第2 庁内イントラネットの整備及び活用状況 |
1 | 庁内イントラネット構築の趣旨と整備状況 |
(1 | )庁内イントラネット構築の趣旨
イントラネットとは,インターネットの技術を組織内の情報システムに取り入れ,情報共有や業務支援に活用するためのシステム形態である。情報の共有及び提供,電子メール等の用途があり,インターネットを経由して組織外の情報資源を利用することができるほか,整備に係る費用負担が従来型のLAN(構内情報通信網の略)に比べて少なく,取り組みやすいという特性を有している。
本市においては,行政の高度情報化を進めるため,平成9年5月に行動計画が策定された。行動計画は,行政改革の視点と都市経営の視点という二つの視点を基本として,様々な情報化の推進を図っていくこととしている。そのうち,行政改革の視点では,市民満足を実現するため,説明責任の姿勢の明確化によって開かれた行政を目指すとともに,市役所自らの高度情報化と行政サービスの高度化の基盤としての「市役所イントラネットの構築」,「パソコンの一人一台配備」を進めていくことを掲げている。
このように,庁内イントラネットの構築は,その特性を生かした,行政業務情報化を推進するための重要かつ初期に行うべき基盤的整備として位置付けられている。 |
(2 | )庁内イントラネットの整備状況
庁内イントラネットの整備は,局,課等の業務が密接に関連しているグループ単位に導入し,順次拡大を図るということを基本に整備が進められてきた。
整備は本庁,区役所から着手され,平成11年度からは第1類の事業所,平成13年度からは第2類の事業所を対象に整備が行われ,現在,第2類の事業所の一部,京都市事業所の長等専決規程別表第1に掲げる第3類の事業所,区役所出張所等を除き,整備が完了している。
なお,庁内イントラネットの整備は,平成13年5月に策定された「新・高度情報化推進のための京都市行動計画〜e−京都21〜」においても行政業務情報化を推進するうえで必要不可欠な情報基盤として位置付けられており,パソコンの効果的,計画的配備と合わせて,拡充を図っていくこととされている。 |
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2 | パソコンの一人一台配備の趣旨と配備状況 |
(1 | )一人一台配備の趣旨
パソコンは,電子メールやホームページを活用するための基本的な道具であり,その配備状況や台数が情報共有とコミュニケーションの密度を決定する。したがって,ネットワークのメリットを最大限に引き出すためには,一人一台の配備が必要であり,庁内イントラネットの構築と合わせて,行政業務情報化における基盤整備として位置付けられている。 |
(2 | )イントラネットパソコンの配備状況
平成7年度に市長,副市長,収入役及び各局長に19台が配備され,それ以降,本庁の所属職員を中心に配備先の拡大が図られてきたが,平成11年度からは庁内イントラネットの整備に合わせて第1類の事業所の職員に,平成13年度からは第2類の事業所の職員に対し,配備が行われた。
また,総務局総務部総務課,同文書課及び理財局財務部主計課のイントラネットモデル3課,総合企画局の全課,総務局人事部人事課及び同給与課については,いずれも全庁的な連絡調整事務への利用やホームページを利用した市民への情報提供等,イントラネットの機能が発揮されるという判断から,重点配備課と位置付けられ,一人に一台配備されている。
平成13年度末現在での配備台数は1,560台であり,一人一台の配備には至っていないのが現状である。
年度別の配備の状況は,次表のとおりである。 |
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(注 | )調達台数及び更新台数は当該年度内に調達又は更新を行った台数であり,年度末配備台数は年度末現在で配備されている総台数である。 |
(3 | )今後の配備方法
行政業務情報化を推進していくためには,より多くの職員がイントラネットパソコンを利用できるようにする必要があり,そのためには一人一台を目標に配備を進めていくことが望ましく,こうした配備の基本方針にも変更はないが,財政非常事態宣言が出された極めて厳しい財政状況の下では,短期的に一人一台のイントラネットパソコンを配備していくことは困難な状況にある。
