[監査]
○公表


監査公表第469号

京都市職員措置請求及び監査結果公表
 地方自治法第242条第3項の規定により,標記の請求に係る監査を行ったので,請求文及び請求人に対する監査結果の通知文を次のとおり公表します。
  平成14年8月1日
京都市監査委員 下薗 俊喜
同     奥谷 晟


 京都市職員措置請求書
   京都市措置請求書
 請求の趣旨
 京都市議会議員ら及び京都市職員は,次の「海外行政視察」を行った。
[1] 平成12年8月17日から同月26日までドイツ,クロアチア,スウェーデン,イギリス
[2] 平成12年10月18日から同月27日までアメリカ,カナダ
[3] 平成13年8月20日から同月29日まで,アメリカ,カナダ
 しかしながら,上記海外旅行は,いずれも大半が「表敬訪問」「訪問」程度のもので,しかも携行人数も7名8名という規模である。費用は,[1]が937万315円,[2]が833万4395円,[3]が828万495円という金額である。
 上記の旅行の日程には,「表敬訪問」「訪問」もしくは観光日慣行時間があり,主目的は観光旅行といわざるを得ない。このような観光部分については市民の税金ではなく一部自費負担をすべきである。また,行政視察名目としても7名8名という人数は到底不要である。従って,本件公金の支出は違法もしくは不当である。よって,京都市は,上記旅行代金額の半額程度の損害を被った。
 よって,請求人は,以下の必要な措置を構ずべきことを次の通り請求する。
 京都市長は,上記@ないしBの行政視察に参加した議員ら及び京都市職員に対し,旅行代金として各自に支出された金員の半額を京都市に返還する等適正な措置を構ずべきことを求める。
 以上,地方自治法第242条第1項の規定により,別紙事実証明書を添えて必要な措置の請求をする。
京都市監査委員 御中
2002年5月27日   
住所京都市北区小山南上総町72−2
氏名井 上 吉 郎
職業団体役員

注1 事実証明書の記載を省略した。
注2 平成14年6月10日,請求人から次のとおり補正があった。(3)の( )内の記述は,補正の趣旨が明確になるよう,監査委員において補った。

(1)「慣行時間」は「観光時間」の誤記である。
 証明文書は,既に提出してある各旅行の旅程表及びである。
 まず,それぞれの視察の内容を検討すると,朝9時から夕方5時までの間で移動時間を除いた時間を視察すべき時間とすると,どの旅行も視察時間は大目に見ても全体で15時間である。それ以外の時間はどの旅行も30時間である。
 次に,明らかに視察より観光目的で組まれた旅程がある。2000年のヨーロッパ組では,ザグレブ滞在,ストックホルム市内視察,ロンドン市内視察である。同年アメリカ・カナダ組のニューヨーク滞在,ボストン午前中,トロント滞在,サンフランシスコ滞在,ロサンゼルスである。2001年のアメリカ組では,ナイアガラ観光,ニューヨークの専用バスを用いての一日観光,ボルチィモア市内視察である。

(2)いずれも京都市に必要があって,特定の目的について各都市で研究を重ねているものではなく,また現地でのやりとりからは,事前の深い研究をしている質問とも思われないものが多く,行政的な見聞を広めるという見地からも逸脱している。
 従って,数名のものの情報収集程度で済むものばかりである。この視察をもとに議会で質問をしたことも中にはあるかもしれないが,具体的な成果として市民に提供されたものはない。

(3)(請求の対象となる行為のあった日から1年以上を経過して監査請求を行う)正当理由については,議員の旅行については事前の計画,事後の結果について市民が一般的に目にすることのできる一般新聞や市民新聞,または議会広報等では公表されておらず,知り得ない。よって正当理由がある。

