第1章 総則 |
(目的) |
第 | 1条 この条例は,長い歴史を通じてはぐくまれてきた本市の伝統的な建築物及びこれにより形成されている歴史的な町並みの景観が,市民にとって貴重な文化的資産であることにかんがみ,伝統的な建築物の意匠及び構造並びに建築物の構造及び設備に関する防火上の措置に関し必要な事項を定めることにより,安全な都市環境を確保するとともに,本市の伝統的な建築物及びこれにより形成されている歴史的な町並みの景観を保全し,及びこれらを将来の世代に継承することを目的とする。 |
(定義) |
第 | 2条 この条例において使用する用語は,次項に定めるもののほか,建築基準法(以下「法」という。)及び建築基準法施行令において使用する用語の例による。 |
2 | この条例において「建築等」とは,建築,大規模の修繕又は大規模の模様替えをいう。 |
第2章 伝統的景観保全地区 |
(伝統的景観保全地区の指定) |
第 | 3条 市長は,伝統的な建築物及びこれにより形成されている歴史的な町並みの景観を保全し,及び継承する必要がある地域で,都市計画の変更により防火地域又は準防火地域でなくなったものを伝統的景観保全地区として指定することができる。 |
(公聴会の開催等) |
第 | 4条 市長は,伝統的景観保全地区を指定しようとする場合において必要があると認めるときは,公聴会の開催等住民の意見を反映させるために必要な措置を講じるものとする。 |
(伝統的景観保全地区の指定の案の縦覧等) |
第 | 5条 市長は,伝統的景観保全地区を指定しようとするときは,あらかじめ,別に定めるところにより,その旨を公告し,当該伝統的景観保全地区の指定の案を,当該公告の日から2週間公衆の縦覧に供しなければならない。 |
2 | 前項の規定による公告があったときは,指定しようとする伝統的景観保全地区の住民及び当該指定に利害関係を有する者は,同項の縦覧期間満了の日までに,縦覧に供された伝統的景観保全地区の指定の案について,市長に意見書を提出することができる。 |
(審議会の承認) |
第 | 6条 市長は,前条第1項の縦覧期間満了後,伝統的景観保全地区の指定について,同条第2項の規定により提出された意見書の要旨を付して,京都市都市計画審議会の承認を得なければならない。 |
(伝統的景観保全地区の指定の告示) |
第 | 7条 市長は,伝統的景観保全地区を指定したときは,これを告示しなければならない。 |
2 | 伝統的景観保全地区の指定は,前項の規定による告示によってその効力を生じる。 |
(準用) |
第 | 8条 第4条から前条までの規定は,伝統的景観保全地区の変更及び廃止について準用する。 |
第3章 伝統的な建築物の認定 |
(認定) |
第 | 9条 伝統的景観保全地区内において建築物の建築等をしようとする者のうち,当該建築物について第13条第1項の基準の適用を受けようとするものは,別に定めるところにより,当該建築物がその主要構造部を木造とした伝統的な建築物又はこれに準じるもので,歴史的な町並みの景観の形成に資するものである旨の市長の認定を受けなければならない。当該認定を受けた建築物の計画の変更(別に定める軽微な変更を除く。)をしようとする者のうち,同項の基準の適用を受けようとするものも,同様とする。 |
2 | 市長は,前項の規定による認定の申請があった場合において,当該申請に係る建築物が別に定める基準に適合していると認めるときは,同項の規定による認定をしなければならない。 |
3 | 市長は,伝統的な建築物及びこれにより形成されている歴史的な町並みの景観を保全し,及び継承するために必要があると認めるときは,第1項の規定による認定に条件を付することができる。 |
第4章 伝統的景観保全地区内における建築物に関する制限 |
第1節 建築物の建築等の承認等 |
(建築等の承認等) |
第 | 10条 伝統的景観保全地区内において建築物の建築等(法第6条第1項,第6条の2第1項又は第18条第3項の規定による確認を受けるものを除く。以下この項並びに第12条第1項及び第6項において同じ。)をしようとする者は,当該建築等の工事に着手する前に,別に定めるところにより,当該建築物が第13条第1項又は第14条第1項の基準(第13条第2項(第14条第2項において準用する場合を含む。)の規定により付加された制限を含む。以下同じ。)に適合していることの市長の承認を受けなければならない。当該承認を受けた建築物の計画の変更(別に定める軽微な変更を除く。)をしようとする者も,同様とする。 |
2 | 前項の規定による承認に係る工事は,当該承認を受けた後でなければ,これを施工してはならない。 |