そこで,一台のイントラネットパソコンを複数の職員が利用できるような「共用化」の検討が行われている。
これは,行政業務情報化のリーディングプロジェクトである人事給与システム,財務会計システム及び文書管理システムの共通基盤(ユーザー認証,運用管理,統合データベース等で構成される。)の整備とIDカード(システムの利用を許可された者に発行されるカード)及びパスワードの導入により,当該利用者の情報に対するアクセス権限の確認が可能となったためである。 |
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3 | 庁内イントラネット年度別経費
庁内イントラネット整備に係る平成7年度以降の年度別の経費(決算額,総合企画局所管分)については,下表のとおりである。 |
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4 | 庁内イントラネットの活用 |
(1 | )電子メールの活用
電子メールとは,ネットワーク上であたかも郵便のごとく文書等が自由にやり取りできる仕組みである。行動計画においては「市役所内部におけるコミュニケーションの手段」として位置付けられており,導入のメリットとしては,「時間及び空間にとらわれないコミュニケーション」,「情報伝達範囲の飛躍的拡大」,「情報の高度な活用性」,「ペーパーレス化」等が掲げられている。
庁内イントラネットにおける電子メールの具体的な運用方法については,「京都市イントラネット暫定運用方針」(以下「運用方針」という。)及び「京都市電子メール利用ガイドライン」において定められている。
運用方針の中では,電子メールについては「電話又は口頭で行っているような軽微な連絡調整に限る」とし,文書による通知に代わるものとして電子メールを使用しないこと(ただし,補助的に重ねて使用することは可)とされている。これは,暗号化等による情報セキュリティが確保されていないためである。
また,配備台数の増加に伴い,利用の範囲は近年かなり拡大されてきているが,すべての職員がイントラネットパソコンを利用できる環境が整備されていないため,その有効性が十分に発揮されるまでには至っていない。
このため,行政業務情報化の共通基盤整備に合わせて,イントラネットパソコンの「共用化」が実施される際に,同基盤上で稼動するセキュリティの高い庁内専用メールシステムを活用し,文書交換や業務での使用と利用できる職員の拡大を図っていくこととしている。 |
(2 | )ホームページの活用
ホームページは,ネットワーク上で情報の提供者が情報を提供するために持つ手段のひとつで,行動計画においては,「市役所内部における情報の流通と共有の手段」,「市民への情報提供の手段」として位置付けられている。
市民へ情報を提供する手段のひとつとしてインターネットホームページを作成している課は62課,未作成の課は81課(平成13年8月末時点)である。
作成されているホームページの内容は様々であるが,理財局財務部調度課,環境局事業部廃棄物指導課及び消防局のホームページは,申請書や届出書の様式をダウンロード(通信回線を通じて相手のコンピュータから自分のコンピュータにデータを転送すること)ができるようになっており,利用者の便宜を図っている。
インターネットホームページのほか,高度情報化を進めてきたことにより,新たに開始された市民への情報提供サービスには,ファックスを利用してインターネットホームページで提供されている情報の一部を取り出すことができる「インターネットファックス情報サービス」,市民生活情報,交通情報,観光文化情報等,生活に身近な情報が携帯電話で取り出せる「携帯端末用情報の発信」,市民や観光,出張等で京都に来ている人が,京都市や国の各機関等の情報を検索するために利用できる「公共端末の設置(京都市国際交流会館,京都市女性総合センター等市内5箇所の公共施設に設置)」がある。 |
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5 | 国及び他の地方公共団体との連絡調整並びに情報交換のための活用(総合行政ネットワークへの参加) |
(1 | )総合行政ネットワーク
