■ 平成20年第4回定例会 【意見書・決議】 |
今年2008年,京都議定書の第一約束期間が始まったが,我が国の対策は遅々として進まず,二酸化炭素を中心とする温室効果ガスの排出量は,依然として増え続けている。 一方,気候変動による悪影響が世界各地で年々顕著になっており,このままでは,将来世代に安全・安心な地球環境を引き継げず,私たち自身の生活の安全や経済活動の基盤にも深刻な影響が及びかねない状況にある。 このような中,今年7月に開催された洞爺湖サミットでは,2050年までに温室効果ガスを半減する必要があることが合意された。そのため先進国は,2007年のバリ合意に沿って,率先して大幅な削減を実現しなければならない。 とりわけ日本は,今後,気候の安定化のために世界各国と協調した温暖化防止対策を実践することが重要となるのであり,温室効果ガス削減の中長期的目標を設定して,その目標を達成するための施策を包括的かつ総合的に導入・策定し,実践していく必要がある。 その具体策として,日本が責任を持って対応するためには,まずは京都議定書の6パーセント削減目標を守り,2020年には1990年比30パーセント,2050年には1990年比80パーセントといった大幅な排出削減に向けた経路を法律で定めることが必要である。 また,排出削減の実効性を担保するための制度として,炭素税やキャップアンドトレード型の排出量取引等の制度を導入することで,炭素に価格を付け,脱温暖化の経済社会を構築するとともに,再生可能エネルギーの導入のインセンティブとなるような制度について検討すべきである。 よって国におかれては,上記の内容の実現を約束する法律を制定するよう強く要請する。 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。 |
(提出先)
衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,経済産業大臣,環境大臣
本市の農業は,京都府内で重要な地位を占めており,農業算出額は府内の約18パーセント,特に野菜は約40パ−セントにも上るが,その経営は,今,大変厳しい状況にある。 農業生産資材である原油・肥料・飼料等に係る昨今の価格高騰は,一過性のものではなく,特に肥料及び飼料については,世界の食糧事情等の変化による構造的なものと言われている。また,米国発の金融危機による景気後退から各種市場価格への長期的な影響が懸念される中,農産物価格は消費の冷え込みにより低迷している。これらにより,農業経営は多大な痛手を受け,危機的な状況にある。 こうした状況の下,農業者は,土壌改良による低コスト生産や地元産農産物の消費拡大に向けて,懸命に取組を進めている。 しかし,農業経営の危機的状況は,農業者の努力のみでは解決できない程度に至っており,農業者が将来的な展望を持てずに生産意欲を喪失しかねない状態となっている。 よって国におかれては,今後も農業者が安心して農業を続けられるよう,下記の事項について取り組まれるよう強く要望する。 |
記 | |
1 | 農業経営が気象条件や世界の市場動向に左右されやすいという特性にかんがみ,原油・肥料・飼料の価格高騰による生産コスト上昇分を通常価格とは別立ての割増し料として販売価格に適切に転嫁できるような仕組みを構築すること。 |
2 | 生産コストの急騰に対応するため,配合飼料価格安定制度のような補てん制度を他の生産資材についても創設し,農業経営の安定を図れる仕組みを構築すること。 |
3 | 農業経営の安定を図り,地元農産物の消費を拡大するため,生産コストの急騰に対する農産物の品目ごとの激変緩和対策を行うとともに,直売所の設置及び運営を支援する仕組みを構築すること。 |
4 | 上記の農業経営安定対策が確立するまでの間,本年度補正予算により実施されている肥料・燃油高騰対応緊急対策事業を継続すること。 |
5 | 農産物の生産コスト上昇分の販売価格への転嫁と,国産及び地元産の農産物の消費拡大に向けて,消費者の理解促進に努めること。 |
以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。 |
(提出先)
衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,農林水産大臣,経済産業大臣
少子化が進行する中,次世代育成支援のために保育所制度の拡充が有効であることは,これまでも度々指摘されている。そのためにも,保育所において,保育の質がしっかり確保され,新たな時代の要請に即した機能や役割が十分に果たされることが重要である。 現在,政府の地方分権改革推進委員会や規制改革会議などにおいては,保育を経済効率の観点からとらえ,市場原理に基づいた保育所への直接契約制度の導入や入所要件及び最低基準の見直しなどの保育制度改革論議が行われている。これにより,本来福祉施策であるはずの保育制度に市場原理が導入され,保育業界に過度の競争を引き起こして無用の混乱や不安を招き,その結果,子どもの最善の利益を失うことが懸念される。 よって国におかれては,子どもの立場に立ち,かつ,地方の実情を踏まえたうえで,保育の質をしっかり守った保育制度を維持するよう,下記事項について強く要望する。 |
記 | |
1 | 保育所制度においては,真に子どもの最善の利益が確保されることが必要であることから,地方財政にも配慮し,十分な財源補償を行ったうえで,保育の質をしっかり確保できるよう制度を維持すること。 |
