[監査]

○公表


監査公表第484号


京都市職員措置請求及び監査結果公表
 地方自治法第242条第4項の規定により,標記の請求に係る監査を行ったので,請求文及び請求人に対する監査結果の通知文を次のとおり公表します。
  平成15年6月10日
京都市監査委員 井上 與一郎
同    安孫子 和子
同    下薗 俊喜
同    奥谷 晟

 京都市職員措置請求書

京都市職員措置請求書
 京都市監査委員 殿
 請求の要旨
 京都市は,京都府と分担して(京都府6分の1,京都市6分の5),老人保険制度が1983年に開始されて以来,医療機関や調剤薬局に対し,レセプト1枚につき120円(01年度から一枚あたりの単価を引き下げ,02年度は一枚あたり40円とし,03年度からは全面廃止される予定)を手数料などと称して支払ってきた。
 しかし,この支払いには法律や条例の根拠がなく,違法な公金支出である。
 よって,違法な公金支出を行なった職員,あるいは違法な支払いを受けた医療機関や調剤薬局に対し,賠償あるいは返還請求を行なうなど,しかるべき対応を行なうよう求めるため,別紙事実証明書を添付の上,02年度分について住民監査を請求する。
2003年4月4日
監査請求人

住所 京都市西京区

氏名 鈴村 堯

住所 京都市伏見区

氏名 高橋 瞬作

注1 事実証明書の記載を省略した。

注2 平成15年4月15日付けで,次の内容が記載された補正書が提出された。なお,〈 〉内の記述は,補正の趣旨が明確になるよう,監査委員において補った。
(1) 02年度に京都市が医療機関及び調剤薬局に対して支払いを行なった事実は,既に提出済みの朝日新聞2002年11月26日付写しで「京都府と滋賀県も昨年度から単価を削減し,今年度はともに40円に。」「京都府は『府6分の1,市町村6分の5』・・・で負担した。」との記載から明らかであり,「証する書面」は上記新聞コピーで足る。
(2) 賠償あるいは返還請求を行なう者は,京都市長である。
(3) 標題「職員措置請求書」を「京都市職員措置請求書」に補正する。
(4) 請求の要旨中「老人保険制度」を「老人保健制度」に補正する。
(5) 〈「請求の要旨」の中の「01年度」は2001年度,「02年度」は2002年度,「03年度」は2003年度の意味でそれぞれ用いられているのか〉
 ご指摘のとおりである。
(6) 本件請求の根拠となる法令は地方自治法第242条である。


  請求人に対する監査結果通知文
監第52号
平成15年6月4日
 請求人各位
京都市監査委員 井上 與一郎
同    安孫子 和子
同    下薗 俊喜
同    奥谷 晟