3 | 前条第1項の規定による認定を受けた建築物(以下「認定建築物」という。)の建築等(法第6条の2第1項の規定による確認を受けるものに限る。以下この項において同じ。)をしようとする者は,当該建築等の工事に着手する前に,別に定めるところにより,その旨を市長に届け出なければならない。 |
第2節 建築物に関する検査 |
(中間検査) |
第 | 11条 市長は,認定建築物の建築等及び認定建築物以外の伝統的景観保全地区内の建築物の建築等(法第7条の3第2項,第7条の4第1項又は第18条第9項の検査を受けるものを除く。)の工事の内容に応じ,当該工事の工程のうち当該工事の施工中に第13条第1項又は第14条第1項の基準に適合しているかどうかを検査することが必要なものを指定するものとする。 |
2 | 建築主は,前項の規定により指定された工程に係る工事を終えたときは,その日から4日以内に市長に到達するように,別に定めるところにより,市長の検査を申請しなければならない。ただし,申請をしなかったことについて別に定めるやむを得ない理由があるときは,この限りでない。 |
3 | 前項ただし書の場合における検査の申請は,その理由がやんだ日から4日以内に市長に到達するようにしなければならない。 |
4 | 市長は,第2項の規定による申請があったときは,当該申請を受け付けた日から4日以内に,当該申請に係る建築等の工事中の建築物がこの条例の規定に適合しているかどうかを検査しなければならない。 |
5 | 市長は,前項の規定による検査をした場合において,建築等の工事中の建築物がこの条例の規定に適合していると認めたときは,別に定めるところにより,当該建築物の建築主に対して中間検査合格証を交付しなければならない。 |
6 | 第1項の規定により指定した工程後の工程に係る工事は,前項の規定による中間検査合格証の交付を受けた後でなければ,これを施工してはならない。 |
(完了検査) |
第 | 12条 建築主は,第10条第1項の規定による承認に係る建築物の建築等の工事を完了したときは,別に定めるところにより,市長の検査を申請しなければならない。 |
2 | 前項の規定による申請は,同項の工事が完了した日から4日以内に市長に到達するようにしなければならない。ただし,申請をしなかったことについて別に定めるやむを得ない理由があるときは,この限りでない。 |
3 | 前項ただし書の場合における検査の申請は,その理由がやんだ日から4日以内に市長に到達するようにしなければならない。 |
4 | 市長は,第1項の規定による申請があったときは,当該申請を受け付けた日から7日以内に,当該申請に係る建築物がこの条例の規定に適合しているかどうかを検査しなければならない。 |
5 | 市長は,前項の規定による検査をした場合において,同項の建築物がこの条例の規定に適合していることを認めたときは,別に定めるところにより,当該建築物の建築主に対して検査済証を交付しなければならない。 |
6 | 建築等に係る建築物の建築主は,前項の規定による検査済証の交付を受けた後でなければ,当該建築物を使用し,又は使用させてはならない。 |
第3節 建築物の構造及び設備に関する基準 |
(認定建築物の構造及び設備) |
第 | 13条 認定建築物は,法第40条の規定に基づく次の各号に掲げる基準に適合するものでなければならない。
(1) | 外壁のうち,前面道路に面する部分その他市長が歴史的な町並みの景観を保全するために必要と認める部分(地階を除く階数が2以下の建築物で延焼のおそれのある部分以外の部分を除く。)を,裏返し塗りをした土塗真壁又はこれと同等以上の防火性能を有するもの(市長が歴史的な町並みの景観の保全に支障がないと認めるものに限る。)とすること。 |
(2) | 外壁のうち,前号の部分以外の部分(地階を除く階数が2以下の建築物で延焼のおそれのある部分以外の部分を除く。)を,法第62条第2項の規定に適合するものとすること。 |
(3) | 軒裏を化粧板張りにする場合において,軒に延焼のおそれのある部分が含まれるときは,当該化粧板の裏側に不燃材料で下張りをすること。この場合において,面戸の部分が屋外に面するときは,当該面戸の部分を不燃材料又はこれと同等以上の防火性能を有するもので閉鎖するとともに,野地板のうち,面戸の位置から屋内の方向に水平距離が90センチメートルの範囲内にある部分の全部に不燃材料で下張りをするものとする。 |
(4) | 前面道路に面する外壁の開口部その他市長が歴史的な町並みの景観を保全するために必要と認める外壁の開口部で,延焼のおそれのある部分には,網入りガラス又はこれと同等以上の遮炎性能を有する建築材料を用いた戸を設けること。 |
