(1) | 市においては,昭和26年のオールロマンス事件を契機として,昭和27年に策定された「今後における同和施策運営要綱」(以下「運営要綱」という。)により,同和問題の解決が市政の最重点課題の一つに位置付けられ,同和地区の住環境と同和地区住民の生活実態の改善に本格的に取り組まれるようになった。 |
(2) | 教育対策は,昭和27年度に特別就学奨励費を計上して,長期欠席,不就学対策を制度化し,昭和29年度には全市の同和地区において補習教育を実施することとするなど,充実が図られてきた。 |
(3) | 昭和36年度には,当時の民生局の事業として,経済的な理由により高等学校への就学が困難な現状にあることを踏まえ「京都市同和就学奨励資金給付」(以下「奨励資金給付」という。)制度が設けられ,昭和38年度には,就学を奨励するため,高等学校以上の学校に在学するものを対象にした「京都市同和奨学資金給付」(以下「奨学資金給付」という。)制度が設けられた(これに伴い奨励資金給付は廃止された。)。 |
(4) | 昭和38年度には同和教育方針が策定され,「同和地区児童生徒の「学力向上」を至上目標とした実践活動を推進する」ことを最重要課題として,学力向上対策,進路保障対策,保健管理対策の3分野から総合的に取組が始められ,進路保障対策として,奨学金,各種支度金の支給が行われてきた。 |
(5) | 昭和41年度からは高等学校又は高等専門学校(以下「高校等」という。)に在学する者(以下「高校生等」という。)に対する奨学資金給付が国庫補助の対象となり,昭和49年度からは大学(短期大学を含む。以下同じ。)に在学する者(以下「大学生」という。)に対する奨学資金給付についても国庫補助の対象となった。
昭和57年度には,高校生等を対象とする奨学資金給付制度を「京都市地域改善対策奨学資金」に,大学生を対象とする奨学資金給付制度を「京都市地域改善対策大学奨学金」(以下「大学奨学金」という。)にそれぞれ名称を変更した。
また,国が昭和57年10月から,昭和57年4月1日以降に入学した大学生を対象とした奨学金に係る国庫補助の対象を,給付制度から貸与制度に変更したことに伴い,市においても昭和58年度から「京都市地域改善対策奨学金」(以下「市奨学金」という。)制度を設け,貸与制度(返還期間20年以内)とし,昭和58年4月1日現在,大学1,2年生として在学している者からこの制度の対象とした。 |
(6) | 援助金は,同和問題の解決を図ることを目的として,市内の同和地区に居住する同和関係者の子弟の自立を促進するため,「京都市地域改善対策奨学金貸与規則」の規定による市奨学金の貸与を受けた者のうち,その属する世帯の所得,就労等の生活実態から貸与を受けた市奨学金を返還することが困難であると市長が認めた者に対し,支給要綱に基づき支給されるものであり,昭和59年4月1日に設けられた。 |
(7) | 法第232条の2には,「普通地方公共団体は,その公益上必要がある場合においては,寄附又は補助をすることができる」と規定されており,援助金は同条に規定する補助に該当する。 |
(8) | 昭和62年度からは,最終の特別法である地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(以下「地対財特法」という。)及び同法施行令が施行された。
これに伴い,昭和62年4月1日以降に入学した高校生等を対象とした奨学金に係る国庫補助の対象は,昭和62年10月から,給付制度から貸与制度に変更され,市においても昭和63年1月に昭和62年4月にそ及して貸与制度に変更するとともに,大学生を対象とする市奨学金制度と統合した。
また,国庫補助の対象となっている奨学金について,貸与の対象者に係る収入基準が導入されたことに伴い,これまでと同様に高校等又は大学に進学しようとする者を引き続き支援するため,同時期に「京都市地域改善対策就学奨励金」(以下「就学奨励金」という。)制度が設けられ,昭和62年4月1日以降に入学した者から貸与の対象とされた。 |
