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 平成23年第6回定例会 【意見書】

「こころの健康を守り推進する基本法(仮称)」の法制化を求める意見書

(23年12月12日提出)

 今,国民の「こころ」は,深刻な状況にある。平成10年から毎年3万人以上の人々が自死によって命をなくし,平成17年には300万人以上,40人に1人程度の人々が精神科を受診するようになり,今も増加傾向が続いている。  
 京都市でも,通院医療費公費負担の承認件数は,平成14年度の6,576人から,平成22年度には19,393人へと約3倍に増加している。  
 平成23年7月6日,厚生労働省は,これまで「4大疾病」と位置付けて重点的に対策に取り組んできた「がん,脳卒中,心臓病,糖尿病」に,精神疾患を加えて,「5大疾病」とする方針を決めた。  
 福祉分野においては,平成18年4月から3障がいを一緒に支援する法律が作られたが,サービスの基盤体制の構築は立ち遅れている。  
 また,医療においても,他の科とは大きな違いがあり,一般病床や感染症病床などは,患者16人に対し医師は1人以上であるが,精神科病床では,患者48人に対し医師1人になっている。看護師の配置も一般の医療水準よりも低く設定されており,慢性的な人手不足の状態である。  
 長期の心的障がい者(精神障がい者)の家族が精神健康上の困難を持つ率は,一般の人々の3倍であることも分かっており,家族への精神疾患・治療についての情報提供,実際的・情緒的な支援などが必要であるが,日本ではこの部分も皆無に近く,ようやく家族教室などが開かれ始めたところである。
 平成22年4月から,家族・当事者,医療福祉の専門家及び学識経験者が集まり,「こころの健康政策構想会議」を設立し,家族・当事者のニーズに応えることを主軸に据えて会議を重ね,現実の危機を早期に根本的に改革する提言をまとめ,平成22年5月末に厚生労働大臣に「こころの健康政策についての提言書」を提出した。  
 この中で,@精神医療改革,A精神保健改革,B家族支援の三つを軸として,国民全てを対象とした,こころの健康についての総合的・長期的な政策を保障する「こころの健康を守り推進する基本法(仮称)」の制定を強く求めている。  
 よって国におかれては,「こころの健康を守り推進する基本法(仮称)」を制定するよう強く求める。
 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣


障害者総合福祉法(仮称)の早期制定を求める意見書

(23年12月12日提出)

 平成22年1月に,障がい者制度の集中的な改革を行うため,内閣府における「障がい者制度改革推進本部」の下に「障がい者制度改革推進会議」が設置された。ここでの検討を踏まえて,平成23年7月には,障害者基本法の改正が行われ,また,8月には,同推進会議の下に設けられた総合福祉部会において,「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」が取りまとめられたところである。  
 障がいの種類や程度,家族の状況,経済力,居住する地方自治体にかかわらず,障がい者自らが選んだ地域で自分らしく暮らせる社会を実現するためには,障がいの有無によって分け隔てられない共生社会を実現する理念の下に,障害者基本法や今般の骨格提言に沿って「障害者総合福祉法(仮称)」を着実かつ速やかに立法化する必要がある。  
 よって国におかれては,以上の観点から,下記の事項を踏まえ,障害者総合福祉法(仮称)を早期に制定し,施行されるよう要望する。
 障害者総合福祉法(仮称)の制定に当たり,推進会議総合福祉部会が取りまとめた「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」を最大限尊重し,反映させること。
 障害者総合福祉法(仮称)の制定に当たり,国の責任において制度を円滑に進めるために財源を十分に確保し,地方自治体の財政負担を軽減すること。
 
 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣


鳥獣被害防止対策の充実を求める意見書

(23年12月12日提出)