京都市職員措置請求に係る監査の結果について(通知)
 平成15年4月4日付けで提出され,同月7日に収受した地方自治法(以下「法」という。)第242条第1項の規定に基づく京都市職員措置請求について,監査した結果を同条第4項の規定により通知します。
第1 請求の受理
 1 請求の要旨
 京都市(以下「市」という。)は,京都府(以下「府」という。)と分担して(府6分の1,市6分の5),老人保健制度(以下「老健制度」という。)が昭和58年に開始されて以来,医療機関や調剤薬局に対し,診療報酬明細書1枚につき120円(平成13年度から1枚当たりの単価を引き下げ,平成14年度は1枚当たり40円とし,平成15年度からは全面廃止される予定)を手数料などと称して支払ってきた。
 しかし,この支払いには法律や条例の根拠がなく,違法な公金支出である。
 よって,違法な公金支出を行った京都市長,或いは違法な支払いを受けた医療機関や調剤薬局に対し,賠償或いは返還請求を行うなど,しかるべき対応を行うよう求めるため,別紙事実証明書を添付のうえ,平成14年度分について住民監査を請求する。
 2 要件の審査
 本件請求は,老人保健法(以下「老健法」という。)に基づく老健制度が昭和58年に開始されて以来,市が医療機関,調剤薬局及び柔道整復師施術所(以下「医療機関等」という。)に対して支払っている老健制度のうち老人医療制度(以下「老健分医療制度」という。)に係る事務費(以下「老健分医療事務費」という。)の平成14年度分を対象としてなされたものである。
 経費支出決定書によれば,平成14年度(平成14年4月1日から平成15年3月31日まで。以下同じ。)において行われた支出決定は,次表に掲げるとおりである。
支出決定日対象支出決定日対象
平成14年4月30日平成14年
3月診療分
平成14年10月31日平成14年
9月診療分
平成14年5月31日
4月診療分
平成14年11月29日
10月診療分
平成14年6月28日
5月診療分
平成14年12月27日
11月診療分
平成14年7月31日
6月診療分
平成15年1月31日
12月診療分
平成14年8月30日
7月診療分
平成15年2月28日平成15年
1月診療分
平成14年9月30日
8月診療分
平成15年3月31日
2月診療分
 いずれも支出決定が行われた日から本件請求が行われるまで1年を経過しておらず,法第242条第2項本文に規定する要件を満たしているので,平成14年度に支出決定が行われた老健分医療事務費(12件)のすべてについて監査を実施する。
第2 監査の実施
 1 監査の期間中,保健福祉局関係職員に対し,関係書類の提出及び説明を求めた。
 2 平成15年5月6日,法第242条第6項の規定に基づき,請求人鈴村堯から陳述を受けた。
第3 監査の結果
 1 事実関係
(1) 高齢者を対象とした医療費の助成制度は,地方公共団体の独自の施策として発足したものが多く,府及び市においても,国に先駆け昭和45年に府が,昭和47年には市が制度を発足させている。
(2) その後,昭和47年6月に老人福祉法が改正され,昭和48年1月1日から,70歳以上で所得要件を満たす者について,医療保険制度(被用者を対象とする政府管掌健康保険や組合管掌健康保険等の被用者保険制度と自営業者等を対象とする国民健康保険制度をいう。以下同じ。)における自己負担分が支給されることとされた。これにより,高齢者に係る医療費は急速に増加することとなった。
 こうした状況を踏まえ,今後到来する高齢化社会に対応し,高齢者の医療費の財源を確保するため,昭和57年8月に,老健法が成立し,昭和58年2月1日から施行された。
(3) 老健制度は,「国民の老後における健康の保持と適切な医療の確保を図るため,疾病の予防,治療,機能訓練等の保健事業を総合的に実施し,もって国民保健の向上と老人福祉の増進を図る」(昭和57年9月10日 厚生省発衛第163号 老人保健法の施行について(依命通知))ことを目的とし,国,地方公共団体及び医療保険制度の保険者それぞれの責務を定め,疾病の予防や健康づくりを含む総合的な老人保健対策を推進するとともに,老人の医療費は国民皆が公平に負担するというものであり,老健分医療制度と医療以外の保健制度とによって構成されている。
(4) 老健分医療制度の対象者(以下「老健分医療受給対象者」という。)は,医療保険制度の被保険者で,次のいずれかに該当する者である。
 70歳以上の者(ただし,平成14年10月1日以降は75歳以上)
 65歳以上で一定の障害状態にある旨の市町村長の認定を受けた者
 市町村の区域内に居住地を有することを要件としているが,国籍要件は必要ではなく,本人又はその属する世帯の所得による制限もない。市における老健分医療受給対象者数は次表のとおりである。
区分老健分医療受給対象者
(平成14年3月31日現在)
70歳以上の者172,249人 
65〜69歳の障害認定者4,230人 
合計176,479人 
(5) 市においては,老健分医療制度のほかに,老人医療費支給制度を設け,65歳以上70歳未満の者(生活保護法による被保護者及び老健分医療受給対象者を除く。)で所得税非課税世帯の者及び老齢福祉年金受給限度額以下の者を対象に,老健分医療制度における一部負担金相当額の自己負担で医療を受けることができるように医療費を助成している。
 また,高齢者以外を対象としたものとして,重度心身障害者医療費支給制度,母子家庭等医療費支給制度及び乳幼児医療費支給制度といった医療費を助成する制度があり,これら4つの制度は,いずれも法律に基づく医療保険制度に,市が上乗せ施策として,条例に基づき実施している福祉医療制度(以下「福祉医療制度」という。)で,実施に当たり府から補助金(100分の45)の交付を受けている。
(6) 老健分医療事務費は,老健法が施行(昭和58年2月1日)されて以降,京都市長,京都府福祉保健医療事務費支払事務所長及び各社団法人会長(京都府医師会長,京都府歯科医師会長,京都府薬剤師会長,京都府柔道整復師会長)との三者間で締結された「覚書」(以下「覚書」という。)の規定に基づき,診療報酬明細書1枚当たり,平成12年度受診分までは120円,平成13年度受診分は80円,平成14年度受診分は40円が医療機関等に対し,京都府福祉保健医療事務費支払事務所(以下「支払事務所」という。)を通じて支払われていたが,平成15年度受診分から廃止された。
(7) 老健分医療事務費の支払についての流れは次のとおりである。
 診療又は調剤を行った医療機関等((7)において柔道整復師施術所を除く。)が,受診者の加入している医療保険の種類に応じ,京都府国民健康保険連合会(以下「国保連合会」という。)又は京都府社会保険診療報酬支払基金(以下「支払基金」という。)に診療報酬の請求を行う。
 診療報酬の請求を受けた国保連合会又は支払基金は,その取扱件数を支払事務所に報告する。
 取扱件数の報告を受けた支払事務所はその取扱件数に基づき,市町村に老健分医療事務費を毎月請求する。
 請求を受けた市町村は,老健分医療事務費を支払事務所に対し支払う。
 支払を受けた支払事務所は,医療機関等に対し支払う(ただし,歯科医療機関のうち,京都府歯科医師会員分は同歯科医師会に対し支払う。)。