 請求人に対する監査結果通知文
監   第  64  号
平成14年7月26日

請求人 井 上 吉 郎 様
京都市監査委員 下薗 俊喜
同     奥谷 晟


  京都市職員措置請求に係る監査の結果について(通知)
 平成14年5月27日付けで提出された地方自治法(以下「法」という。)第242条第1項の規定に基づく京都市職員措置請求について,監査した結果を同条第3項の規定により通知します。
 なお,監査委員橋泰一朗及び同宮本徹は,本件請求の監査に当たり,法第199条の2の規定により除斥となります。
第1 請求の受理
 請求の要旨
 京都市会議員ら及び京都市職員は,次の「海外行政視察」を行った。
[1] 平成12年8月17日から同月26日までドイツ,クロアチア,スウェーデン,イギリス
[2] 平成12年10月18日から同月27日までアメリカ,カナダ
[3] 平成13年8月20日から同月29日までアメリカ,カナダ
 しかしながら,上記海外旅行は,いずれも大半が「表敬訪問」「訪問」程度のもので,しかも携行人数も7名8名という規模である。費用は,[1]が937万315円,[2]が833万4,395円,[3]が828万495円という金額である。
 上記の旅行の日程には,「表敬訪問」「訪問」若しくは観光日観光時間があり,主目的は観光旅行といわざるを得ない。このような観光部分については市民の税金ではなく一部自費負担をすべきである。また,行政視察名目としても7名8名という人数は到底不要である。従って,本件公金の支出は違法若しくは不当である。よって,京都市は,上記旅行代金額の半額程度の損害を被った。
 よって,請求人は,以下の必要な措置を構ずべきことを次の通り請求する。
 京都市長は,上記[1]ないし[3]の行政視察に参加した議員ら及び京都市職員に対し,旅行代金として各自に支出された金員の半額を京都市に返還する等適正な措置を構ずべきことを求める。
 以上,地方自治法第242条第1項の規定により,別紙事実証明書を添えて必要な措置の請求をする。
 要件の審査
 本件請求のうち平成12年8月17日に出発した海外行政視察(以下「ヨーロッパ行政視察」という。)に係る旅費については平成12年8月16日に,平成12年10月18日に出発した海外行政視察(以下「平成12年度アメリカ行政視察」という。)に係る旅費については平成12年10月17日に,それぞれ支払いが行われており,いずれも当該行為のあった日から1年以上を経過して監査請求がされている。
 請求人は,本件請求の対象となる行為については,市民が一般的に目にすることのできる一般新聞や市民しんぶん又は議会広報等では公表されておらず,知り得ないので,請求の対象となる行為のあった日から1年以上を経過して監査請求をすることについて正当な理由があると主張している。
 法第242条第2項ただし書に規定する「正当な理由」があるかどうかについては,当該行為が秘密裏になされたかどうか,住民が相当の注意力をもって調査したときに,客観的に見て,当該行為を知ることができたかどうか,そのようにして当該行為を知ることができたと解されるときから,相当な期間内に監査請求をしたかどうか,によって判断されるべきであるとされている(最高裁昭和63年4月22日判決)。
 しかし,ヨーロッパ行政視察の実施については平成12年9月5日発行の京都市会旬報(以下「市会旬報」という。)に,平成12年度アメリカ行政視察については平成12年11月6日発行の市会旬報に,それぞれ記載されており,これらの市会旬報は京都市会図書室(以下「市会図書室」という。)において,一般の閲覧に供されている。
 また,ヨーロッパ行政視察については平成12年8月8日付け毎日新聞朝刊に,平成12年度アメリカ行政視察については平成12年10月12日付け京都新聞朝刊に,それぞれ視察団を派遣する旨の記事が掲載されていることから,これらが秘密裏になされたと認めることはできない。
 さらに,前述のとおり,これらの行政視察については,一般の閲覧に供されている市会旬報に記載されていることから,相当の注意力をもって調査すれば請求人は知り得る状況にあったと判断できるうえ,前述の新聞報道によっても知り得ることが可能であったと言うことができる。
 したがって,請求の対象となる行為のあった日から1年以上を経過して監査請求を行ったことについて正当な理由があるとは認められず,法第242条第2項の規定に適合していないので,ヨーロッパ行政視察及び平成12年度アメリカ行政視察に係る旅費の支出に対する請求については,これを却下する。