 近年,野生鳥獣による農作物被害額は,平成21年度において213億円で,前年度に比べて14億円増加しており,深刻な状態にある。その被害は,経済的損失にとどまらず,農家の生産意欲を著しく減退させ,ひいては農村地域社会の崩壊を招きかねないなど,大きな影響を及ぼしている。
 鳥獣被害全体の7割がイノシシ,シカ,サルによるもので,農作物の被害にとどまらず,家屋の損壊や市民への危害などの被害が増加し,山林の荒廃を招き,豪雨時の土砂流出被害にもつながっているとの指摘もある。  
 このような状況を踏まえ,国においては,平成19年12月,議員立法により,「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律」が成立した。これに基づき,鳥獣被害防止総合対策交付金の支給や地方交付税の拡充,都道府県から市町村への捕獲許可の権限委譲など,各種支援の充実が図られた。  
 京都市においても,厳しい財政の中,猿害に対する住民自主組織への資材提供や,電波発信機を装着して実施する追上げ事業等を行っているところである。
 今後,生息域の拡大を続ける野生鳥獣による被害防止を確実なものとするためには,ハード・ソフト両面による地域ぐるみの被害防止活動,地域リーダーや狩猟者の育成,被害農家へのより広範な支援などの対策の強化が不可欠である。  
 また,野生鳥獣の保護及び被害防止対策のための適切な個体数管理の上からも,正確な頭数の把握は欠かせないが,その調査方法は,いまだ十分なものとは言えず,早期の確立が望まれる。  
 よって国におかれては,鳥獣被害防止対策の充実を図るため,下記の事項を速やかに実施されるよう強く要望する。
 地方自治体が行う地域の実情に応じた鳥獣被害防止施策に対する財政支援を充実すること。
 現場では,有害鳥獣対策についての専門家が不足していることから,専門的な知識や経験に立脚した人材の養成及び支援策を講じること。
 有害鳥獣の正確な生息数の把握ができる調査方法を確立すること。
 効果的な野生鳥獣被害防止対策を構築すること。
 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,農林水産大臣,環境大臣


災害に強い日本の構築に向けた社会資本整備を求める意見書

(23年12月12日提出)

 東日本大震災発生から9箇月が経過した今もなお,被災地の復旧・復興は遅々として進まず,多くの被災者が困難な生活を余儀なくされている。
 今後,本格的な復旧・復興へ向けては,物流インフラの復旧,上下水道や学校施設等をはじめとする公共施設の復旧などへの重点投資が求められている。
  一方,大震災を受け,京都市としても「防災対策総点検委員会」において地域防災計画の見直しを行っており,特に,重要橋りょうの耐震補強,災害防除など今後取組を強化していくところである。
 また,全国の多くの地域で災害対策の在り方が見直される中,災害に強いまちづくりのための集中的かつ計画的な社会資本整備が求められている。
 今後,被災地の本格的な復旧・復興と併せて,地震や津波等の自然災害に対する防災・減災対策としての社会インフラ整備,学校施設の耐震化の着実な実施など災害時を想定した国民の生命・財産の保護につながる社会資本整備に係る公共投資については,地域のニーズを踏まえつつ,国の責任として積極的に進める必要がある。
 よって国におかれては,災害に強い日本の構築に向けて,地震や台風などの災害から国民の安全・安心を守るために,下記のとおり,必要な社会資本の整備を推進するよう強く求める。
 東海・東南海・南海地震の影響が想定される地域のミッシングリンクの解消をはじめ,幹線道路ネットワークを構成する道路を優先的に整備すること。
 学校施設の防災機能の向上のための環境整備の充実を図りつつ,公立学校の耐震化を加速度的に推進すること。
 公共施設や社会インフラの維持・管理など計画的な老朽化対策を推進すること。
 地盤の液状化による災害を抑制するための技術的ガイドラインを早急に作成するなど宅地被害対策の強化を図ること。
 
 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,文部科学大臣,国土交通大臣


国民生活の安心と向上を図る各種基金事業等の継続を求める意見書

(23年12月12日提出)

 安心社会を構築するため,医療・介護・子育て支援の強化に対し,各種基金制度が創設され,地方自治体における迅速かつ柔軟な取組に対して支援が行われてきたところである。
  しかしながら,こうした基金事業の多くが今年度限りで終了する。  
 特に,国民の生命と生活に直結する「子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進臨時特例交付金」,「安心こども基金」,「妊婦健康診査支援基金」,「介護職員処遇改善等臨時特例基金」,「障害者自立支援対策臨時特例基金」及び「地域自殺対策緊急強化基金」については,多くの関係者から事業の継続を求める声が上がっている。
 よって国におかれては,国民生活の安心と向上を図るうえからも,こうした基金及び基金事業を継続するよう強く求める。
 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣


防災会議に女性委員の登用を求める意見書

(23年12月12日提出)