 なお,柔道整復師施術所の場合は,社団法人京都府柔道整復師会(以下「整復師会」という。)を通じて市町村に対し施術料を請求し,請求を受けた市町村は支払事務所に対しその取扱件数の報告を行う。そして,市町村は支払事務所から老健分医療事務費の請求を受けて,支払事務所に対し支払いを行っている。その後,支払事務所は整復師会に対し老健分医療事務費の支払いを行っている。
(8) 平成14年度の老健分医療事務費については,当該月の診療分は翌月下旬に,支払事務所からの請求書に基づき,経費支出決定がされ,翌々月の15日前後に,支払事務所に対し,支払われている。
 なお,平成14年度に市が支払った老健分医療事務費は180,277,044円であった。
(9) 府は「老人保健医療事務費府補助金交付基準」に基づき,既に支払った老健分医療事務費のうち,6分の1相当額を補助金として市町村に交付しているため,市町村は年3回補助金の交付申請を行い,補助金の交付を受けている。
 市においては,平成14年度の支払総額180,277,044円に対する6分の1相当額として30,368,000円の補助金の交付を受けていた。
 2 保健福祉局関係職員の説明
(1) 老健分医療制度に関する事務については,診療報酬の審査及び支払に関する事務並びに医療費適正化対策といった事務があり,診療報酬の審査及び支払に関する事務については支払基金及び国保連合会に委託し,市は医療費適正化対策である診療報酬明細書の点検や医療費の被保険者への通知のほか広報,被保険者証の交付等を実施している。
(2) 老健分医療制度の円滑な運用に当たっては,市民への制度周知や制度の利用方法の教示,他の制度の紹介等の対応が必要であり,また診療等に際しては,対象者が高齢者であるため介助等の配慮が必要となるが,これらについては地域に密着した医療機関等の協力が欠かせないところである。
(3) 京都においては,老健分医療制度発足のころ,当該制度の対象となる65歳以上人口の構成比が全国平均より高い状況にあり,また地域医療を担う医療機関は人口10万人当たりの数こそ全国平均を上回っているものの,病床数は全国平均の半分以下であったことからもわかるように小規模の診療所が多いという事情があった。老健分医療制度の円滑な実施を図っていくためには,地域医療を担う小規模の診療所を含む医療機関を支援する必要があったことから,その協力に対し,府の補助制度に基づき,府内のすべての市町村が足並みを揃えて事務費を交付してきたものである。
 なお,一部の政令指定都市においても同様の事務費を交付していたが,既に廃止をしている。
(4) 今般,府は行財政改革に取り組む中で,医師会等の理解を得たうえで,老健分医療事務費について,市町村に対する補助を廃止することを決定し,具体的な事務処理を指示してきた。
 市としては,老健分医療事務費は府の制度を活用した府下市町村の統一した制度であり,府や府下市町村と連携を図る必要があること,厳しい財政状況にある市も,既存施策の優先順位を勘案するなどの見直しを進めていること及び老健分医療制度の開始当時はその必要性が高かったが,発足から20年余りが経過し,老健分医療制度が定着してきたことから,政策的判断として老健分医療事務費を廃止した。
(5) 老健分医療制度以外の福祉医療制度についてもこれを円滑に実施するため,同制度による受診分についても福祉保健医療事務費(以下「福祉保健医療事務費」という。)を支給している。これは,昭和48年に府が高齢者を対象とした医療費助成制度の現物給付化(医療保険制度における自己負担分を医療機関等の窓口で支払うことなく,医療が受けられるようにする。)に当たり,府が市町村を対象とした補助制度を設け,府内統一した制度として創設されたものであり,医療機関において府独自の医療費助成分を別途請求する事務負担が生じること,制度の普及啓発,受給者への利用方法の教示,他制度の紹介等の面で医療機関等の協力が不可欠であったことに配慮したものである。
(6) 市も,昭和49年2月から老人医療費支給制度を実施するに当たり,各社団法人と覚書を締結し,事務費の支払いを開始して今日に至ったもので,以降,重度心身障害者医療費支給制度(昭和58年2月開始),母子家庭等医療費支給制度(平成元年6月開始)及び乳幼児医療費支給制度(平成5年10月開始)についても,同様に取扱ってきたところであり,これらについては府から補助を受けている。
 なお,重度心身障害者医療費支給制度,母子家庭等医療費支給制度については府の制度創設時期と市の制度導入時期に8年から14年という相当な差が生じたことから,改めて制度普及に努める必要があり,普及事務費を加算している。
(7) このように,福祉保健医療事務費は,市独自の医療費支給制度の運用に当たり,[1]被用者保険分については診療報酬以外に福祉医療制度分の請求事務が必要であること,[2]市民への制度周知・普及啓発や受給者への制度の利用方法の教示,他制度の紹介等の対応について,地域に密着した医療機関等の協力を得る必要があることなどから,医療機関に対して事務費を支給してきたものであり,福祉医療制度と同様の制度を実施している他の政令指定都市においても,事務費や協力費等の形で補助が行われている。
 3 監査委員の判断及び結論
(1) 第232条の2は,「普通地方公共団体は,その公益上必要がある場合においては,寄附又は補助をすることができる」と規定しており,普通地方公共団体は公益上必要があると認めるときは,この規定を根拠として,補助を行うことができる。しかし,法第232条の2は,その内容を具体的に定めていないため,普通地方公共団体は,寄附又は補助を行おうとするときは,同条の規定の趣旨に従って,当該寄附又は補助を行うことが住民にもたらすであろう利益,程度等諸般の事情を勘案して,客観的に公益上必要であるかどうかを判断することとなる。そして,その判断に著しい不公正又は違法が伴わない限り,これは尊重されるべきものである。
 覚書に基づき支出されている老健分医療事務費も,普通地方公共団体である市が行う補助であるから,法第232条の2の規定に基づき,その趣旨に従って支出されなければならないものである。
(2) 老健分医療事務費は,老健分医療制度の対象となる高齢者が,医療機関等において円滑に受診又は調剤を受けることができるよう,医療機関等の十分な協力を得るために,京都市会の議決を経て,予算措置し,支出してきたものである。
 また,老健分医療事務費は,府の補助金交付制度に基づき,府内のすべての市町村が,各社団法人と覚書を締結して,その支給を行ってきたものであり,市においても老健分医療制度の円滑な実施のためには,他の市町村と異なった取扱いをすることは,困難であったと考えられる。
 更に,平成14年度の老健分医療事務費は諸般の状況を踏まえ,診療報酬明細書1枚当たり40円に改定されており,平成15年度受診分からは廃止されている。
(3) 以上のことから,平成14年度の老健分医療事務費の支出については,法第232条の2の規定の趣旨に照らして,その支出に当たり裁量権の逸脱又は濫用があったとは認められず,違法又は不当なものであるとするに足りる事由は認められなかった。
 よって,請求人の主張には理由がないので,本件請求は棄却する。


