祇王祇女仏刀自旧跡 碑文の大意 |
祇王・祇女姉妹,それに仏御前の三人の白拍子はあいついで平清盛の寵愛を得た。祇王と祇女の母を刀自といった。この四人の女性はこの地に隠れ住み仏に仕えて一生を終えた。以上のことは人のよく知るところであり,また『平家物語』にも記されていることである。 祇王の俗世間から超然としていること,仏御前の知恵深いことは白拍子のような世界の人にしては,まことに珍しいことである。さらに華麗な歌声で人の心を教え導いたのことはさらに珍しいことである。 世の人は四人の女性が幸薄かったと残念に思っている。しかしよく考えると,その不幸をもって仏の道を表し世に名を残したわけである。俗に「命の薄きは一時,栄を顕わすは千載」ということではないだろうか。 四人の女性が没して六百年になろうとするが,その塚をお守りしている法専尼が追福の法事を修し,碑を墓のそばに建てることを計画し,わたし(筆者巌垣彦明)に文を依頼した。そこで碑文を執筆し,墓参りに来る人に示すものである。 |