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アルコール依存症

アルコール依存症とアルコール中毒

飲酒によっていろいろと迷惑な行動をする人——「アル中」という言葉から,そのようなイメージを持つ人が多いかもしれません。アルコール依存症とアルコール中毒(アル中)とは,違うのでしょうか。

昔は医師の診断でも「慢性アルコール中毒(慢性酒精中毒)」という言葉が使われました。中毒とは「毒に中る(あたる)」ことであり,一時的な薬物大量使用にもとづく急性中毒,長期にわたる薬物使用にもとづく慢性中毒があります。

アルコールに関連する問題の重要なポイントは,飲酒行動をコントロールできなくなるということです。必ずしも酔ったときに迷惑な行動をすることではありません。静かに飲みながら次第に飲み方や飲む量のコントロールを失い,気がつくと体をこわしたり,社会的に孤立したりしているというタイプの依存症の方も多くいます。

このように,薬物の使い方をコントロールできない状態を「依存」と呼びます。また,通常の使用方法・使用量などを逸脱した使い方を「乱用(濫用)」と呼びます。このようなことから,今は「アルコール乱用」「アルコール依存症」という言葉が使われています。なお,依存と同じような意味で嗜癖という言葉が使われることもあります。これは,癖になるという行動そのものをとらえて言うことばです。

アルコール依存症の診断

日本では,アルコール依存症者は80万人(ICD-10にもとづく診断),重篤問題飲酒者は440万人(KASTにもとづく厚生労働省研究班調査,2004)いると推定されています。成人男性では7.1%,成人女性では1.3%が重篤問題飲酒者と推定されています。これに対して,実際にアルコール依存症として入院・通院している患者数は2万人程度(患者調査,2004)ですから,多くのアルコール依存症者は治療を受けずにすごしているものと思われます。

CAGE 以下の4項目のうち2つ以上があてはまればアルコール依存症と判定する

  • 自分の酒量を減らさなければならないと感じたことがありますか(Cut down)
  • 誰か他の人から自分の飲酒について批判されて困ったことがありますか(Annoyed)
  • 自分の飲酒についてよくないと感じたり,罪悪感を持ったことがありますか(Guilty)
  • 神経を落ち着かせるため,または二日酔いを治すために朝まっさきに飲酒したことがありますか(Eye opener)

アルコール依存症の経過・症状

アルコール依存症は,飲酒という生活習慣があって起きる典型的な生活習慣病です。依存症になるかどうかは,体質的な問題も関係しますが,おおむね以下のような経過で進行していきます。

アルコール依存症の典型的な進行過程

  1. 機会的飲酒(時々誘われて飲む)
  2. 飲酒習慣の形成(毎日晩酌する,仕事帰りに必ず飲む)
  3. 耐性形成(酒量がだんだんと増える)
  4. ブラックアウト・乱用(酔って記憶を失くす,酔ってトラブルを起こす,休日など日中から飲む)
  5. 精神依存の形成(飲まずにいようと思っても飲んでしまう,飲むべきでない時間や場所で飲んでしまう,常に一定量のアルコールを確保しようとする,身体に飲酒による害が現れても飲む,アルコール以外の楽しみを無視する)
  6. 身体依存の形成(離脱症状の出現,飲酒しないと手が震える,眠れない,冷汗をかく…,このような不快な症状は飲酒すると消える)
  7. 病的な飲酒行動の出現(「連続飲酒発作」「山型飲酒サイクル」など)
  8. 慢性中毒・死亡など末期状態(平均寿命は50歳代前半)

アルコール依存症は,飲み始めてから10年〜20年ほどの間に徐々に進行します。当然のことですが,できるだけ早期から治療するほうが,体へのダメージも少なく,回復後の状態も良くなります。

依存症の人は,たいてい「やめようとしてやめられなかった」「やめたが再飲酒した」「何回もやめたけどやめ続けなかった」経験を持っています。「飲み続けているわけではないから依存症じゃない」「何回もやめたことがあるから依存症じゃない」というのは間違いです。

アルコールと社会問題

アルコールに関する問題は,家族を巻き込むだけでなく,社会的にも多岐にわたる問題をひき起こします。たとえば,飲酒運転,駅のホームや階段からの転落事故,急性アルコール中毒,飲酒しての暴力,虐待やセクシャル・ハラスメント,未成年の飲酒など。

そのほかにも,アルコール依存症になると仕事ができなくなったり,身体的な治療のための費用がかさんで家計を圧迫したりという問題もあります。また,家族関係の問題が子どもたちの世代に影響するということも考えられます。

アルコール依存症による経済的損失を試算した研究があります(中村,他 1993)。これは1987年のアルコール消費,医療費等からの推計ですが,年間6兆6千億円以上の経済的損失がもたらされていると考えられ,酒税収入は年間2兆円程度ですから,損失が大きく上回っています。

アルコールに関連した身体疾患

アルコールは体にもさまざまな障害をひき起こします。

脳神経系

ウェルニッケ=コルサコフ症(飲酒に伴うビタミンB1不足が原因)
・・・めまい,歩行困難,しびれ,意識障害,見当識障害など,慢性化すると記憶障害,見当識障害,作話,ときに著明な知能低下
アルコール幻覚症(アルコール精神病),嫉妬妄想(アルコール妄想症)
アルコール性認知症・・・大量飲酒を続けてきた人の脳には萎縮のあることが多い
小脳失調症(ふらつき,細かな作業が困難)
多発神経炎(手足のしびれ,運動障害)

肝臓

脂肪肝,肝炎,肝硬変,肝性脳症

消化器系

胃炎,十二指腸炎,胃十二指腸潰瘍,膵炎

悪性腫瘍

食道癌,口腔内癌

心血管系

心筋症(突然死の原因となる),心不全,高血圧,不整脈

内分泌系

糖尿病

その他

骨折,硬膜下血腫,脳内出血,易感染性,低体温,浮腫など