(監査事務局第一課)

このページのトップへ戻る



監査公表第485号

京都市職員措置請求及び監査結果公表
 地方自治法第242条第4項の規定により,標記の請求に係る監査を行ったので,請求文及び請求人に対する監査結果の通知文を次のとおり公表します。
  平成15年6月10日
京都市監査委員 井上 與一郎
同    安孫子 和子
同    下薗 俊喜
同    奥谷 晟

 京都市職員措置請求書

住民監査請求書
趣旨
 行政が誤って支出した公金を京都市に返還を求める件
 京都市内14箇所福祉事務所と,京都府下各福祉事務所も含めて,請求者と同様な例で,公金を無駄に支出疑惑件
経緯
 請求者は,平成7年9月19日,京都市伏見福祉事務所より,電動車椅子を交付受けました。平成12年4月伏見区深草支所福祉部保護課担当者は,介護保険制度発足以降も従来通り電動車補装具バッテリ,タイヤ等の修理交換は,無償で交付券を交付(コピー添付)しますと明確に発言した。当時は,電動車耐用年数言及に一切ありませんでした。平成14年9月28日,(交付券により)業者が交換したバッテリの性能鈍化の為(1ケ月入院)業者に苦情したら,同年12月14日バッテリを交換したら(交付券なし)同じく馬力鈍化の為,平成14年12月19日深草支所福祉部保護課長と担当に,苦情申込んだら,左記両氏は,請求者が使用中の電動車は,耐用年数5年が経過して,ガタガタになっている。侮辱的な発言と思った。今後一切バッテリタイヤ等の,修理券交付認めませんと明言して今后は,請求人が,個人の費用で,バッテリタイヤ等購入しなさいと進言あった。課長と担当は,平成12年9月19日以降平成14年9月28日までの,バッテリタイヤ等修理券の交付を認めたのは,行政の誤まちで交付したと認めこの間の公金支出は,387,252円は,請求人に,対し返還を求めないと明確に発言した。当然な結果である。(録音有り)業者は,請求人の苦情に基づき平成14年12月14日(交付券なし)交換したバッテリを同年12月17日業者会社に持ち帰り,検査器で検査結果欠陥品と認め同年12月20日交換したバッテリ今日まで100数拾日以上使用中です。深草支所福祉部長以下保護課長係長担当者は,障害者福祉関係法令通知集(一部コピー添付)の内容十分な把握を怠り,間違って公金を支出した。京都市財政難厳しい折柄行政を携わる公務員が誤った行政で支出した公金一金387,252円を,京都市へ返還するのが当然です。京都市内14箇所福祉事務所管内電動車椅子使用の障害者数えきれない。皆様の中には,請求者と同じく電動車のバッテリタイヤ等補装具の交付を受け,5年の耐用年数が経過しても現在まで,行政の誤ちで公金が支出されていると推測します。累計すれば疑惑で莫大な金額に達すると思います。又京都府下各管内福祉事務所も,共通に類似した例疑惑と推測します。添付支出関係個人情報コピーに,請求者電動車バッテリ,タイヤ等に支出された公金が,1年経過している分でも,特別な事情の監事対象に,該当致しませんでしようか。貴監査委にて,鋭意綿密に監査を下さること。御願い申し上げます。大局的と正義観念を考えた末の御願いです。
 以上 住民監査請求致します。
    平成15年4月7日
    請求者住所 京都市伏見区
          請求人
京都市監査委員 御中
追伸
 深草支所長寿社会課は,介護業者に電動車椅子全体は貸与(リース)通達有りと思いますが,業者はバッテリタイヤ等の補装具は貸与の対象にならないと言明しています。介護業者独断な判断と思います。請求者が使用中の電動車は,バッテリタイヤ等を,交換したらまだまだ1,2年は,充分に使用可能と思います。国策の一環で,資源を有効に活用することを奨励していると思います。請求者は電動車椅子を7年半以上利用した愛着心が残り廃品として,スクーラープにすること耐えがたい心情です。添付,貸与関係一部コピー理解困難です。
添付書類
 支出命令書,請求書,補装具交付修理申請書,障害者福祉関係法令通知集の一部,介護保険給付対象福祉用具の一部すべてのコピーです。

