市民の皆様に心から御礼申し上げます。




 「バリアフリー化推進に係る基本理念と基本方針」について説明します。

 稲荷地区の基本構想の基本理念は,「だれもが活動しやすい,ふれあいと温もりのあるまち」です。

 基本方針は5つあり,

 1つ目は,「参拝者,住民,学生など,だれもが利用しやすい鉄道駅のバリアフリー化整備の推進」,

 2つ目は,「鉄道駅とその周辺の主要施設を結ぶ経路の重点的なバリアフリー化の推進」,

 3つ目は,「鉄道駅周辺の居住環境を含めた,地区全体での一体的なバリアフリー化の推進」,

 4つ目は,「利用者の意向を十分に反映させることのできる,一体的なバリアフリー化事業の推進体制の整備」,

 5つ目は,「「心のバリアフリー」・「情報のバリアフリー」の推進」です。



 次に,重点整備地区の区域の設定について説明します。

 「高齢者,身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(いわゆる「交通バリアフリー法」)では,1日当たりの利用者数が5,000人以上であるなどの条件を満たす特定旅客施設を中心として重点的・一体的にバリアフリー化を図るべき地区を「重点整備地区」に定めることと規定しており,その要件の1つとして,「特定旅客施設との間の移動が通常徒歩で行われ,かつ,相当数の高齢者,身体障害者等が日常生活又は社会生活において利用すると認められる官公庁施設,福祉施設及びその他の施設の所在地を含む地区であること。」と規定しています。

 このことを踏まえ,当地区の重点整備地区の区域を次のように設定しました。

 まず,JR稲荷駅及び京阪伏見稲荷駅を利用する高齢者や身体に障害のある方などが,旅客施設から目的地まで,安全で円滑に徒歩で移動できる,交通環境を整備することに重点を置き,これらの駅で電車から降りて徒歩で行くのが一般的であると考えられる駅周辺の施設のうち,多くの高齢者や身体に障害のある方などが,日常生活や社会生活において利用すると考えられる施設を抽出しました。

 次に,抽出した施設のうち,市民にとって特に重要な施設である久野病院や第二久野病院,高齢者や身体に障害のある方をはじめとする多くの方が訪れる伏見稲荷大社,稲荷地区の主要な商業施設であるライフ伏見深草店,そして多くの学生が学んでいる龍谷大学などを重要施設と捉え,これらを包括的に含む範囲を重点整備地区としました。

 区域の設定に当たっては,今後,基本構想を策定する予定となっている京阪藤森地区における重点整備地区の想定範囲も考慮しました。

 具体的な区域の線引きについては,道路や河川等によって明確に境界を定めました。




 特定経路と準特定経路の設定について説明します。

 交通バリアフリー法では,特定旅客施設と周辺の主要施設とを結ぶ経路のうち,特に重点的にバリアフリー化を図るべき経路を「特定経路」と位置付け,この特定経路を構成する道路において,道路特定事業と交通安全特定事業を実施するものとしています。

 しかし,稲荷地区の沿道の状況等を勘案すると,有効幅員が2m以上の歩道を確保するなどの移動円滑化基準に適合した整備を平成22年までに実施,完了することが可能な道路がなく,特定経路の設定が困難な状況となっています。そこで,主要な経路については「準特定経路」として位置付け,できる限り歩行空間の確保を行っていくこととしました。

