○京都市会基本条例

◆制定  平成26年 3月26日条例第183号
◇改正  平成29年 6月第2号

目次
前文
第1章 総則(第1条・第2条)
第2章 市会の位置付けと役割(第3条・第4条)
第3章 議員の位置付けと役割(第5条〜第7条)
第4章 市民と市会との関係(第8条〜第15条)
第5章 市会と市長等との関係(第16条〜第18条)
第6章 議会運営の原則等(第19条〜第21条)
第7章 市会の権能強化(第22条〜第28条)
第8章 議員の定数及び議員報酬等(第29条・第30条)
第9章 補則(第31条・第32条)
附則

京都市は、御所や二条城が所在するなど、政治と文化の中心として栄えてきた地であり、悠久の歴史と多彩な文化、有形・無形の伝統、多種多様な産業が息づく我が国の財産というべき都市である。また、伝統産業と先端産業とが共存し、多くの学生が学び、多世代が交流し、世界の人々を魅了する「文化の首都」でもある。殊に、ここ京都のまちは、長年にわたる京都特有の自治の伝統を引き継ぎながら発展を遂げてきた。
 その顕著な例は、番組(学区)である。明治初期には、上京、下京のそれぞれに番組が置かれ、町衆の寄付等により、番組ごとに小学校が設立された。番組は、地域の社会福祉をはじめとする地域行政の核となり、当時の小学校区は、現在も「元学区」として、京都独自の地域住民の自治の単位として機能を果たしている。
 また、市域の拡大に伴い、各地域で特有の文化が育まれ、それぞれに自治の機能が発展し、11行政区から構成される現在の京都市の姿となった。
 このような京都特有の自治の下、京都市会は、市制施行後の明治22年(1889年)6月14日に第1回の会議を開き、以後、議決機関としてその役割を果たしてきた。加えて、この間京都市会は、地方分権時代にふさわしい議会を目指して、市会改革に積極的に取り組んできた。
 ここに、京都市会は、これまでの市会改革の成果を確かなものとし、日本国憲法に定める地方自治の本旨の実現を目指すとともに、市民の負託にこたえていくことを決意し、この条例を制定する。


第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、二元代表制の下、合議制の機関である京都市会(以下「市会」という。)及び京都市会議員(以下「議員」という。)の役割を明らかにするとともに、議会及び議員に関する基本的な事項を定めることにより、市民の負託にこたえ、市民福祉の向上及び市勢の発展に資することを目的とする。
(基本理念)
第2条 市会は、長年にわたる京都特有の自治の伝統を引き継ぐまち・京都において、地方自治の本旨に基づく京都ならではの地方自治の実現に取り組むものとする。

第2章 市会の位置付けと役割
(市会の位置付けと役割)
第3条 議員及び市長が、共に市民により直接選挙される市民の代表である一方、単独で権限を行使する市長に対し、市会は、広く公選で集まった多数の議員からなる議決機関であることに鑑み、市会は、主として次に掲げる役割を果たすものとする。
(1) 民意を把握し、市政に的確に反映すること。
(2) 市長その他の執行機関(以下「市長等」という。)による市政運営が適正に行われているかを監視すること。
(3) 民意を反映する市会の特色をいかして、執行機関では成し得ない政策立案及び政策提案を行うこと。
(4) 市長等との議論を通じてより良い政策及び施策の実現に努めること。
(5) 充実した調査研究を基に、活発な審議及び審査並びに議員間における討議を行い、意見を集約すること。
(6) 議論を通じて市政の課題に関する論点を明確にすること。
(7) 条例の制定や改廃などを通して、本市としての団体意思を決定すること。
(8) 団体意思の決定に至るまでの過程が市民に開かれた、分かりやすい議会運営に努めること。
(市会改革)
第4条 市会は、不断に市会改革に取り組むものとする。