注1 本件請求の内容に照らし,請求人の氏名に係る記載については,「請求人」とした。

注2 業者の具体的な名称の部分は単に「業者」と記載した。

注3 本市職員の記載は職名等で行った。以下注5において同じ。

注4 事実証明書の記載を省略した。

注5 平成15年4月14日付けで次の内容が記載された補正文が提出された。
 なお,補正文のうち,請求人の職業に関する部分は,記載を省略した。
 特別な事情とは,平成14年12月18日,伏見区役所深草支所福祉部にて,保護課長,担当者両氏が,請求者の面前で,行政の誤ちで,支出してはいけない公金を支出したと,明確に話したので初めて知り得た事であり,特別な事情の監査対象に該当すると確信した。
 法242条第1項に規定する(証する事情)請求者が上記両氏との会話録音テープ提示する用意あり。貴監査委員より調査監査が妥当と考えられる。
 請求者に対して上記両氏は,誤った行政で支出した公金の返還は求めないと断言した。上記両氏は公金の無駄遣いと認めたと請求者は判断した。本件請求の根拠となる法令の解釈は,困難です。


請求人に対する監査結果通知文
監第53号
平成15年6月5日
請求人様
京都市監査委員 井上 與一郎
同    安孫子 和子
同    下薗 俊喜
同    奥谷 晟


