長明方丈石 碑文の大意
物の伝来することは非常に難しい。名器と呼ばれる道具に銘を記して遺すのは,持主の死後も世に伝えられ,自分の名を輝かすためである。それすら時には忘れさられることがあり,永く伝えられることは偶然のなせる業だと言ってよい。
蓮胤上人,すなわち鴨長明は世俗の交わりを絶ち山に隠れた人であるが,後世の人はその風雅を慕い,方丈の跡は文人墨客の来訪する所となった。これは長明が死後の名を求めたためではない。その人柄によるものである。