(9) | 昭和63年3月31日に支給要綱の改正が行われ,就学奨励金の貸与を受けた者も援助金の支給の対象とすることができるようにされた。 |
(10) | 平成5年7月,市は広く同和施策全般にわたって見直しを行い,「今後の本市における同和対策事業のあり方について(具体的内容)」(以下「あり方」という。)を発表し,主として地対財特法の期限内における取り組むべき方向を示した。このあり方に基づき,平成7年度に就学奨励金制度にも所得基準が導入された。 |
(11) | 平成8年11月に京都市同和問題懇談会から提出された「今後における京都市同和行政の在り方について」の意見具申(以下「市同懇意見具申」という。)においては,就学奨励事業についても一般施策への移行を基本とすべきであるとしながらも,「高校,大学の奨学金に関しては,(中略)大学進学率の格差などに見られるように,同和地区の子供たちの進路実態になお課題がある」として,「直ちに一般施策へ移行することは難しいと考える」としている。
また,平成14年1月に市が同和問題の早期解決に向けた平成14年度以降の取組の在り方をまとめた「特別施策としての同和対策事業の終結とその後の取組」(以下「終結とその後の取組」という。)は,「同和行政の成果」として,教育及び就労に関し,高校進学率は全市とほぼ格差のない状況となり,大学進学率についても大きく向上したこと,こうした教育保障施策の成果等により,住民の就労状況は,若年層を中心に幅広い分野への進出が見られるようになってきたと述べるとともに,教育に関する残された課題として「過去のおしなべて低位な実態が大きく改善されてきたとはいうものの,(中略)高校進学の内容,高校中退率及び大学進学率の格差などの課題が残されています。更には,ひとり親家庭,経済的支援を受けざるを得ない家庭等,厳しい状況に置かれている家庭もあり,児童,生徒の教育に大きく影響しています」と述べている。 |
(12) | 援助金は,援助金の支給を受ける者がその年度に返還すべき市奨学金又は就学奨励金(以下「奨学金等」という。)の額の範囲内において市長が定める金額が年1回支給されている。 |
(13) | 平成13年度に支出された援助金は2,469人分183,103,695円で,平成14年3月18日に支出決定が行われ,同年3月29日に,京都市一般会計予算の正当な予算科目である(款)03文化市民費,(項)04人権文化費,(目)03同和対策費,(節)19負担金補助及び交付金から支出されていた。
なお,183,103,695円の内訳は,高校生等を対象とする奨学金等の貸与を受けた者に対するもの1,761人分95,916,700円,大学生を対象とする奨学金等の貸与を受けた者に対するもの708人分87,186,995円であった。この金額は当該年度に返還すべき奨学金等の額と同額であった。
平成13年度の支給対象者は,昭和63年3月から平成13年3月までの間に奨学金等の支給の対象となる学校を卒業又は退学した者である。 |
(14) | 支給要綱第2条に規定する「その属する世帯の所得,就労等の生活実態から貸与を受けた奨学金等を返還することが困難であると市長が認める」具体的な基準は定められておらず,また支給の決定に際し,援助金の支給の申請をした者(以下「支給申請者」という。)の属する世帯の所得状況や就労の状況を証する書類(以下「所得証明等」という。)は徴収されていなかった。 |
(15) | 平成14年3月31日をもって,地対財特法の期限が到来し,市奨学金は廃止されたが,教育に関してはなお残された課題があるとの認識に基づき,就学奨励金については,所得基準,貸与金額を見直したうえで経過措置として平成14年度から5年間継続され,援助金についても継続されることとなった。 |
(16) | 昭和57年3月以降の高校進学率(同和地区中学校卒業生の進路率。高等専門学校へ進学した者を含む。以下同じ。)及び大学進学率(高等学校卒業生奨学金等受給者の進路決定状況。短期大学へ進学した者を含む。以下同じ。)は次表のとおりである。 |