京都市職員措置請求に係る監査の結果について(通知)
 平成15年4月7日付けで提出され,同月8日に収受した地方自治法(以下「法」という。)第242条第1項の規定に基づく京都市職員措置請求について,監査した結果を同条第4項の規定により通知します。
第1 請求の受理
 1 請求の要旨
 請求人は,平成7年9月19日に京都市伏見福祉事務所から補装具の交付を受けた。
 平成12年4月に,京都市深草福祉事務所(以下「深草福祉事務所」という。)福祉保護課支援係職員(以下「職員」という。)は,介護保険制度発足以降も従来どおり電動車いすのバッテリ,タイヤ等(以下「部品」という。)の修理,交換については,無償で,交付(修理)券(「以下「修理券」という。)を交付すると明確に発言した。当時は,電動車いすの耐用年数に一切言及はなかった。
 平成12年12月14日にバッテリを交換したが,性能が鈍化したので平成14年12月19日に深草福祉事務所福祉保護課長(以下「福祉保護課長」という。)と職員に苦情を申し入れたら,福祉保護課長と職員は,請求人が使用中の電動車いすは,耐用年数5年が経過して,ガタガタになっていると言った。侮辱的な発言と思った。今後一切,部品の修理券の交付は認めませんと明言して,今後は請求人が個人の費用で,部品を購入しなさいと進言があった。福祉保護課長と職員は,平成12年9月19日以降平成14年9月28日までの間に,部品に係る修理券の交付を認めたのは,行政の過ちで交付したと認め,この間の公金支出387,252円は,請求人に対し,返還を求めないと明確に発言した。当然な結果である。
 深草支所福祉部長(深草福祉事務所長)以下,福祉保護課長,支援係長,職員は,障害者福祉関係法令通知集の内容の十分な把握を怠り,間違って公金を支出した。京都市財政難厳しい折柄,行政を携わる公務員が誤った行政で支出した公金387,252円は,京都市へ返還するのが当然である。
 京都市内14箇所福祉事務所管内で電動車いすを使用している障害者は数えきれない。電動車いすを使用されている障害者の中には,請求人と同じく電動車いすの部品の交付を受け,5年の耐用年数が経過しても現在まで,行政の過ちで公金が支出されていると推測する。累計すれば,疑惑で莫大な金額に達すると思う。
 また京都府下各管内福祉事務所も,共通に類似した例,疑惑があると推測する。請求人の電動車いすの部品に支出された公金については,1年経過している分でも,特別な事情の監査対象に該当しないのか。監査委員にて,鋭意綿密に監査することをお願いする。大局的と正義観念を考えた末のお願いである。
 2 要件の審査
(1) 請求人は,本件請求の根拠とする条項を明示していないが,請求の内容から法第242条第1項の規定に基づく請求と判断する。
(2) 本件請求は,平成12年9月から平成14年9月までの2年間に行われた請求人が使用する電動車いすの修理に要した費用に係る経費支出を対象としてなされたものであり,請求の内容から,これらの経費支出決定(以下「支出決定」という。)に誤りがあることを理由としてなされたものと判断する。
 支出命令書又は経費支出決定書によれば,平成12年9月から平成14年9月までの2年間に行われた請求人が使用する電動車いすの修理に要した費用に係る支出決定は,平成12年12月14日,平成13年8月1日,平成13年12月3日,平成14年3月29日及び平成14年10月28日の各日に行われており,平成14年10月28日に支出決定が行われたものを除き,いずれも支出決定が行われた日から1年以上を経過して監査請求がされている。
 法第242条第2項は,「前項の規定による請求は,当該行為のあった日又は終わった日から1年を経過したときは,これをすることができない。ただし,正当な理由があるときは,この限りでない。」と規定しているが,請求人は,平成14年12月18日,福祉保護課長及び職員が,請求人に対し,行政の過ちで支出してはいけない公金を支出したと明確に話したので初めて知り得たのであるから,本件請求には正当な理由があるとして,法第242条第2項ただし書が適用されるべきである旨主張している。
 法第242条第2項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかについては,特段の事情のない限り,当該行為が秘密裡にされた場合には,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか,また当該行為を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきであり(最高裁昭和63年4月22日判決),また当該行為が秘密裡にされなかったとしても,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合には,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきであるとされている。そして,「相当な期間」については,特段の事情のない限り,66日であれば相当な期間内であり,84日であれば相当な期間を経過していると判断している(最高裁平成14年9月12日判決)。
 本件請求に係る支出決定は,請求人が使用する電動車いすの修理に係るものであるから,請求人が支出決定の存在を知り得なかったということはできない。しかし,請求人が本件支出決定が違法又は不当なものであるとして,監査請求をするに足りる程度にその内容を知ることは,平成12年4月の介護保険法施行後も引き続き修理券の交付を受けていたという事情を勘案すると,福祉保護課長及び職員から行政の過ちで支出してはいけない公金を支出した旨の説明を受けない限り困難であったというべきである。
 しかしながら,本件請求は,福祉保護課長及び職員が行政の過ちで支出してはいけない公金を支出したと明確に話したと請求人が主張する平成14年12月18日又は同月19日から110日以上を経過して行われている。
