平成29年定例会(9月市会)

最終更新日:平成29年11月2日

意見書・決議

食品衛生管理の国際標準化を求める意見書

(平成29年11月2日提出)

  

食品の衛生管理は,先進国を中心にHACCPが義務化されているが,我が国においても,食品流通の国際化を目指し,東京オリンピック・パラリンピック等を見据え,国際標準に適合する我が国の食品衛生管理の水準を国内外に示す必要がある。そのため,厚生労働省では,国内の食品の安全性の更なる向上のために,HACCPによる衛生管理の制度化等の食品衛生規制の見直しを進めている。
 京都市においても,HACCPに準じた独自の認証制度を創設するなど,事業者の自主衛生管理を推進しているところである。
 農林水産省の調査によると,食品製造業におけるHACCPの導入状況は,売上げが100億円以上の大手企業だけでみると8割以上である一方,小規模事業所を含めた食品製造業全体では3割以下にとどまっている。
 また,食品衛生法の営業許可業種は34業種であるが,これら以外に都道府県等の条例で許可業種となっているものもある。
 食品用器具及び容器包装についても,欧米等で使用が禁止されている物質であっても,個別の規格基準を定めない限り,直ちに規制することができないなどの課題がある。
 さらには,厚生労働大臣又は都道府県知事からの回収命令や廃棄命令によらずに事業者が自主的に食品の回収等を行った場合,食品衛生法にはその報告を義務付ける規定がない。
 よって国におかれては,食品流通の多様化や国際化等を踏まえ,下記のとおり,食品衛生管理の制度の見直しを進め,食品の安全の確保を図ることを強く求める。 


1
 消費者を第一に考え,食品の製造・加工,調理,販売等のフードチェーン全体での取組を進め,衛生管理を「見える化」すること。
2  HACCPによる衛生管理の制度化に当たっては,食品ごとの特性や事業者の状況等を踏まえ,小規模事業者等に十分配慮した実現可能な方法で十分な準備期間を設けるとともに,事業者の負担軽減を可能とする財政措置を講じること。また,既に取組が進む自治体の制度に配慮すること。
3  食品用器具・容器包装の規制にポジティブリスト制度の導入を検討するなど,欧米等における規制との整合性を図ること。
4  食品事業者が製造し,又は輸入した製品を自主回収する場合には,その情報を把握する仕組みを検討すること。

 

以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,財務大臣,厚生労働大臣,農林水産大臣,内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)


大規模災害時の法制度に関する抜本的な見直しを求める意見書
(平成29年11月2日提出)


世界有数の災害大国である我が国においては,近年でも,平成23年東日本大震災や平成27年9月関東・東北豪雨,平成28年熊本地震など,甚大な被害をもたらした大規模災害が頻発している。さらには,南海トラフ地震や首都直下地震など,広域にわたり,かつ,大都市部への甚大な被害が想定される巨大地震が発生するおそれが指摘され,京都市においても,花折断層を起因とする地震等も考えられる。
 こうした大規模災害に対しては,大都市としての総合力を持つ政令指定都市が,防災,応急救助から復興・復旧まで,切れ目なく一体的に災害への対応をしていくことが必要である。
 しかしながら,現行の災害対応法制では,通常の災害時に政令指定都市が実施する,避難所及び応急仮設住宅の供与をはじめとする救助権限が,大規模災害時には道府県に移り,政令指定都市が持つ災害対応力を迅速かつ最大限に発揮することができる仕組みとはなっていない。
 政令指定都市が災害救助等の事務・権限を自ら包括的に担い,その能力を十分に発揮することができる自立的かつ機動的な体制を確立することが,来るべき大規模災害への備えとなることは論を待たず,現行の災害対応法制の見直しは急務である。
 よって国におかれては,制定から半世紀以上が経過している災害救助法や災害対策基本法に基づく災害対応法制を抜本的に見直し,政令指定都市が持つ能力を十分に発揮することができる制度を新たに構築すべく,国の主導において,政令指定都市を災害救助等の主体とすることを内容とする法改正を行うことを,強く要望する。

 以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,内閣府特命担当大臣(防災)