 続いて,準特定経路の設定について具体的に説明します。

 準特定経路として4つの区間の道路を設定しました。

 準特定経路1は,JR稲荷駅と伏見稲荷大社及び久野病院・第二久野病院を結ぶ経路です。JR稲荷駅から本町通を北に進み,第二久野病院へと至る経路です。

 準特定経路2は,京阪伏見稲荷駅と準特定経路1及び3を結ぶ経路です。稲荷新道を本町通から西に進み,京阪伏見稲荷駅前を通り,師団街道に至る経路です。

 準特定経路3は,準特定経路2と準特定経路4及び龍谷大学を結ぶ経路です。師団街道を稲荷新道から南に進み,第一軍道を西に曲がり,龍谷大学正門へと至る経路です。

 準特定経路4は,準特定経路3と伏見工業高校を結ぶ経路です。稲荷新道を師団街道から西へと進み,伏見工業高校へと至る経路です。




 重点整備地区におけるバリアフリー化推進の流れについて説明します。

 まず,この移動円滑化基本構想に基づき,主要なバリアフリー化事業である「特定事業」を,具体的な事業計画を策定した後,平成22年を目標年次として,実施していきます。

 この特定事業は3つあります。

 1つ目は,鉄道事業者やバス事業者などの公共交通事業者が実施する「公共交通特定事業」であり,駅へのエレベーターの設置などを行う事業です。

 2つ目は,道路管理者が実施する「道路特定事業」で,旅客施設周辺の道路において段差や勾配の改善を行う事業です。

 3つ目は,京都府公安委員会が実施する「交通安全特定事業」で,旅客施設周辺の道路において,信号機への視覚障害者用付加装置,いわゆる音響装置の設置などを行う事業です。

 なお,特定事業以外の事業については,可能な限り平成22年までに完了させるよう努めるとともに,長期的な取組も進めていくこととしています。




 バリアフリー化事業計画の概要を順に説明します。

 まず,JR稲荷駅及び京阪伏見稲荷駅並びにバス車両のバリアフリー化事業計画の概要について説明します。

 駅の公共交通特定事業計画としては,JR西日本が,JR稲荷駅において,次の3項目を挙げています。1つ目は,駅出入口へのスロープの設置,2つ目は,エレベーター専用の跨線橋を新たに設置し,改札口から下りホーム及び跨線橋,上りホームから跨線橋を昇り降りできるエレベーターの設置,3つ目は,各ホームには電光式情報案内板の設置を挙げており,いずれも平成20年を目標年次としています。

 また,京阪電鉄が,京阪伏見稲荷駅において,次の5つを挙げています。1つ目は,駅出入口から改札口への緩い勾配のスロープ及び手すりの設置,2つ目は,既存の点字構内表示板への視覚障害者誘導用ブロックの設置,3つ目は,各ホームにある電光式列車運行情報案内板の改善,4つ目は,上りホームにおける多機能トイレの設置,5つ目は,各ホームの改札口における,車いす対応の幅広自動改札の設置を挙げており,いずれも平成20年を目標年次としています。

 駅の公共交通特定事業以外の事業計画としては,JR西日本が,JR稲荷駅において,次の5項目を挙げています。1つ目は,駅出入り口における視覚障害者誘導用ブロックの設置を挙げており,平成20年を目標年次としています。2つ目は,下りホームにおける視覚障害者誘導用ブロックの設置,3つ目は,既存の跨線橋の階段手すりの位置の改善,4つ目は,跨線橋の階段の手すりにある点字表示板の設置位置,表示内容の改善,そして5つ目に,多機能トイレの改善を挙げており,いずれも平成22年を目標年次としています。

 また,京阪電鉄が,京阪伏見稲荷駅において,次の3項目を挙げています。1つ目は,各ホームにおける視覚障害者誘導用ブロックの設置及び改善を挙げており,事業時期は未定ですが,できるだけ早く事業を実施できるよう検討を行います。2つ目は,上りホームにある既存トイレに下りる階段への2段手すりの設置の検討,3つ目は,車いす対応型券売機の導入の検討を挙げており,いずれも平成22年を目標年次としています。

 さらに,これら2つの駅の共通事項として,次の4項目を挙げています。1つ目は,より分かりやすい案内表示や緊急情報表示の検討,2つ目は,分かりやすい料金表や路線図の検討,3つ目は,様々な設備の改善の検討,4つ目は,各鉄道事業者における共通課題の検討を挙げており,いずれも事業時期は未定ですが,できるだけ早く事業を実施できるよう検討を行います。