 次に,請求人は「行政視察名目としても7名8名という人数は到底不要である」とも主張するが,このことが違法又は不当であるとする理由及び根拠については,「数名のものの情報収集程度で済むものばかりである」と述べているのみで,根拠とする事実についての具体的な指摘や「証する書面」の提出はなく,この主張については,法第242条第1項に規定する要件を欠いている。
 よって,平成13年8月20日に出発した海外行政視察(以下「本件行政視察」という。)に係る旅費の支出について,本件行政視察の主目的は観光旅行であるといわざるを得ず,当該旅費の支出は違法又は不当であるという請求人の主張について監査する。
第2 監査の実施
 監査の期間中,京都市会事務局(以下「市会事務局」という。)の関係職員に対し関係書類の提出及び説明を求め,総務局の関係職員に対し関係書類の提出を求めた。
 平成14年7月9日,法第242条第5項の規定に基づき,請求人井上吉郎から陳述を受けた。
第3 監査の結果
 事実関係
(1)京都市会議員(以下「市会議員」という。)6名及び市会事務局の職員1名合計7名で構成する京都市会海外行政視察団(以下「本件行政視察団」という。)は,平成13年8月20日から同月29日までの10日間,シカゴ市,トロント市,ボストン市,ワシントンD.C.,ニューヨーク市等を訪問地とする本件行政視察を行った。
(2)本件行政視察団長は,京都市会議員の出張に関する要領(以下「要領」という。)の規定に基づき,平成13年8月1日に「海外出張申出書」(以下「申出書」という。)を京都市会議長(以下「市会議長」という。)あてに提出し,市会議長は同日実施の決定を行うとともに,同月8日に旅行命令の決定を行っていた。
 また,随行した市会事務局の職員に対する旅行命令についても,市会事務局長等専決規程の規定に基づき,平成13年8月8日に決定されていた。
(3)本件行政視察に係る旅費は8,280,495円であり,平成13年8月17日に支出されていた。
 本件行政視察に要した旅費は,京都市報酬及び費用弁償条例,京都市旅費条例及び京都市旅費条例第18条の規定に基づき定めた「旅費の取扱いについて」の規定に従い,国家公務員等の旅費に関する法律の規定に準じて算出されていた。
(4)本件行政視察については,本件行政視察団の一員である市会事務局の職員が「京都市会海外行政視察出張報告書」を作成し,平成13年12月11日付けで市会議長あてに提出していた。また「平成13(2001)年度 京都市会海外行政視察報告書」(以下「視察報告書」という。)が本件行政視察団によって作成され,市会図書室において一般の閲覧に供されている。
 市会事務局の関係職員の説明
(1)市会議員の海外行政視察について
 今日,地方行政の機能は複雑化,多様化しており,本市が抱える行政課題に対する施策について審議し,広く提言を行っていくためには,先駆的な取組を行っている国内の都市だけではなく,海外の都市等からも学び,市会議員としての見識を高める必要性があり,またそのことは市会の意思決定機能や監視機能の強化を図ることにつながるため,市会議員の海外派遣が行われている。
 本件行政視察についても,視察で得た知識を基に,本会議等で執行機関への質問や政策提案などが行われている。
(2)海外行政視察の実施手続等
 海外行政視察を実施する場合は,視察に係るテーマ,行き先(方面),調査都市の候補,調査事項の事例,参加する市会議員(以下これらを「視察方針等」という。)について,市会運営委員会理事会(市会運営委員の中から選任された理事による会議で京都市会委員会条例に基づき置かれている。市会運営委員会は,議会の運営に関する事項等を調査し,審議する目的で同条例に基づき置かれている。)で決定された後,参加する市会議員が旅行業者も交えて具体的な調査事項,調査都市,日程を協議して行程案を作成し,当該行程案を市会運営委員会理事会に諮った後,視察団長が市会議長に申出書を提出して最終的に決定される。
 本件行政視察については,平成13年5月8日の市会運営委員会理事会において視察方針等が決定された。その後,本件行政視察に参加した市会議員が旅行業者も交えて具体的な視察テーマ,調査事項,調査都市,日程について協議を重ね,行程案を作成し,同年8月1日に開かれた市会運営委員会理事会に諮り,全会派一致で承認が得られた。同日,本件行政視察団長から市会議長あてに申出書が提出され,同日市会議長によって実施が決定された。
