仏頂尊勝陀羅尼碑MI024 |
ぶっちょうそんしょうだらにひ |
「仏頂尊勝陀羅尼」は厄災を除く呪文で,この碑の北面に放射状に配置されている梵字がそれである。その左右に幕末の画家冷泉為恭の手になる雲龍図が描かれている。 この陀羅尼は7世紀のインド僧仏陀波利によってインドから中国へもたらされ,さらに日本に渡来した。幕末の天台宗の高僧願海(1823〜73)はこの陀羅尼の普及に力を尽し,石碑にすることを発願し,この碑を嘉永6(1853)年,北野天満宮に建立した。その後,慶応4(1868)年に東寺に移された。現在,碑の台座となっている亀の像(亀趺)により「亀の石碑」として参詣者に親しまれているという。 この碑については景山春樹「北野神社の仏頂尊勝陀羅尼碑」(景山『神道美術の研究』1962年臨川書店刊)に詳細を載せる。ただし拓影のみで碑文は掲出していない。同論文には「碑文の終末に小さく「今井重宜謹刻」とあり,命をうけて碑を刻んだ石工の名を留めている」と記すが,現在の碑面にはその記はない。ただし,右下部が欠損しており,この部分に刻されていたとも考えられる。また同論文には移建碑文(西面下部)について「この碑もいま陀羅尼碑の傍らに建っている」と記し,独立した移建碑があったように記すが,現在は見当たらない。 なお仏頂尊勝陀羅尼の功徳を賞揚した碑は浅草寺(東京都台東区)境内にも元治元(1864)年に建立されている。 |
所在地 | 南区九条町(東寺内) |
位置座標 | 北緯34度58分52.8秒/東経135度44分48.1秒(世界測地系) |
建立年 | 嘉永6年 |
建立者 | 釈願海 |
寸 法 | 高188(除亀趺)×幅86×奥行39cm |
碑 文 | |
[北] | |
仏頂尊勝陀羅尼碑【題額】 | |
刻仏頂尊勝陀羅尼碑記 | |
在昔*賓国仏陀波利三蔵遠渉流沙到五台山至心願見文殊師利 | |
偶遇化人告曰漢土群生多造罪業又犯戒禁唯有仏頂尊勝陀羅尼 | |
能得消滅其罪垢也師取経来利益群生是報諸仏之恩也弟子当示 | |
文珠師利所在於是三蔵跋渉万里之山川倒向西域経歴八年之寒 | |
暑再来漢土于時唐高宗永淳二年也高宗請日照三蔵入内訳之為 | |
宗読至善住天子七日之後命数已尽七障蓄胎更入地獄種種定業 | |
受持此尊勝陀羅尼即能転之而得増寿身心安快往諸仏所得菩提 | |
記乃至安置此陀羅尼之幢日照而其影映身者風吹而其塵触身者 | |
此等群生悉破悪道之苦不受胞胎之身所生之処蓮華化生諸仏浄 | |
土随意遊入而到三菩提道場高宗深信此陀羅尼明験如此宝之惜 | |
之不出禁中仏陀波利三蔵悲泣奏曰貧道捐躯委命遠取経来情望 | |
普済群生救拔苦難請還経本流通世間高宗猶惜之纔還梵本三蔵 | |
於西明寺訪得善梵語僧順貞対諸大徳再訳布世三蔵之願至此方 | |
遂乃抱其梵本入五台山而不出矣後五年定覚寺僧志静親見日照 | |
三蔵諮受梵音勘校前後両本而行于世是為最後別翻即今乃尊勝 | |
陀羅尼也陀羅尼力之大而流通世間之難如是弘法大師済生之心 | |
之深手写此陀羅尼於輪円之中刻之一板安置東大寺二月堂々罹 | |
回禄之日此板儼存于灰中而辺背既焦矣彼寺秘惜不輙印出施人 | |
大師済生之心滞而不通河内高井田幼僧智満年十三傚大師之様 | |
模写一通園城寺法明院敬彦氏得之刻之普施諸人余願海頗小其 | |
字別刻一本又施諸人今茲嘉永六年癸丑回峰之行千日已満総計 | |
所施之数乃至七万餘人所受之人或忘病苦或遂心願種々明験不 | |
一而足願海猶憾印施之有限更写一本而刻石面乃建北野 | |
聖廟之下所願則日之所照風之所吹陀羅尼力無所不至与一切群 | |
生倶報諸仏之恩同超九界七方便辺域直到三藐三菩提道場益誉 | |
大恩教主釈迦牟尼之誠語行三世覚母文殊師利之慈諭懐三蔵之 | |
所辛苦傚大師之所施設也願海微意読者知之 | |
嘉永六年癸丑冬十月 | |
叡岳修行業大行満常楽院沙門願海遍照無障金剛 | |
謹識 | |
題額 天台座主尊融法親王 | |
漢字 東坊城前大納言聰長卿 | |
梵字 魚山普賢院前主宗淵法印 | |
雲竜図 蔵人所衆正六位下式部省大録菅原朝臣為恭 | |
[東] | |
幹事 | |
木村寿仙 | |
中村平七 | |
衣川儀助 | |
[西] | |
【上部銅板】 | |
仏 陀羅尼力 不可思議 | |
頂 無願不成 無事不遂 | |
尊 其力所加 国家整治 | |
陀 【円形の陀羅尼図】 是法之弘 真俗円備 | |
羅 尊勝福田 慈本可植 | |
尼 願及群生 同発仏地 | |
図 嘉永甲寅春 叡岳大行満願海 | |
【下部(△は梵字)】 | |
△△△△△△△△△△△△△△輪円△△塔碑 | |
一株先是嘉永癸丑建之北野聖廟今茲戊辰移建 | |
左大寺伏願顕密之教流通無滞四海静謐群情安 | |
快偕楽清時同入仏慧利益悠久尽未来際 | |
慶応四年四月 叡岳大行満沙門願海謹識 | |
碑文の大意 | ここをクリック |
調 査 | 2008年1月19日 |
備 考 | 碑文梵字部の写真はここ |
碑文中「*」字 |
位置図 | |