(5) | 前号の外壁の開口部以外の外壁の開口部で,延焼のおそれのある部分には,法第64条に規定する防火戸を設けること。 |
(6) | 各居室の壁(床面からの高さが1.2メートル以下の部分を除く。)及び天井(天井のない場合には,直上階の床又は屋根とする。以下同じ。)の室内に面する部分の仕上げを難燃材料ですること。 |
(7) | 地階を除く階数が3で,3階に居室を有する建築物については,前号に定めるもののほか,当該居室から屋外への出口に通じる主たる廊下,階段その他の通路の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料ですること。 |
(8) | 台所及び階段室の天井又は壁の室内に面する部分に,火災の発生を自動的に感知し,及び警報を発する設備で,別に定めるものを設置すること。 |
|
2 | 市長は,前項の基準によっては建築物の防火の目的を充分に達し難いと認めるときは,認定建築物の構造及び設備に関して防火上必要な制限を付加することができる。 |
(認定建築物以外の建築物の構造及び設備) |
第 | 14条 認定建築物以外の伝統的景観保全地区内の建築物は,法第40条の規定に基づく次の各号に掲げる基準に適合するものでなければならない。
(1) | 次に掲げる区分に応じ,それぞれ次に掲げる基準の例によること。
ア | 建築物が,第3条の規定による伝統的景観保全地区の指定前に防火地域に指定されていた区域内にある場合 法に規定する防火地域の基準 |
イ | 建築物が,第3条の規定による伝統的景観保全地区の指定前に準防火地域に指定されていた区域内にある場合 法に規定する準防火地域の基準 |
ウ | 建築物が,第3条の規定による伝統的景観保全地区の指定前に防火地域又は準防火地域に指定されていた区域とこれらの地域として指定されていなかった区域にわたる場合 法第67条第1項の規定による基準 |
エ | 建築物が,第3条の規定による伝統的景観保全地区の指定前に防火地域に指定されていた区域及び準防火地域に指定されていた区域にわたる場合 法第67条第2項の規定による基準 |
|
(2) | 台所及び階段室の天井又は壁の室内に面する部分に,火災の発生を自動的に感知し,及び警報を発する設備で,別に定めるものを設置すること。 |
|
2 | 前条第2項の規定は,前項の基準について準用する。 |
第5章 雑則 |
(適用除外) |
第 | 15条 第3条の規定による伝統的景観保全地区の指定がなされた際現に存する建築物又は現に建築等の工事中の建築物がこの条例の規定に適合せず,又はこの条例の規定に適合しない部分を有する場合においては,当該建築物又は当該建築物の部分に対しては,当該規定は,適用しない。 |
2 | 前項の規定は,工事の着手が第3条の規定による伝統的景観保全地区の指定の後である増築,改築,大規模の修繕若しくは大規模の模様替えに係る建築物又は当該建築物の部分のうち,当該工事に係る部分に対しては,適用しない。 |
(監督処分) |
第 | 16条 市長は,次の各号の一に該当する者に対し,工事の停止を命じ,又は相当の期限を定めて,建築物の外観の変更,除却,移転,改築,増築,修繕,模様替え,使用禁止,使用制限その他違反を是正するために必要な措置を採ることを命じることができる。
(1) | この条例の規定又はこれに基づく認定若しくは承認に違反した当該建築物の建築主,当該建築物に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含む。以下同じ。)若しくは現場管理者又は当該建築物若しくはその敷地の所有者,管理者若しくは占有者 |
(2) | この条例による認定に付された条件に違反した当該建築物の建築主,当該建築物に関する工事の請負人若しくは現場管理者又は当該建築物若しくはその敷地の所有者,管理者若しくは占有者 |
|
2 | 市長は,この条例の規定若しくはこれに基づく認定若しくは承認又は当該認定に付された条件に違反することが明らかな建築,修繕又は模様替えの工事中の建築物については,緊急の必要があって京都市行政手続条例第14条第1項に規定する意見陳述のための手続を取ることができない場合に限り,当該手続によらないで,当該建築物の建築主又は当該工事の請負人若しくは現場管理者に対し,当該工事の停止を命じることができる。この場合において,これらの者が当該工事の現場にいないときは,当該工事に従事する者に対し,当該工事に係る作業の停止を命じることができる。 |