総合行政ネットワークは,地方公共団体の組織内ネットワークを相互に接続し,高度情報流通を可能にする高度なセキュリティを確保した通信ネットワークで,国の府省が結ばれている府省間ワイドエリアネットワーク(以下「霞ヶ関WAN」という。)とも接続し,現在紙に記録された文書で行われているやり取りを電子文書(意思又は観念を電磁的記録にした公文書)で行ったり,国,地方公共団体相互間での情報の迅速な交換,共有,活用ができるようにすることを目指しており,行政(国,地方公共団体)内部の電子化を進めていくに当たっての基盤となるものである。
このネットワークが活用されるようになれば,国の府省ごとあるいは業務ごとにネットワークを構築し,維持管理する必要がなくなるほか,各地方公共団体に共通する事務に係るアプリケーション(注1)をネットワークを通じて利用することができるようになるなど,ネットワークやシステム構築への重複投資を抑制できるほか,電子メール,電子文書交換,情報掲示板等により情報の収集や提供が可能となり,行政事務の効率化,郵送料等のコストの削減を図ることが期待される。
総合行政ネットワークの整備については,平成12年度に都道府県,政令指定都市が参加して実証実験が行われ,平成13年度はすべての都道府県,政令指定都市及び一部の市町村が参加してテストが行われてきた。平成14年度からは「霞ヶ関WAN」と接続され,本格的な電子文書交換等が実施される予定であり,平成15年度までにすべての地方公共団体がこれに接続することが目指されている。 |
(2 | )庁内イントラネットの整備と総合行政ネットワーク
総合行政ネットワークに関して本市は,平成12年度の実証実験に参加し,平成13年度には正式に参加している。国の府省と総合行政ネットワークを介して,業務に係る文書のやり取りや情報の収集及び提供を電子的に行うには,庁内LANが整備されていることが必要であり,この点から見れば庁内イントラネットの整備は,結果として総合行政ネットワーク参加のための条件整備を進めてきたことになる。 |
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6 | 今後の活用に向けた取組
これまで整備を進めてきた庁内イントラネットを活用して,行政業務情報化を進めていく施策を展開するため,平成12年3月に「京都市行政業務情報化リーディングプロジェクト」の基本計画が策定された。
この基本計画においては,本市における行政業務情報化に当たっては,セキュリティの保全に万全を期し,個人情報の保護対策を講じつつ,ネットワークのメリットを最大限に活用して各種業務の情報化を進めていくこととしている。この行政業務情報化のリーディングプロジェクト(先駆的事業)として,人事給与,財務会計及び文書管理の3業務の統合されたシステム化を行い,以後継続して他の行政業務の情報化を図っていくこととしており,庁内イントラネットが様々な業務遂行の場面で欠くことのできないものとなることを目指している。
リーディングプロジェクトの実施に当たっては,まず人事給与業務及び財務会計業務のシステム化に着手し,続いて文書管理のシステム化を行うこととしており,人事給与システムは平成14年1月に策定された「人材活性化基本方針(案)」に掲げる取組を進めていく上での,また財務会計システムは本市における行政評価システムの核となる事務事業評価を行っていく上での,それぞれの情報基盤としての活用が見込まれている。 |
7 | 職員の情報リテラシーの向上
情報リテラシーとは,単にパソコン等の情報通信機器を活用する能力のみならず,情報を積極的に活用する能力,組織内部における情報の取扱いやコンピュータウィルスなど外部からの脅威に関する知識をも含むものである。
職員がイントラネットパソコンを通じて様々な情報の共有や受発信が行えることを考慮すると,本市における行政業務情報化を推進するためには,庁内イントラネットの整備やイントラネットパソコンの配備などのハード面での整備に加えて,実際に業務に携わる職員の情報リテラシーの向上が不可欠になってくる。
このため,機器配備の拡大や人事異動に伴い,新たにイントラネットパソコンを使用することとなった職員に対して,研修を実施してきており,平成9年度から平成13年度までの間に延べ約2,200人の職員が受講している。
また,平成14年1月に京都市情報セキュリティポリシー(注2)が策定され,これに基づき,情報を安全に管理し,運用する能力を習得することを目的とした具体的な取組について定めた「京都市職員情報リテラシー向上プラン」が平成14年3月に策定されたところである。 |