 車両の公共交通特定事業計画としては,平成22年を目標年次として,京都市交通局が稲荷地区を運行する車両の約90%をノンステップバスなどの人にやさしいバスにします。

 次に,道路及び信号機などのバリアフリー化事業計画の概要について説明します。

 準特定経路においては,歩道の有効幅員の確保の検討を行うとともに,歩行者優先施策の検討や,段差,勾配の改善などを進めます。

 また,駅周辺に分布する公共・公益施設などへの歩行者の移動経路や駅周辺に居住する市民及び稲荷地区を訪れる観光客が安心,安全,快適に歩ける環境を確保する必要があることから,重点整備地区内のその他の道路について,バリアフリー化事業以外の施策を含め,できる限り一体的にバリアフリー化を図れるよう,歩道等のバリアフリー化の検討などを進めます。

 交通安全特定事業計画としては,京都府公安委員会が,すべての準特定経路において,違法駐車の指導・取締り及び広報・啓発を継続的に推進していきます。

 また,準特定経路3の第一軍道,龍谷大学正門前においては,平成22年を目標年次として,押しボタン式信号の設置検討を進めます。

 さらに,重点整備地区内の交差点において,信号機へ視覚障害者用付加装置,いわゆる音響装置の設置を,事業時期は未定ですが,できるだけ早く事業を実施できるよう,検討を進めます。

 ソフト施策の概要について説明します。

 バリアフリー化設備の整備に併せ,市民が高齢者や身体に障害のある方などに対する理解を深め,手助けなどの積極的な協力を行うことのできる環境を整備するため,市民,公共交通事業者及び行政機関などが互いに連携し,広報・啓発や教育・研修などのソフト施策を展開することにより,国民すべての責務である「心のバリアフリー」を推進していきます。

 また,バリアフリー化された施設が有効かつ適切に機能するようにするための,バリアフリー化設備に関する適切な情報提供や,駅や歩行経路における分かりやすい案内情報の提供や伝達方法の確保・充実などのソフト施策に取り組むことにより,「情報のバリアフリー」を推進していきます。




 バリアフリー化事業の推進体制について説明します。

 移動円滑化基本構想策定後,情報案内設備に関する検討と道路特定事業計画及び交通安全特定事業計画作成のための検討を行っていきます。

 道路特定事業計画及び交通安全特定事業計画は,平成18年度末を目途に策定し,計画案を「連絡会議」で報告します。

 公共交通特定事業計画は,稲荷地区基本構想策定後できる限り速やかに作成することとし,京阪伏見稲荷駅のスロープの改善等のバリアフリー化事業は平成18年度中に工事に着手します。一方,JR稲荷駅のバリアフリー化事業計画についても,駅のスペース上の課題などを解決するための検討を早期に行い,平成19年度中の着手を目指し取り組んで行きます。

 特定事業計画以外の事業については,可能な限り平成22年までに完了するよう努めるとともに,平成23年以降を含めた長期的な取組も進めていきます。

 この「連絡会議」を,移動円滑化基本構想策定後も,道路特定事業計画案及び交通安全特定事業計画案の取りまとめが完了した段階や,各バリアフリー化事業が一定の進捗を見た段階などにおいて適宜開催し,事業推進状況などについての検証を行います。

 京都市は,全市的なバリアフリー化事業の進捗状況に関する情報を収集し,年1回の更新を基本として,ホームページなどを通じて情報提供します。




 この案内は京都市都市計画局交通政策室が担当しています。

 ご意見は,はがき,電話,ファックス,電子メールにてお寄せください。

住所は,〒604-8571 京都市中京〔なかぎょう〕区寺町通〔てらまちどおり〕御池〔おいけ〕上〔あがる〕 上本能寺前町〔かみほんのうじまえちょう〕488番地です。
電話は,075-222-3483。ファックスは,075-213-1064です。
Eメールのアドレスは,[email protected]です。

 なお,「稲荷地区移動円滑化基本構想の「概要版」の点字版は,伏見区役所・深草支所,東山区役所及び京都ライトハウスに置いています。


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