 国の防災基本計画には,平成17年に「女性の参画・男女双方の視点」が初めて盛り込まれ,平成20年には「政策決定過程における女性の参加」が明記された。この流れを受け,地域防災計画にも女性の参画・男女双方視点が取り入れられつつあるが,具体的な施策にまで反映されているとは必ずしも言えない。
 中央防災会議の「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」が,平成23年9月28日に取りまとめた報告においても,防災会議へ女性委員を積極的に登用し,これまで反映が不十分であった女性の視点を取り入れることへの配慮が盛り込まれている。
 よって国におかれては,防災会議に女性の視点を反映させるため,以下の項目について速やかに実施するよう強く要望する。
 中央防災会議に,少なくとも3割以上の女性委員の登用を目指すこと。
 地方防災会議へ女性委員を積極的に登用することができるよう,都道府県知事や市区町村長の裁量により,地方防災会議における有識者枠を拡大することを可能とする災害対策基本法の改正を速やかに行うこと。
 
 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,内閣府特命担当大臣(男女共同参画),内閣府特命担当大臣(防災)


視覚障がい者からテレビを遠ざけない地上デジタルテレビ放送を求める意見書

(23年12月12日提出)

 障がい者の平等な暮らしと社会参加の推進は,我が国において社会と地域の大きな課題となっている。情報の8割以上が視覚情報である現代社会において,視覚障がい者が安心して生活するためには,情報格差をこれ以上広げない対策が求められている。
 FM放送とテレビのアナログ放送は,共にVHF帯の電波を使うため,多くの視覚障がい者が,値段が安く1台で両方聴くことができるFMラジオでテレビを利用されてきた。
  しかし,平成23年7月,地上波テレビがデジタル放送へと完全移行(被災3県を除く。)したことにより,テレビの音声をFMラジオから聴くことができなくなってしまった。
 多機能化に伴いテレビの操作はこれまでより複雑になっており,リモコンなどの操作情報の音声化の開発などは,メーカー任せでなかなか進んでいない状況である。
 また,テレビ情報の平等な入手に欠かせない解説放送を増やす具体的な施策もないうえ,FMラジオによるテレビ放送受信の道も絶たれてしまい,このままでは視覚障がい者からテレビが遠ざけられることとなる。「平成18年身体障害児・者実態調査結果」によれば,情報の入手方法の第1位がテレビ(一般放送)であり,視覚障がい者の66パーセントを占めている。テレビは,欠かせないメディアであり,災害時においても,テレビ情報は,視覚障がい者にとって不可欠である。
 また,FMラジオで聴くことができるテレビ放送は,視覚障がい者だけでなく,テレビが見られない中で作業を行う様々な職種の方々にもニーズがあり,こういった方々にとっても欠かせないものである。
 よって国におかれては,下記事項を速やかに実施されるよう強く要望する。
 携帯用ラジオに,テレビの地上デジタル放送の受信機能を付加し,従来どおりテレビ放送を聴くことができるようにすること。
 受信機や録画機のリモコンの全ての機能が,音声ガイドを手掛かりに操作することができるテレビの開発を推進する施策を講じるなど,視覚障がい者の使いやすさを最大限考慮すること。
 解説放送,ニュースなどのテロップ・字幕の読上げを大幅に増やし,テレビ放送における情報バリアをなくすこと。
 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣


円高から中小企業を守る対策を求める意見書

(23年12月12日提出)

 欧州債務危機の混乱や米国経済の低迷などを原因として,かつてないほどの円高になっている。現下の円高による経済情勢は,震災に続く新たな試練とも言える異常事態であり,政府が総力を挙げて取り組むべき喫緊の課題と言える。
 このまま円高が続くと,我が国の製造業等に深刻な影響を与え,企業の国際競争力等の低下から,特に中小企業の経営悪化や雇用の喪失,さらには,国内産業の空洞化が予測される。
 政府は,平成23年10月,円高対策を閣議決定し,同年11月21日に成立した第3次補正予算には資金繰り支援などの中小企業対策を盛り込んだが,円高が長期化する懸念がある中,中小企業の損失を最小限にするためにも,更なる具体策を実施すべきである。
 よって国におかれては,円高から中小企業を守る対策として,以下の項目を迅速かつ適切に講じるよう強く要望する。
 
 雇用対策及び地域雇用の創出策として,「緊急雇用創出事業臨時特例交付金」及び「ふるさと雇用再生特別交付金」を拡充し,事業を延長すること。
 円高関連倒産の大半を占めている「通貨デリバティブ(金融派生商品)」被害に対し,相談体制の整備や金融ADR(裁判外紛争解決制度)の活用を促す指導など,対策を強化すること。
 負担転嫁やダンピング防止など,下請いじめの監視・防止策を強化すること。
 
 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣,経済産業大臣, 内閣府特命担当大臣(金融),中小企業庁長官


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