3 | 市長は,前2項の規定による処分をしたときは,標識の設置その他別に定める方法により,その旨を公示しなければならない。 |
4 | 前項の標識は,第1項又は第2項の規定による処分に係る建築物の敷地内に設置することができる。この場合においては,当該建築物又はその敷地の所有者,管理者又は占有者は,当該標識の設置を拒み,又は妨げてはならない。 |
(違反建築物の設計者等に対する措置) |
第 | 17条 市長は,前条第1項又は第2項の規定による命令をした場合においては,別に定めるところにより,当該命令に係る建築物の設計者,工事監理者若しくは工事の請負人又は当該建築物についての宅地建物取引業に係る取引をした宅地建物取引業者の氏名又は名称及び住所その他別に定める事項を,建築士法,建設業法又は宅地建物取引業法の定めるところによりこれらの者を監督する国土交通大臣又は都道府県知事に通知しなければならない。 |
(報告又は資料の提出) |
第 | 18条 市長は,この条例の施行に必要な限度において,伝統的景観保全地区内の建築物の建築主,設計者,工事監理者若しくは工事施工者又は建築物若しくはその敷地の所有者,管理者若しくは占有者に対し,建築物の敷地,構造若しくは建築設備又は建築物に関する工事の計画若しくは施行の状況その他必要な事項について報告又は資料の提出を求めることができる。 |
(立入調査等) |
第 | 19条 市長は,この条例の施行に必要な限度において,市長が指定する職員に,土地又は建築物に立ち入り,その状況を調査させ,必要な検査をさせ,又は関係者に質問させることができる。ただし,住居に立ち入るときは,あらかじめ,その居住者の承諾を得なければならない。 |
2 | 前項の規定により立入調査,立入検査又は質問をする職員は,その身分を示す証明書を携帯し,関係者の請求があったときは,これを提示しなければならない。 |
3 | 第1項の規定による立入調査,立入検査又は質問の権限は,犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。 |
(委任) |
第 | 20条 この条例において別に定めることとされている事項及びこの条例の施行に関し必要な事項は,市長が定める。 |
第6章 罰則 |
第 | 21条 第16条第1項又は第2項前段の規定による命令に違反した者は,1年以下の懲役又は500,000円以下の罰金に処する。 |
第 | 22条 第11条第6項の規定に違反した場合における当該認定建築物の工事施工者は,6月以下の懲役又は300,000円以下の罰金に処する。 |
第 | 23条 次の各号の一に該当する者は,300,000円以下の罰金に処する。
(1) | 第10条第1項の規定に違反した者 |
(2) | 第10条第2項の規定に違反した場合における当該建築物の工事施工者 |
(3) | 第11条第6項の規定に違反した場合における当該認定建築物以外の建築物の工事施工者 |
(4) | 第12条第6項の規定に違反した者 |
(5) | 第16条第2項後段の規定による命令に違反した者 |
|
第 | 24条 次の各号の一に該当する者は,200,000円以下の罰金に処する。
(1) | 第10条第3項の規定に違反して届出をせず,又は虚偽の届出をした者 |
(2) | 第11条第2項又は第12条第1項の規定による申請をせず,又は虚偽の申請をした者 |
(3) | 第13条第1項又は第14条第1項の基準に違反した場合における当該建築物の設計者(設計図書を用いないで工事を施工し,又は設計図書に従わないで工事を施工した場合においては,工事施工者) |
(4) | 第18条の規定による報告若しくは資料の提出をせず,又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした者 |
(5) | 第19条第1項の規定による立入調査若しくは立入検査を拒み,妨げ,若しくは忌避し,又は質問に対して陳述せず,若しくは虚偽の陳述をした者 |
|
2 | 前項第3号に規定する違反があった場合において,その違反が建築主の故意によるものであるときは,当該設計者又は工事施工者を罰するほか,当該建築主に対して同項の刑を科する。 |
第 | 25条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業者が,その法人又は人の業務に関して第21条から前条までに規定する違反行為をしたときは,行為者を罰するほか,その法人又は人に対して,各本条の刑を科する。 |
附 則 |
この条例は,公布の日から施行する。 |