(1) | 高齢者を対象とした医療費の助成制度は,地方公共団体の独自の施策として発足したものが多く,府及び市においても,国に先駆け昭和45年に府が,昭和47年には市が制度を発足させている。 |
(2) | その後,昭和47年6月に老人福祉法が改正され,昭和48年1月1日から,70歳以上で所得要件を満たす者について,医療保険制度(被用者を対象とする政府管掌健康保険や組合管掌健康保険等の被用者保険制度と自営業者等を対象とする国民健康保険制度をいう。以下同じ。)における自己負担分が支給されることとされた。これにより,高齢者に係る医療費は急速に増加することとなった。
こうした状況を踏まえ,今後到来する高齢化社会に対応し,高齢者の医療費の財源を確保するため,昭和57年8月に,老健法が成立し,昭和58年2月1日から施行された。 |
(3) | 老健制度は,「国民の老後における健康の保持と適切な医療の確保を図るため,疾病の予防,治療,機能訓練等の保健事業を総合的に実施し,もって国民保健の向上と老人福祉の増進を図る」(昭和57年9月10日 厚生省発衛第163号 老人保健法の施行について(依命通知))ことを目的とし,国,地方公共団体及び医療保険制度の保険者それぞれの責務を定め,疾病の予防や健康づくりを含む総合的な老人保健対策を推進するとともに,老人の医療費は国民皆が公平に負担するというものであり,老健分医療制度と医療以外の保健制度とによって構成されている。 |
(4) | 老健分医療制度の対象者(以下「老健分医療受給対象者」という。)は,医療保険制度の被保険者で,次のいずれかに該当する者である。
ア | 70歳以上の者(ただし,平成14年10月1日以降は75歳以上) |
イ | 65歳以上で一定の障害状態にある旨の市町村長の認定を受けた者 |
市町村の区域内に居住地を有することを要件としているが,国籍要件は必要ではなく,本人又はその属する世帯の所得による制限もない。市における老健分医療受給対象者数は次表のとおりである。
区分 | 老健分医療受給対象者 (平成14年3月31日現在) |
70歳以上の者 | 172,249人 |
65〜69歳の障害認定者 | 4,230人 |
合計 | 176,479人 |
|
|
(5) | 市においては,老健分医療制度のほかに,老人医療費支給制度を設け,65歳以上70歳未満の者(生活保護法による被保護者及び老健分医療受給対象者を除く。)で所得税非課税世帯の者及び老齢福祉年金受給限度額以下の者を対象に,老健分医療制度における一部負担金相当額の自己負担で医療を受けることができるように医療費を助成している。
また,高齢者以外を対象としたものとして,重度心身障害者医療費支給制度,母子家庭等医療費支給制度及び乳幼児医療費支給制度といった医療費を助成する制度があり,これら4つの制度は,いずれも法律に基づく医療保険制度に,市が上乗せ施策として,条例に基づき実施している福祉医療制度(以下「福祉医療制度」という。)で,実施に当たり府から補助金(100分の45)の交付を受けている。 |
(6) | 老健分医療事務費は,老健法が施行(昭和58年2月1日)されて以降,京都市長,京都府福祉保健医療事務費支払事務所長及び各社団法人会長(京都府医師会長,京都府歯科医師会長,京都府薬剤師会長,京都府柔道整復師会長)との三者間で締結された「覚書」(以下「覚書」という。)の規定に基づき,診療報酬明細書1枚当たり,平成12年度受診分までは120円,平成13年度受診分は80円,平成14年度受診分は40円が医療機関等に対し,京都府福祉保健医療事務費支払事務所(以下「支払事務所」という。)を通じて支払われていたが,平成15年度受診分から廃止された。 |
(7) | 老健分医療事務費の支払についての流れは次のとおりである。
ア | 診療又は調剤を行った医療機関等((7)において柔道整復師施術所を除く。)が,受診者の加入している医療保険の種類に応じ,京都府国民健康保険連合会(以下「国保連合会」という。)又は京都府社会保険診療報酬支払基金(以下「支払基金」という。)に診療報酬の請求を行う。 |
イ | 診療報酬の請求を受けた国保連合会又は支払基金は,その取扱件数を支払事務所に報告する。 |
ウ | 取扱件数の報告を受けた支払事務所はその取扱件数に基づき,市町村に老健分医療事務費を毎月請求する。 |
エ | 請求を受けた市町村は,老健分医療事務費を支払事務所に対し支払う。 |
オ | 支払を受けた支払事務所は,医療機関等に対し支払う(ただし,歯科医療機関のうち,京都府歯科医師会員分は同歯科医師会に対し支払う。)。 |
なお,柔道整復師施術所の場合は,社団法人京都府柔道整復師会(以下「整復師会」という。)を通じて市町村に対し施術料を請求し,請求を受けた市町村は支払事務所に対しその取扱件数の報告を行う。そして,市町村は支払事務所から老健分医療事務費の請求を受けて,支払事務所に対し支払いを行っている。その後,支払事務所は整復師会に対し老健分医療事務費の支払いを行っている。 |
(8) | 平成14年度の老健分医療事務費については,当該月の診療分は翌月下旬に,支払事務所からの請求書に基づき,経費支出決定がされ,翌々月の15日前後に,支払事務所に対し,支払われている。
なお,平成14年度に市が支払った老健分医療事務費は180,277,044円であった。 |
(9) | 府は「老人保健医療事務費府補助金交付基準」に基づき,既に支払った老健分医療事務費のうち,6分の1相当額を補助金として市町村に交付しているため,市町村は年3回補助金の交付申請を行い,補助金の交付を受けている。
市においては,平成14年度の支払総額180,277,044円に対する6分の1相当額として30,368,000円の補助金の交付を受けていた。 |