小中学校におけるプログラミング必修化に関する意見書
(平成29年11月2日提出)


インターネットの単なる普及にとどまらず,インターネットを活用したIoTの活用分野の拡大,自動車の自動運転をも可能とするAI(人工知能)の開発など,近年におけるIT技術の発展は著しく,「第四次産業革命」とも呼ばれる大きな転換期を迎えている。
 新たな学習指導要領で,学習の基盤となる言語能力や情報活用能力,問題解決能力などの資質や能力の育成を重視する方針が示され,平成32年度にプログラミング教育が小学校において必修化されるとともに,中学校・高等学校でのプログラミング教育が拡充されることとなっている。
 各自治体において,人材育成,指導内容等について検討されているが,「どの分野に力点を置き,いかなる人材を養成すべきか」との課題は残されたままである。地域間の格差を是正するためにも,中核となる指導内容については,全国共通のものとなることが求められる。
 京都市においては,市立小学校2校の土曜学習でプログラミング教室を試行実施したほか,5箇年計画でタブレット型PCと無線LANの整備を進める中で,教員対象の研究会を立ち上げたところである。
 一般家庭におけるIT機器の普及が進み,身近な生活の中で,コンピュータの活用を通して子ども達の論理的思考力の育成が期待される中で,教員の指導力の向上が求められることは言うまでもない。プログラミング教育が教育現場で円滑かつ効果的に実施されるために,教材や機器の整備などに対する財政措置が求められる。
 よって国におかれては,下記の事項に取り組むよう強く要望する。



1
 教員の指導力向上に資する指導事例集や教材等の作成,研修会等の開催など,民間や大学のノウハウを活用する仕組み作りを推進すること。保護者や地域社会がプログラミング教育を理解するための周知を図ること。
2  無線LANや最新型PCなどのICT環境の整備とメンテナンス等を担う人材の育成を支援する補助制度創設などの財政措置を行うこと。
3  プログラミングに興味を持った子ども達が,更に専門的な知識やスキルを習得することができるような上級者向けカリキュラムを提供する場の創設を支援すること。


  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,財務大臣,文部科学大臣

「ライドシェア」の慎重な検討と安心・安全で快適・便利なタクシー利用に関 する意見書
(平成29年11月2日提出)


タクシーは,介護や通院,買い物など,地域生活に欠かせないドア・ツー・ドアの公共交通機関であり,市民や観光客の安心・安全で快適・便利な交通機関として,日常生活や地域の経済活動を支える役割を担っている。さらに,少子長寿社会が急速に進展する中,身近な交通機関であるタクシーは,高齢者,移動に制約のある方,妊産婦や子どもなどへの対応やタクシーの特性をいかした防犯や防災等の取組を通じた地域社会への貢献など,社会ニーズに的確に対応することがこれまで以上に期待されている。
 そのような中,平成28年7月に政府は,ITの革新的発展を基盤とした遊休資産等の活用による新たな経済活動である「シェアリングエコノミー」の健全な発展に向け,民間団体等による自主的なルールの整備をはじめとした必要な措置の検討に資するため,「シェアリングエコノミー検討会議」を設置した。そして,同会議において「ライドシェア」といわれる自家用自動車を用いて有償で運送を行うサービスについても議題とし,同年11月に中間報告が取りまとめられた。また,規制改革推進会議においても「需給の構造変化を踏まえた移動・輸送サービス活性化のための環境整備」をテーマに,「ライドシェア」の導入に向けた議論を進めている。
 しかしながら,「ライドシェア」については,国会の審議において,道路運送法に抵触するタクシー類似行為(白タク行為)に該当するとの指摘や,運行管理や車両整備等について,責任を負う主体を置かず,自家用自動車のドライバーのみが運送責任を負う形態であるため,安全の確保や利用者の保護等の観点から大きな問題がある旨の指摘がなされており,「ライドシェア」の容認に向けた規制緩和については,極めて慎重な検討が必要とされている。
 よって国におかれては,下記の事項を実現するよう強く要望する。


1
 市民の安心・安全に大きな懸念のある「ライドシェア」の検討については,極めて慎重に対応すること。
2  公共交通の役割を担っているタクシーが,より安心・安全で快適・便利な交通機関として利用することができるよう,必要な諸施策を講じること。


