信仰の地・六波羅 六道詣りと幽霊飴
毎年8月15日の盂蘭盆(うらぼん)では,先祖の精霊(しょうりょう)を迎えて供養が行われますが,京都では,その少し前の8月7日から10日の間に精霊を迎えるため,珍皇寺(ちんこうじ)などに参詣する精霊迎え(六道詣り)が行われます。
この間,珍皇寺は水塔婆を納め,迎え鐘をつき,高野槙(こうやまき)の葉を求めて精霊迎えする人で賑わいます。迎え鐘とは,境内にある銅鐘のことで,その音が冥土にまで届き,亡き人がこの響きに応じてこの世に呼び寄せられると信じられました。また,精霊は槙(まき)の葉に乗って冥土(めいど)から家に戻ってくるとされるため,これを持ち帰り,13日には仏壇に供えられます。
珍皇寺門前の飴屋(現在は六波羅蜜寺の北に移転)で売られる飴は六波羅の名物の一つです。この飴(あめ)は子育ての「幽霊飴」(ゆうれいあめ)と呼ばれ,次のような伝説があります。
赤ん坊を抱いた女が毎日三文(さんもん)の飴を買いにきた。不審に思った店の人が女のあとをつけていくと,鳥辺野墓地でその姿が消えた。この話を聞いた近くの寺の住職は,最近臨月で亡くなった女性の墓で念仏を唱えた。すると,土の中から赤ん坊の泣き声が聞こえた。掘り起こすと,飴をしゃぶる赤ん坊がいた。死してなお子を思う母の執念が,幽霊となって子を養ったのである。
同じような伝説は日本各地に伝えられ,その多くは名僧の誕生譚として伝えられています。
|