 海外行政視察は視察団を編成して実施されるが,これは相手都市を訪問する際,京都市会としての公式な訪問団として位置付けされ,外国の諸都市との交流が促進できるうえ,複数会派から選出され,様々な得意分野や関心を持った市会議員がお互いに協議し,刺激し合うことで,より効果的で充実した調査,視察を行うことができるためである。
(3)本件行政視察の内容等
 本件行政視察は,生活安全対策,ドメスティック・バイオレンス対策,水道水源保全の取組,循環型社会形成及び交通政策等についての先進的な取組を視察調査することを目的として実施され,このためシカゴ市,トロント市,ボストン市,ワシントンD.C.及びニューヨーク市を訪問し,調査した。その内容については,視察報告書に記載のとおりである。また,ボストン市においては,訪問調査の際,京都市長からボストン市長あての親書を渡している。
 上記の調査以外にもこの視察の機会を有効に活用するために,いずれも視察団として,官公庁等の公的施設,大学,高速道路等公共の工事現場等を視察した。具体的には次のとおりである。
 8月21日のシカゴ市においては,市役所での訪問調査を終えた後,シカゴソーティングセンター(リサイクルセンター)を約1時間視察し,昼食後,高層駐車場,イリノイ州分庁舎の視察を行ってから,空港へ移動した。
 8月23日のボストン市においては,市役所での訪問調査を終えた後,昼食をとり,13時過ぎから歴史的街並みを保存している地区,高速道路を高架構造から地下構造に変える工事現場,マサチューセッツ工科大学を視察した。その後,空港へ移動した。
 8月24日のワシントンD.C.では,12時30分までドメスティック・バイオレンス対策の訪問調査を行った後,昼食をとり,米上院議場,アーリントン国立墓地,国立博物館,国立宇宙博物館を視察した。
 8月25日は,土曜日であったが,本市の観光施策の参考とするため,多機能複合都市であるボルティモア市において,公園,レクリエーション施設が集中しているインナーハーバー地区の視察を行い,その後,ニューヨーク市へ列車で移動した。
 8月26日は日曜日であるため,官公庁等の視察,調査は設定しなかったが,大都市における環境,建物,交通の状況,バリアフリー状況について,これまで視察したシカゴ市やボストン市等の状況と比較する視点も持ちながらニューヨーク市内一円を団体で視察した。
 8月27日ニューヨーク市警察訪問後,国連日本代表部訪問までの間は,国連本部を訪問,視察し,国連職員と懇談を行った。
 なお,8月21日夜から8月22日朝にかけて滞在したナイアガラについては,シカゴ市からトロント市へ移動するに当たり,トロント市への直行便の予約が取れなかったため,トロント市に近いバッファロー市へ空路移動し,バッファロー市から陸路トロント市へ向かう際にトロント市までの所要時間(2時間30分程度)との関係で,宿泊地として立ち寄ったものである。
 これらの視察,調査以外の時間は,必然的に生じる移動時間,昼食時間,航空機の待ち時間等であり,請求人が主張するように「視察時間15時間,それ以外は30時間ある」ということはない。
 本件行政視察の日程
 視察報告書及び関係職員の説明に基づき,本件行政視察の日程を整理すると次のようになる。
 監査委員の判断
(1) 議員の海外派遣について
 普通地方公共団体の議会は,その機能を適切に果たすために必要な限度で広範な権能を有し,合理的な必要性があるときはその裁量により議員を海外に派遣することもできるとされている(最高裁昭和63年3月10日判決)。
 国際化が進展した今日の状況からすれば,議員が広く海外の行政事情にも正確な知識を持ち,議員としての視野を広げるために海外行政視察を行うことは,その議会活動能力を高め,ひいては市民の利益につながると考えられることから,合理的な必要性があれば認められるものである。
(2)本件行政視察の実施について
 本件行政視察については,平成13年5月8日に開催された市会運営委員会理事会において視察方針等が決定され,具体的な視察テーマ,調査事項,調査都市,日程等について同年8月1日に開催された市会運営委員会理事会において承認が得られている。この承認が得られた後,本件行政視察団長から市会議長あてに申出書が提出されており,当該申出に基づき同日付けで市会議長が実施を決定している。