第3章 議員の位置付けと役割
(議員の位置付けと役割)
第5条 議員は、市民の代表であるとともに、市会を構成する一員として、議会活動を通じて市民の負託にこたえることを使命とする。
2  議員は、議決の重みを深く認識するものとする。
(政治倫理)
第6条 議員は、市民の範となるよう努めるものとする。
2  前項に定めるもののほか、議員の政治倫理に関する基本となる事項は、京都市会議員政治倫理条例の定めるところによる。
(会派)
第7条 議員は、政策を中心とした同一の理念を有する議員の集団として、二人以上で会派を結成することができる。
2  会派は、次に掲げる役割を果たすものとする。
(1) 議員の活動を支援すること。
(2) 政策の立案及び提言並びに議案等の審議及び審査のために調査研究を行うこと。
(3) 会派間で相互に協議及び調整を行い、円滑かつ効果的な市会運営を図ること。

第4章 市民と市会との関係
(市民との関係の構築)
第8条 市会は、「市民の代表としての京都市会」、「市民と共に行動する京都市会」として、市民との関係を構築するものとする。
(市民との情報共有及び市民の市政への参画の機会の充実)
第9条 市会は、市政を担う一翼として、主権者である市民が主体となり、市民自らの意思と責任において行われる住民自治の発展に向けて、より一層市民と情報を共有するとともに、市民の市政への参画の機会を充実させるものとする。
(請願及び陳情の取扱い)
第10条 市会は、請願及び陳情について、適切な処理及び審査を行うものとする。
2  市会は、請願の審査に際して、その紹介議員から、趣旨の説明を聴く機会を積極的に設けるものとする。
(公聴会及び参考人の制度の活用)
第11条 市会は、公聴会及び参考人の制度について、各制度の趣旨を踏まえて、積極的な活用を図るものとする。
(会議等の公開の推進)
第12条 市会は、市民に開かれた議会運営に資するため、会議等(本会議、委員会及び議案の審査又は議会の運営に関し協議又は調整を行うための場をいう。以下同じ。)を原則として公開するものとする。
2  市会は、会議等で用いた資料について、一層の公開に努めるものとする。
3  市会は、会議等の日程、議題等を事前に市民に周知するものとする。
(会議等の公開の方法)
第13条 市会は、会議等について、傍聴、インターネットの利用その他の方法により公開に努めるものとする。
2  市会は、委員会について、政策の意思決定に至る審査の場を広く市民に公開するため、インターネットによる中継を推進するものとする。
3  市会は、直接傍聴など、市民が傍聴しやすい環境の整備に努めるものとする。
(広報の充実)
第14条 市会は、市民が議会活動に関する正確で分かりやすい情報を得ることができるよう、広報紙、ウェブサイト等を充実させるものとする。
2  市会は、総合的な情報の公開を推進するため、多様な広報媒体を活用した情報の提供に努めるものとする。
(広聴の充実)
第15条 市会は、市民の意見を審議及び審査に反映させるため、広聴の充実に努めるものとする。

第5章 市会と市長等との関係
(市長との関係)
第16条 市会は、二元代表制の下、市長と相互に対等な立場で適切な緊張関係を保ちながら、市政を運営するものとする。
(監視機能の充実及び強化)
第17条 市会は、市長等に対する監視機能を充実し、強化するものとする。
(市会の議決に付すべき事件等)
第18条 地方自治法第96条第2項の規定に基づき市会の議決に付すべき事件は、次のとおりとする。
(1) 基本計画(地方自治法の一部を改正する法律(平成23年法律第35号)による改正前の地方自治法第2条第4項の規定に基づき定めた基本構想を実現するための基本的な計画で、市政全般にわたり総合的かつ体系的に定めるものをいう。以下同じ。)の策定、変更又は廃止
(2) 姉妹都市盟約の締結
(3) 通称を命名する権利の付与の対象とする施設(重要な公の施設に関する条例別表第1に掲げる施設に限る。)を定めること。ただし、当該施設の一部を対象とする場合を除く。
2  市長は、毎年度、前項第1号に規定する基本計画の実施状況を市会に報告しなければならない。
3  市会は、社会経済情勢等の変化を踏まえ、第1項第1号に規定する基本計画の策定、変更又は廃止をする必要があると認めるときは、市長に対し、意見を述べることができる。