 したがって,本件請求は,監査請求をするに足りる程度にその内容を知ることができたと解されるときから相当な期間内にされたということはできないから,支出決定のあった日から1年を経過して監査請求を行ったことについて正当な理由があるとは認められず,法第242条第2項の規定に適合していないので,平成12年12月14日,平成13年8月1日,平成13年12月3日及び平成14年3月29日に支出決定された修理費用を対象とした部分については,これを却下する。
 また請求人が京都市内14箇所福祉事務所管内で請求人と同じ電動車いすを使用している障害者は数えきれない。請求人と同じ電動車いすを使用している障害者の中には,請求人と同じく電動車いすの部品の交付を受け,5年の耐用年数が経過しても現在まで,行政の過ちで公金が支出されていると推測すると述べていることについて,平成15年4月11日付けで事実を証する書面の提出を求めたが,その提出はなかった。したがって,この部分については法第242条第1項に規定する要件に適合していないので,却下する。
 さらに請求人は,京都府下各管内福祉事務所も,共通に類似した例,疑惑があると推測すると述べているが,法第242条第1項の規定に基づく監査請求の対象となるのは,当該地方公共団体の長,委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員の違法又は不当な財務会計行為及び一定の怠る事実である。
 したがって,京都市以外の普通地方公共団体の長,委員会若しくは委員又は京都市以外の普通地方公共団体の職員の違法又は不当な財務会計行為を対象とした部分は,法第242条第1項の規定に適合していないので,却下する。
 よって,平成14年9月に修理が行われ,平成14年10月28日に支出決定された,電動車いすの修理費用について監査を実施する。
第2 監査の実施
 1 監査の期間中,保健福祉局関係職員及び深草福祉事務所関係職員に対し,関係書類の提出及び説明を求めた。
 2 法第242条第6項の規定に基づき,請求人に対し証拠の提出及び陳述の機会を与えたところ,請求人から新たな証拠の提出及び陳述は行わない旨の内容を記した文書の提出があった。
第3 監査の結果
 1 事実関係
(1) 補装具は,身体障害者に対し,その者の職業その他日常生活の能率の向上を図ることを目的として身体障害者福祉法(以下「障害者福祉法」という。)の規定に基づき交付されるものであり,その交付及び修理は市町村が決定することとされているが,京都市(以下「市」という。)においては,当該事務は京都市身体障害者福祉法施行規則の規定により,福祉事務所長に委任されている。
(2) 補装具については,厚生省(現厚生労働省。以下同じ。)告示で補装具ごとに耐用年数が定められており,耐用年数の適用については,「耐用年数については,通常の装用状態において当該補装具が修理不能となるまでの予想年数が示されたものであり,交付を受けた者の作業の種類又は障害の状況等によっては,その実耐用年数には相当の長短が予想されるので,再交付の際には実情に沿うよう十分配慮すること」という通知(平成12年3月31日付け障第290号厚生省大臣官房障害保健福祉部長通知)が出されている。同通知は平成5年3月31日付け社援更第106号厚生省社会・援護局長通知(以下「旧通知」という。)に代わるものであり,上記耐用年数の適用についての考え方は,旧通知にも示されている。
(3) 市における補装具の耐用年数の適用についての考え方は,耐用年数を超えている場合は補装具を再交付するが,修理すれば使用できる場合は,使用者の同意を得て修理することとするというものであり,補装具給付事務取扱要領にその旨定められている。
(4) 平成12年4月1日から介護保険法が施行されたことにより,介護保険制度と障害者に対する施策との適用関係については,平成12年3月24日付け障企第16号・障障第8号厚生省大臣官房障害保健福祉部企画課長・障害福祉課長通知において「65歳以上の障害者が要介護又は要支援状態となった場合(中略)には,要介護又は要支援認定を受け,介護保険から介護保険法に定める保険給付を受けることができる。その際,障害者施策と介護保険とで共通する在宅介護サービスについては,介護保険から保険給付を受けることとなる」という原則が示され,補装具については,同通知において「介護保険で貸与される福祉用具としては,補装具と同様の品目(車いす,歩行器,歩行補助つえ)が含まれているところであり,それらの品目は介護保険の保険給付として給付されることとなる」としている。
 補装具に関しては,平成12年12月25日付け障企第64号厚生省大臣官房障害保健福祉部企画課長通知「介護保険による福祉用具の貸与と補装具給付制度との適用関係について」において,「既に所有している補装具の修理及び再交付については次のとおり取り扱うこと。[1] 当該補装具の交付を受けてから耐用年数が経過するまでの間は,補装具給付制度で修理を行うことができる。[2] 当該補装具が修理不能となったときは,補装具の交付を受けるときと同様の考え方とする。(以下略)」と,さらに具体的な取扱いが示されている。
(5) 市においては,平成12年3月24日付け厚生省大臣官房障害保健福祉部企画課長・障害福祉課長通知を受けて,平成12年3月27日付けで各福祉事務所福祉保護課長又は福祉課長あてに通知を出し,当該内容の周知を図っていた。さらに,「障害者福祉のしおり」というパンフレットにおいて市民に対しても介護保険制度と障害者に対する施策との適用関係について周知を図っていた。
(6) 請求人(介護保険から保険給付を受けることができる)が現在使用している電動車いすは,平成7年9月に交付を受けたもので,当該電動車いすの耐用年数は5年である。
 平成14年10月28日に支出決定された修理費用に係る請求人の電動車いすの修理は,平成14年9月18日付け申請に基づき,同月25日に修理を認めることが深草福祉事務所長により決定され,同日修理券が交付されており,同月27日に修理は完了していた。当該修理に要する費用の見積金額は83,260円であった。
(7) 上記(6)の修理に要した費用83,260円(見積金額と同額)は,平成14年10月28日付けで当該修理を行った業者から請求がされていた。