2 | 現行の保育所入所方式は,保護者にとって公平感と安心感があり,また,真に保育を必要とする子どもが排除されない優れた仕組みであることから,直接契約制度及び直接補助制度は導入しないこと。 |
3 | 子どもの福祉の後退を招く保育所最低基準の見直しは,行わないこと。 |
4 | 制度の改革に当たっては,保育所利用者や保育事業者等関係者が納得できるような仕組みや基準を確保すること。 |
以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。 |
(提出先)
衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣
労働に関する規制緩和が拡大し,労働者の非正規雇用化が急速に進んだ結果,不安定就労者と低賃金労働者が増加した。 そうした中,アメリカのサブプライムローン問題に端を発する経済危機が全世界に広がっている。このような状況で一番に影響を受けるのは,不安定な就労条件の下にある非正規雇用の労働者である。実際,多くの企業で雇い止めや契約更新を行わない状況が発生している。また,新卒者の内定取消し等,日本経済にも大きな影響を及ぼしている。 このことは,本市においても,来年度の法人市民税及び個人市民税の収入減や国民健康保険料及び介護保険料の滞納等の増加を来すものと予想される。そのため,不安定就労者や低賃金労働者をなくすことは,喫緊の課題である。 よって国におかれては,現在取り組んでいる派遣労働者に対する支援などをはじめ,更なる雇用政策の拡充を行われることを強く要望する。 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。 |
(提出先)
衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣
介護保険サービスを円滑に提供するため,3年ごとに介護保険事業計画や介護報酬の見直しが行われている。このため,現在,各自治体で介護保険事業計画の見直し作業が進められており,国の社会保障審議会介護給付費分科会では,介護報酬の改定や介護サービス改善に向けた本格的な議論が行われている。 そうした中,介護従事者の処遇改善のために,政府・与党の経済対策として,介護報酬の3パーセント引上げが決定された。他方で,介護報酬の引上げは,介護保険料の決定に影響を及ぼすことから,国民生活へ過度の負担とならないよう,慎重な議論と適切な対応が必要である。 よって国におかれては,安心の介護保険制度の根幹を維持しつつ,介護サービスの拡充を図るため,下記の点について特段の取組を行うよう強く要望する。 |
記 | |
1 | 介護報酬の引上げが第1号被保険者の保険料の引上げにつながらないよう,今後も十分に配慮すること。また,介護保険料の設定については,保険料の所得比例方式への見直しや,市町村ごとの柔軟な決定ができるよう配慮すること。 |
2 | 介護人材の確保及び定着のため,介護報酬の引上げが介護従事者の給与に確実に反映されるよう措置を講じること。また,介護資格取得の修学資金支援などの介護人材確保のための支援事業を充実すること。 |
3 | 必要な療養病床を確保するとともに,認知症対策を拡充し,地域ケア体制の整備と充実を図ること。 |
以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。 |
(提出先)
衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣
100年に一度と言われる経済危機が全世界に広がっている。政府は,このような状況の下で,緊急経済対策として定額給付金の支給を決定し,それに要する補正予算について発表した。しかしながら,国会において第一次補正予算は議決されたものの,第二次補正予算案は現時点で提出されておらず,給付のめどがいまだに立っていないことから,経済危機に対する緊急対策とは到底思えない。 また,多くの国民が制度に対して否定的とも言われ,さらに,現在示されている内容では自治体の負担も多く,給付対象者全員に確実には給付されないなど,現行制度には課題も多く残っている。 よって国におかれては,このような状況であれば,第二次補正から定額給付金を外し,与野党合意の中で,緊急雇用対策等について,あらゆる予算の中で取り組むことを強く要望する。 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。 |
(提出先)
衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,財務大臣
少子化が進行している時代に対応すべき重要な施策として,働く女性が安心して子どもを産み育てられる環境を更に充実させることが挙げられる。本市の財政状況が殊のほか厳しいときではあるが,公的責任において安心で安定的な京都の誇るべき保育制度を堅持すべきである。 よって,誰もが安心して子どもを産み育て,子育てに希望を持ち,さらに,男女が共同して参画できる社会を構築するためにも,本市特有の「プール制」を堅持し,京都の保育水準の維持拡充に努めることを強く求める。 以上,決議する。 |
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