第6章 議会運営の原則等
(会期)
第19条 市会は、議会活動の公正性及び透明性の確保並びに議員間又は市長等と議員との間の活発な討議の実施の観点から、必要な審議日数を確保するものとする。
(委員会)
第20条 委員会の委員長及び副委員長は、公平、公正かつ円滑な委員会の活動及び運営に努めるものとする。
2  委員は、委員長の議事整理権の下、委員間における討議を充実させるよう努めるものとする。
3  委員は、委員間における討議を通じて、市政の課題に関する論点を明確にするものとする。
4  委員会は、市政の課題に関し研究が必要であると認める事項がある場合は、その内容について研究及び議論をし、市長等に対して積極的に政策提案を行うものとする。
(会議等における質疑又は質問)
第21条 議員は、会議等において質疑又は質問を行うに当たっては、当該質疑又は質問の論点を明確にするものとする。
2  市長等(補助職員を含む。)は、会議等における質疑又は質問の論点を明確にするため、議員に対し、当該質疑又は質問の趣旨を確認することができる。
3  議員は、本会議において質疑又は質問を行うに当たっては、一括質問一括答弁方式又は分割方式を選択することができる。

第7章 市会の権能強化
(専門的な知見の活用)
第22条 市会は、議案の審査等において、学識経験を有する者等の専門的な知見を積極的に活用するものとする。
(調査機関等の設置)
第23条 市会は、議会活動に関し必要があると認めるときは、学識経験を有する者等で構成する調査機関その他の機関を設置することができる。
(政策研究会の設置)
第24条 市会は、調査研究及び政策形成の機能を積極的に発揮するため、必要があると認めるときは、各会派の代表による政策研究会を設置することができる。
(他の地方公共団体の議会との連携)
第25条 市会は、他の地方公共団体の議会と積極的に連携するものとする。
(政務活動費)
第26条 会派及び議員は、政務活動費を活用して調査研究活動を行い、議会活動の充実及び強化に努めるものとする。
2  前項に定めるもののほか、政務活動費の交付等に関し必要な事項は、京都市政務活動費の交付等に関する条例の定めるところによる。
(事務局)
第27条 市会は、議員の活動を補佐し、議会活動を円滑かつ効率的に行うため、事務局の調査及び法制に関する機能の充実を図るものとする。
(図書室)
第28条 市会は、議員の調査研究に資するため、図書室を適正に管理運営するとともに、その機能の充実を図るものとする。

第8章 議員の定数及び議員報酬等
(議員の定数)
第29条 議員の定数に関し必要な事項は、京都市会議員の定数及び各選挙区において選挙すべき市会議員の数に関する条例の定めるところによる。
(議員報酬等)
第30条 議員報酬及び期末手当並びに議員が職務のため出張する場合の費用弁償の支給に関し必要な事項は、京都市会議員の議員報酬、費用弁償及び期末手当の支給に関する条例の定めるところによる。

第9章 補則
(他の条例等との関係)
第31条 市会に関する他の条例、規則等を制定し、又は改廃する場合においては、この条例の趣旨を尊重し、この条例に定める事項との整合を図るものとする。
(条例の検討)
第32条 市会は、条例の施行後、条例の目的が達成されているかどうかについて検証し、その検証結果を勘案して、必要があると認めるときは、この条例の改正を含めて適切な措置を講じるものとする。
附 則
(施行期日)
1  この条例は、平成26年4月1日から施行する。
(関係条例の廃止)
2  京都市会の議決に付すべき事件等に関する条例は、廃止する。
附 則(最終改正 平成29年6月9日条例第2号)
 この条例は、公布の日から施行する。