  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,国土交通大臣,内閣府特命担当大臣(規制改革)


受動喫煙防止対策を進めるために健康増進法の改正を求める意見書
(平成29年11月2日提出)


世界において受動喫煙防止の取組が進む中,国際文化観光都市である京都市においては,たばこ対策行動指針を策定し,受動喫煙の防止に取り組んでいるところである。
 受動喫煙を防止するには,何よりも,たばこの煙が深刻な健康被害を招くことを国民に啓発していくことが重要である。
 厚生労働省の喫煙の健康影響に関する検討会が取りまとめた報告書(たばこ白書)では,喫煙は,肺がん,喉頭がん,胃がんなどに加え,循環器疾患や呼吸器疾患などとも因果関係があり,受動喫煙は,肺がん,虚血性心疾患,脳卒中と因果関係があることが示されている。また,国立がん研究センターは,受動喫煙による死亡者数を年間約1万5,000人と推計している。
 たばこの煙による健康被害についてこうした公表がある中,世界保健機関(WHO)は,日本の受動喫煙防止対策を最低ランクに位置付けている。この現状を脱し,2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた我が国の受動喫煙防止対策の取組を国際社会に発信する必要がある。
 よって国におかれては,国民の健康を最優先に考え,下記の点に留意し,受動喫煙防止対策の取組を進めるための罰則付き規制を図る健康増進法の改正を早急に行うよう,強く求める。



1
 対策を講じるに当たっては,準備と実施までの周知期間を設けること。
 屋内の職場・公共の場を全面禁煙とするよう求める「WHOたばこ規制枠組条約第8条の実施のためのガイドライン」を十分に考慮すること。
3  屋内における規制においては,喫煙専用室の設置が困難な小規模飲食店に配慮すること。また,未成年者や従業員の受動喫煙対策を講じること。
4  各自治体の路上喫煙規制条例等との調整を視野に入れて規制を検討すること。


  以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


(提出先)
 衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,厚生労働大臣


違法民泊対策の体制強化を求める決議
(平成29年11月2日提出)


京都市では,これまで,「民泊」対策プロジェクトチームを設置し,平成28年4月から平成29年8月末までの間に,2,600件を超える苦情や相談に対し,3,490回に及ぶ現地調査を行い,告発も含め343箇所の営業を中止させるなど,違法民泊対策に取り組まれてきた。
 また,平成29年度には,各区の衛生課業務を保健福祉局の「医療衛生センター」に集約し,民泊対策に特化した専門チームを設置するとともに,新たに民間事業者による調査を開始し,さらに,指導に当たる専門職員を年度途中で新たに採用するなど,違法民泊対策の体制強化が図られてきた。
 しかしながら,違法民泊に係る市民からの通報や苦情は後を絶たず,また,平成30年度からは新たに「住宅宿泊事業法」が施行されるとともに,これに併せて,条例をはじめとする本市独自のルールの制定,施行も予定されていることから,一層充実した,新たな実施体制が必要となっている。
 よって京都市においては,今後,民間活力の導入の一層の推進など,新たな手法を導入するとともに,旅館業法に関する事務を所管する保健福祉局の「医療衛生センター」のみならず,関係各局が連携することにより,全庁一丸となった強力な体制を構築していくことを求める。

 以上,決議する。


2025年国際博覧会の誘致に関する決議
(平成29年11月2日提出)


2025年に「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとする国際博覧会を大阪,関西が一体となって開催することは,新たな産業や観光のイノベーションが期待できるなど,大きな経済効果をもたらすとともに,全世界に向けて圏域の存在感を示す絶好の機会となり,極めて大きな意義がある。
 また,このような国際博覧会の開催は,圏域全体のみならず,本市における産業振興や観光文化交流等を促進するとともに,地域の振興や住民の生活向上にも寄与することが期待できる。
 よって京都市会は,大阪,関西における国際博覧会の開催を支持するとともに,誘致実現に向けた国内機運の醸成など,必要な取組を国,地元大阪市,経済界と共に積極的に推進していく。

 以上,決議する。