 したがって,本件行政視察の実施は,市会の意思に基づき,要領に定める手続きを経て,適正に決定されたものと認められる。
(3)本件行政視察に係る旅費について
 本件行政視察にかかる旅費の額の算定,支出手続きは適正であったと認められる。
(4)本件行政視察の視察内容について
 請求人は,本件行政視察について,「観光日観光時間があり,主目的は観光旅行であるといわざるを得ず,ナイアガラ観光,ニューヨークの専用バスを用いての一日観光,ボルティモア市内視察は明らかに視察より観光目的で組まれた旅程である」旨主張するので,この点について検討する。
 まず,8月21日のシカゴ市,同月23日のボストン市,同月24日のワシントンD.C.及び同月27日のニューヨーク市については,あらかじめ本件行政視察に参加した市会議員が協議を行い,最終的に市会議長の決定を受けたテーマについて,市役所等を訪問し,説明を受け,質疑を行っており,訪問調査終了後も次の都市への移動までの間,州庁舎,歴史的な街並みを保存している地区,高速道路工事現場等を団体行動で視察している。
 ナイアガラについては,8月21日の到着時刻(20時30分),翌日のトロント市での訪問調査の開始時刻(13時30分)及びナイアガラからトロント市までのバスによる移動時間(市会事務局職員の説明及びナイアガラからトロント市までの距離等からおおむね2時間程度と考えられる。)を考慮すると,観光を主目的として立ち寄ったものであるとまではいえない。
 ボルティモア市については,8月25日土曜日にワシントンD.C.からニューヨーク市に移動の途中で立ち寄り,公園,リクリエーション施設等があるインナーハーバー地区を団体行動で視察している。本市も年間観光客5,000万人を目指して観光振興施策を展開しており,市会での審議の際の参考とする目的でこの地区の視察を行ったとしても行政視察の範囲を逸脱するものではない。
 ニューヨーク市については,日曜日である8月26日に,環境,建物,交通の状況,バリアフリー状況に関して,専用バスを利用して団体行動で市内の視察を行っている。
 本市が抱える課題は多種多様であり,市会議員はこれらの様々な課題に関する議案等を審議し,また市の施策の実施について広く提言を行う役割を担っていることから,幅広い知識を有することが求められている。
 ニューヨーク市は,世界でも有数の経済都市であり,観光都市でもある。したがって,本件行政視察の期間中,それまでの訪問調査において得た知識等を持った上で,ニューヨーク市の状況を視察することは,市会議員としての活動に資することになるものと考えられ,またこの機会を有効に活用することにもなるから,行政視察の範囲を逸脱するものではない。
 よって,本件行政視察の内容は,市会議員の行政視察として社会通念上妥当性を欠くとは認められない。
(5)本件行政視察の議会活動等への反映について
 行政視察の結果は直ちに市政に反映されなければならないとも限らないが,本件行政視察については,視察報告書が作成され,市会図書室において市民の閲覧に供されている。この視察報告書は,シカゴ市,トロント市,ボストン市,ワシントンD.C.及びニューヨーク市において行われた訪問調査及び質疑について記述されているが,このような行政視察に係る報告書については,今後,説明責任の観点から,さらに充実させる余地があるものと考える。
 また,本件行政視察に参加した市会議員が視察を踏まえた質問を平成13年9月11日の市会本会議及び平成14年3月1日の市会本会議で行っており,議会活動においても本件行政視察の結果は反映されていると言うことができる。
(6)市会事務局職員の派遣について
 本件行政視察には,市会事務局の職員1名が随行している。
 要領によれば,海外行政視察を行う際の視察団には市会事務局職員を1名随行させることとなっている。
 このように職員を随行させたのは,本件行政視察に参加した市会議員が訪問調査を円滑に行うことができるよう連絡調整や補助を行わせるためであり,これを用務として旅行命令がなされている。
 よって,適正な手続を経て,派遣されたものと認められる。
 結論
 以上,請求人の主張には理由がないので,これを棄却する。

(監査事務局第一課)

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