 当該修理に要した費用83,260円は,平成14年9月分の身体障害者補装具交付修理費の一部として,平成14年10月28日に保健福祉局福祉部長(障害者福祉法に基づく扶助費の支出に関する専決権限を有する)により支出決定され,同年11月29日に,京都市一般会計予算の正当な予算科目である(款)04保健福祉費,(項)04障害者福祉費,(目)03身体障害者福祉費,(節)20扶助費から支出されていた。
(8) 請求人は,平成14年12月18日に深草福祉事務所を訪問し,使用している電動車いすの修理を申し出た。
 深草福祉事務所の職員は,同日,電動車いすの主要部に係る修理であること,修理に要する費用が高額で新規交付に要する費用に匹敵する額であること,耐用年数をかなり経過していることから障害者福祉法に基づく修理は認められず,今後は,介護保険からの給付で,電動車いすの貸与を受けることになる旨説明をした。
(9) 請求人は,平成14年12月19日に,再度深草福祉事務所を訪問し,福祉保護課長の同席を求めたうえで,障害者福祉法に基づく修理を求めた。
 その際,請求人は,福祉保護課長及び職員が耐用年数を経過していることを理由に修理を認めないと言うのであれば,耐用年数は2年前に既に経過しており,平成14年9月に修理を認めたのはおかしい旨主張した。
 これに対し,福祉保護課長は,耐用年数を超えているにもかかわらず修理券の交付をしてきたことは誤った取り扱いであった。本来なら,返してもらうのが筋だが,誤った取り扱いであったのでそれまでは求めない旨の説明を行った。
 2 保健福祉局関係職員及び深草福祉事務所関係職員の説明
(1) 保健福祉局関係職員の説明
 障害者福祉法に基づき交付した補装具については,原則として耐用年数が経過するまでは修理を行うことにより使用してもらうこととしている。
 この耐用年数については,厚生省の通知に示されているとおり,その実耐用年数には相当の長短が予想されるものである。
 したがって,「補装具給付事務取扱要領」においては,補装具の状態が良好で,消耗部品の交換等の修理で当該補装具の基本性能が維持できる場合で,当該補装具の使用者本人も継続して使用することを希望している場合は修理で対応すると定めており,柔軟に対応している。
 しかし,本人が希望しても,安全性を確保することを優先する必要がある場合や修理費用が再交付に要する費用に匹敵するような場合は再交付することとしている。
 また,耐用年数を経過していない場合であっても,安全性の確保,修理費用,当該補装具を交付してからの経過年数,当該補装具の耐用年数,当該補装具の使用頻度を総合的に勘案して,修理又は再交付のいずれで対応するかの判断を行っている。
 修理又は再交付の判断を行うに際しては,必要に応じ,身体障害者更生相談所(市においては京都市身体障害者リハビリテーションセンターがその機能を担っている。)の判定又は意見を聞くこととしている。
 平成14年12月19日に福祉保護課長が請求人に対して行った説明は,耐用年数の取扱方針について保健福祉局福祉部障害福祉課(現保健福祉局保健福祉部障害保健福祉課。以下「障害福祉課」という。)に再確認することなく行なわれたものであり,適切なものではなく,また国及び市の取扱方針に沿ったものではなかった。
 これは,福祉事務所に対する障害福祉課の説明及び研修内容が不十分であり,福祉事務所において取扱方針が十分に理解されていなかったことによるものと考えている。
 今後,他の福祉事務所において,同様の事態が生じることがないようにするため,速やかに各福祉事務所に対して取扱方針を改めて通知するとともに,研修内容の充実を図っていく予定である。
(2) 深草福祉事務所関係職員の説明
 請求人から申請のあった修理については,これまでは消耗品の交換であったため,障害者福祉法に基づき修理で対応してきたが,平成14年12月18日に申し出のあった修理については,請求人が使用している電動車いすの主要部品に及ぶ大規模なものであり,修理費用の見積額も新規交付に要する費用を超えるものであったため,再交付が適当と判断した。そのうえで,請求人に対し,介護保険制度により電動車いすの貸与を受けるように,説明を行った。
 3 監査委員の判断及び結論
(1) 平成12年4月に介護保険制度が発足して以降,介護保険から保険給付を受けることができる身体障害者については,特段の事情がない限り,介護保険から保険給付を受けることとされたが,既に保有している補装具については,当該補装具の交付を受けてから耐用年数を経過するまでの間は,障害者福祉法に基づく修理を行うことができる旨,厚生省から通知が出されている。
(2) 一方,補装具の耐用年数については,通常の装用状態において当該補装具が修理不能となるまでの予想年数が示されたもので,その実耐用年数には相当の長短が予想される旨,厚生省から通知が出されており,もともと幅を持たせた運用を行うことが想定されている。
 市においても,従来,補装具の状態が良好であり,消耗部品の交換等の修理で当該補装具の基本性能が維持できる場合であって,当該補装具の使用者本人も継続して使用することを希望している場合は,修理で対応することを補装具給付事務取扱要領で定めており,幅を持たせた柔軟な運用を行ってきている。こうした運用は,厚生省の通知の趣旨にも沿ったものであり,また各福祉事務所にも周知されていた。
(3) 平成14年12月19日に福祉保護課長が請求人に対して行った説明は,介護保険から保険給付を受けることができる身体障害者の保有する補装具に係る取扱いを正確に理解したうえで行われたものではなく,結果として請求人に誤解を与えたものである。
 今後このような事態が生じることがないよう,各福祉事務所における周知,指導のあり方を見直すとともに,このような取扱いや方針については,各福祉事務所への確実な周知や研修内容の充実が強く望まれるところである。
(4) しかしながら,平成14年9月18日付け申請に基づき,同月25日に修理を認めることが決定され,同日修理券が交付されたことについては,上記(1)及び(2)のとおり,厚生省の通知及び市の補装具給付事務取扱要領に沿ったものであり,当該修理券により同月27日に完了した修理の費用として,平成14年10月28日に行われた支出決定は違法又は不当なものとは認められない。
 以上のとおり,請求人の主張には理由がないので,本件請求は棄却する。

(監査事務局第一課)

このページのトップへ戻る